第248話 失笑話『おかま伝説』佐祐ちゃん、姫ちゃん

 佐祐ちゃんは姫ちゃんより一年先にうちに迎え入れられました。


 佐祐ちゃんはホーランドロップイヤーラビットの男の子です。

 ですから、お嫁さんにと、ペットショップで、ホーランドロップイヤーラビットの女の子を捜していました。


 そうしたら、ブロークントートの可愛い子がいるではありませんか。

 まだ、鼻の先と背中が少し茶色いだけの白地がメインの可愛い子でした。

 ペットショップの女性の店員さんに、尋ねました。

「お嫁さんが欲しいのですが。男の子ですか女の子ですか?」

「分からないけれど、男の子です」ときっぱり言った後で、「女の子でした」と撤回されました。

 夫も覗いていたのですが、分からないとのことでした。

 お股を見ても毛がふさふさだし、その子は、暴れまくってました。


 結局、その子を買って来て、帰りの車の中で『姫ちゃん』と名付けました。

 気が早いですが、どう見ても『姫ちゃん』だったのです。


 ママも夫も、姫ちゃんは女の子だと思っていて、佐祐ちゃんとは、別のケージで暮らさせ、お散歩の時間もずらしていました。

 ケージ越しにお見合いをさせると、佐祐ちゃんも姫ちゃんもどきどきする程気が合うようでした。

「これはいける!」

 私一人、きらきらしていました。

「可愛い赤ちゃんを無事に産んでください」

 そっとお願いしました。


「もう、会わせても良いでしょう?」

 夫にせがんで、姫ちゃんが我が家に来てから半年程経ちましたので、ケージから出しました。

 マウンティングの嵐です。

 お互いにマウンティングをし合うので、ぐるぐると回ります。


 女の子もするからと思って楽しんでいたのですが、夫が疑念を持ったようです。

「引っ繰り返してみよう」

 夫の見立てでも十分立派な男の子でした。


 夫は大笑いをしましたが、特にママのそのショックは隠し切れませんでした。


 男の子だと判明しても、考えても考えても、『姫ちゃん』は『姫ちゃん』です。

 餌をやる時はママは『お姫』、遊ぶ時は夫は『姫すけ』と呼んでいます。


 佐祐ちゃんは、姫ちゃんをお嫁さんだと思ってますか?

 姫ちゃんは自分を男の子だと思ってますか?



 どちらにしても、ママは佐祐ちゃんも姫ちゃんも好きです……。

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