【 麺×無双】うどんの女神と銀河系蕎麦アイドル。【うどん、蕎麦、ラーメン】

マナシロカナタ🐈ねこたま25年春発売予定

第1部 うどんと蕎麦、運命の出会い

第1話 ~運命の出会い~

 わたしの名前は、早乙女さおとめステラ。


 物語の女神や銀河系アイドルを育成する、アルファルド学園に入学したばかりの1年生だ。


 そんなわたしが、ウーバ〇イーツ的なスキマバイトで、出前で注文を受けた尾頭付きの焼いたタイを、せっせと運んでいた時だった。


 アルファルド学園を見守る聖なる女神様の像の前で、わたしは一人の先輩に呼び止められたんだ――。


 それは月光のようなキレイな銀髪が特徴的な、知的な雰囲気の先輩だった。

 リボンが緑だから2年生の先輩かな。


「あなた、タイが曲がっていてよ」


 そう言うと、先輩は使い捨てのビニル手袋をどこからともなく取り出した。


 そしてジャキン! と両手にはめると、ギュギュっとつかんで、タイの尻尾をまっすぐに伸ばしはじめたのだ。


 フツーならそんなことをしても、すぐに尻尾は曲がった状態に戻ってしまうけど、なぜかそのタイの尻尾はまっすぐになったままで――。


 すごい、これって女神パワーだよね!?


 まだ一介のアルファルド学園生だっていうのに、タイの尻尾を伸ばしたままにするほどの圧倒的な女神パワーを持ってるなんて!


「タイを直していただき、ありがとうございました――えっと、先輩……」

四季咲しきざきアスカ、2年・紅バラ組よ」


「えっと四季咲しきざき先輩――」

「アスカちゃんでいいわよ」


「えっと、さすがにそれはどうでしょう……」

 先輩を「ちゃん付け」で呼ぶのは、かなり気が引ける。


 だけど、


「アスカちゃんでいいわよ」

 もう1回、同じことを言われてしまった。


 ま、まぁ?

 相手は先輩なんだし、その先輩がいいって言うんなら、いいんだよね?


「じゃあその、アスカちゃんさんで……?」

 わたしは失礼にならないギリギリの妥協点(?)を見出して、そう呼んでみた。


「ちゃんさん……? まぁ、それでもいいわ」


 無事に同意を得られて、ホッとわたしも一安心。


 じゃあ気を取り直して、


「えっと、アスカちゃんさん! わたしは早乙女ステラです! 第412シャイニー銀河から留学にやってきました! 趣味はネギの栽培で、1年・紅バラ組です!」


 わたしは自己紹介をしたんだけど――って、しまったぁ!


 自己紹介されたから、自己紹介で返したんだけど!


 よく考えてみたらアスカちゃんさんは、別にわたしのことなんて知りたくもなんともないよね!?


 わたしの趣味がネギ栽培だなんて聞いても、アスカちゃんさん的には「はぁ……それがなにか?」って感じだろうし。


 ううっ、わたしってば、いつも考える前にしゃべっちゃうんだよね……。

 またやっちゃったぁ……


 そんなアホなわたしだっていうのに、


「ふふっ、同じ紅バラ組ね。よろしくね、ステラ」


 アスカちゃんさんはにっこり笑って、そんな風に優しく言ってくれたんだ。


「は、はい……アスカちゃんさん……」


 ううっ、すごくいい先輩だよ……。

 わたしは胸の中が、ふんわりと温かくなるのを感じていた。


 こ、これってもしかして、恋……!?


「それと、私もネギは好きよ。うどんの添え物として最高に良く合うからね」


「そ、そうなんですよ! ネギとめん類の相性は最強なんです! しかも使い切った後に植えたら2,3回使えて経済的ですし!」


 生粋の蕎麦そばラーであるわたしは、声を大にして言った。

 貧乏苦学生のわたしにとっては、複数回使えるのはすごく魅力だし。


 うわー、アスカちゃんさんとは、なんだか話が合いそうだね!


「ところでステラ。タイを運んでいる最中なんでしょう? 時間は大丈夫なの?」


「ふぇっ!? わわわっ! すっかり忘れてました! すぐに持っていかないと――!」


 お魚かかえて慌てて駆け出したわたしを、アスカちゃんさんが呼び止めた。


「ステラ、急ぎすぎて事故っちゃだめよ。ウーバー〇ーツは個人事業主扱いだから、事故っても労災が下りないんだからね?」


「ご忠告ありがとうございます、アスカちゃんさん! 事故らない程度に急ぎますです!」


「ふふっ、バイト頑張ってね」


「はい! がんばりまステラ!」


「え、あ、うん……」


 一世代前の流行りのマネっこ(ルビィとかリーリエとか)を、生暖かい微笑みでやんわりスルーしてくれたアスカちゃんさんに見送られて、わたしは届け先へと走りだしたのだった。


 胸を不思議なドキドキに弾ませながら――。



 これがわたし――早乙女ステラと。

 四季咲しきざきアスカ先輩――アスカちゃんさんの、運命的な出会いだった。

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