第5話 アスター
ブルガダ症候群と診断されたのは2年前の春だった。
発作が起こると心臓の動きが止まり、血液が回らなくなり死に至る疾患だ。突然死だってありえる病気だ、毎日が余命0の気分だった。
生きた心地がしない、むしろ死にたかった。
------------------- Past story
まだ小学3年生の頃、両親は俺を置いてどこかに行った。まだ小さくて何もわからなかった、もしかしたら行先を言っていたのかも、ま、言ってないだろう。俺は親の愛を感じだことなんて1秒もなかったから。
やっとの思いでお婆ちゃんの家に行けた。何度も同じ電車に乗って、歩いて、お腹もペコペコで。顔を見ただけで、抱きしめられただけで、幸せだと。愛情はこれなんだと確信した。
それからお婆ちゃんが花屋さんをしていたから毎日のように手伝った。お婆ちゃんが頑張ってくれたおかげで何も変わらず同じ学校に行って、普通の生活ができたから恩返しがしたかった。
したいことが見つからなかったわけじゃなく、お婆ちゃんの店を継ぐことしか考えなかった。
高校1年生の春、やっと新しい生活が始まると期待していた矢先。いきなり呼吸が苦しくなり、倒れた。死ぬのだと覚悟した、お婆ちゃんに迷惑がかからなくなるんだと思えばいいやと投げ出す。でも目が覚めるとそこはまだこの世界で、生きたいという欲が膨れ上がっていた。
すぐによくなるから、3ヶ月もあれば大丈夫?そんなの嘘に決まってた。1年しても安定せず、まだ新しいクラスメイトの顔も知らずに1年生の幕が閉じた。
本当死にたくなったけどお婆ちゃんや愛香が毎日のように見舞いに来てくれたので頑張れた。
そして入院して2年と1ヶ月。俺の心臓は止まり、人工心臓で虫の息だった。流石にもう終わったなと覚悟した。
でも気付くと人工心臓は外されていて、俺の心臓は正確に動いていた。
いや、俺の心臓じゃない。
心臓移植だ。つまり、俺は誰かの命に生かされたのだ。
高校3年生の春が来るまでには完璧に回復し、今に至る。
------------------- 赤色
誰かの命に生かされるんじゃなくて、自分で生きようと決めた。
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