第21話 大天才の遺物
くそっ、まさかここに来てこんな奴らがいるなんて……!
「……まずは私が様子を見るわ」
「ま、待てレアナ!」
レアナは俺の静止を無視すると、数十メートルの距離を一瞬で詰めて剣を振るう。
ギィッ……! 金属音と火花を散らし、刃が止められた。
「硬すぎ……!」
標的をレアナに絞ったのか、全方位からレーザーが放たれる。それを間一髪避け、今度は複眼の一つに刃を突き立てる──しかしそれも跳ね返された。
「レアナ、そのまま引き付けててくれ!」
「了解よ!」
「リエン、レーザーに当たらないよう立ち回れるか!?」
「任せて下さい!」
アイツらが何なのか分からないけど、こういう外側が硬いタイプの敵の弱点は知ってる!
両手のコンバットナイフに魔力を流し斬れ味を上げ、レアナより数段速いスピードで敵に近づく。
更にダメ元で《
「はぁ!」
狙うは関節。外側が硬い奴は総じて、関節……それも内側が弱点になる。特に昆虫型の魔物には、共通する弱点だ。これで……!
ギンッ……!
「!? 弾かれた……!」
斬れ味を上げても通さないなんて、そんなんありか……!?
「これは……!? 気を付けて! こいつらの表面、アダマント鉱石で出来てるわ!」
「何だと!?」
アダマント鉱石で
「出来て……って、まさか……?」
「リエン、何か分かったのか!?」
「はい! 今確認しますので、少し気を引いてて下さい!」
リエンが複数のアンデッド動かし、俺とレアナが相手をしている金属蟲王とは別の個体へと向かった。
レーザーや脚払い等の攻撃を避け、潜るように金属蟲王の底に滑り込んだ。
「見付けた……!」
そしてその直後、金属蟲王から煙が迸り、赤く光っていた目が灰色になって動きを止めた。
「ジオウさん、レアナさん! この魔物はゴーレムです! 体の底にコアを見つけました!」
ゴーレムだと!?
俺の知ってるゴーレムは、コアを元に岩や土を人型に纏わせるものだ。だが出来ている物質が土系だからか、動きは単調で鈍い。それにこんな精密な外見を作ることは出来ないはずだ。
だがここは、アルケミストの大洋館。ここの主は、錬金術の大天才グレゴリオ・アルケミスト。それを考えれば、こんな人知を超えたゴーレムを作っていてもおかしくはない。
表面をアダマント鉱石で作り上げ、物理攻撃も魔法攻撃も弾き、光と聖属性の魔法を使うゴーレム。弱点は、底にあるコアのみ。だけど普通なら近づくことも許されないと来た。
グレゴリオさんよ、なんつー化け物を遺していってんだよ……!
「弱点は体の底のコア……これは、一人じゃキツそうね。ジオウ、連携よ。私が何とかひっくり返すか浮かべるから、ジオウが滑り込んで仕留めて」
「……行けるか?」
聞くと、レアナはドヤ顔で胸を張った。
「ふふん、この私を誰だと思ってるのよ。まあ見てなさい」
レアナは力を溜めるように集中する。
「……行くわよ!」
「おう!」
床を蹴って一体の
「《
剣をゴーレムに突き立てると、獅子の形をした炎の奔流がゴーレムを襲い、僅かに体を浮き上がらせた。
見えた、赤いコア──!
瞬時に滑り込み、流れるようにコアの中心部へナイフを突き立てて離脱。瞬間、さっきと同じように煙を噴き出して活動を停止した。
「ナイスだ、レアナ」
「ジオウこそ、いい攻撃よ。さ、じゃんじゃか行くわよ!」
「おう!」
弱点は分かったんだ。あとはレーザーと脚払いに気を付ければ、決して攻略に手こずることはない!
「素晴らしいです、お二人共! 私達も負けてはいられませんっ、連携して向かいなさい!」
リエンのアンデッドが、レーザーに当たらないように立ち回りながら次々にゴーレムを停めていく。
「おいリエン! 当たったら浄化されるんだから、気を付けろ!」
「当たらなければどうということはありません!」
いやそうだけども!
残り二体になったゴーレムは、俺達ではなく奥にいるリエンを標的に定めたようで、リエンに向かいレーザーを放つ。
「リエン!」
「ふふ──安心してください」
レーザーがリエンに当たる──そう思った瞬間、レーザーが180度回転し、ゴーレムへ跳ね返った。
いや、これは……ただ跳ね返したんじゃない。エタが時空間魔法を使って、レーザーの向きを変えたのか。
自分のレーザーを食らってひっくり返るゴーレム。そこを俺とレアナでコアを破壊し、完全に停止させた。
「ふふふふ。エタちゃん流石ですねぇ。よーしよしよしよし」
振り返ると、リエンがエタの全身をくまなく撫で回していた。いや相手がアンデッドだからって、そんな所まで撫で回す必要ある?ってぐらいそれはもうくまなくと。
てか……時空間魔法、反則級に強いな。いやもう反則級じゃなくて反則だ。ずる過ぎないこれ?
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