カレカノごっこ。

咲倉なこ

第1章

デートのお誘い。

第1話



高校2年生の2学期が始まって早々。


日直当番だった私は、放課後に残って日誌を書いていた。



日誌ってホント面倒くさい。


教科ごとの感想とかいる?


こういうの書くの苦手だ…。



もう9月なのに、窓の外ではまだセミが鳴いていて、ほんのりと汗がにじむ。


暑さと闘いながら日誌を書くのに苦戦していた時、ガラガラッと教室の扉が開いた。



「あれ、井上さんだ。まだいたんだ?」



入ってきたのはクラスメイトの皆藤くん。



「うん、日直だから。皆藤くんはどうしたの?」


「スマホ忘れちゃって」



そう言って皆藤くんは自分の机の中をガサゴソ探している。



「あった。よかったー!」



皆藤くんは見つけたスマホをポケットに入れた。


その様子を、ただなんとなく見ていると皆藤くんと目が合う。



「日誌まだかかりそう?手伝おうか?」



皆藤くんは何を思ったのか、そんなことを言いだして。



「え、いいよ。悪いよ」



クラスメイトとは言え、あんまり喋ったことのない人にお願いするなんて悪いと思った。



でも皆藤くんは、



「早く帰りたいでしょ?」



そう言って、私の前の席の椅子をガっと引いて座った。


あまり喋ったことがない皆藤くんに話しかけられて、ちょっとびっくりしている。


だって皆藤くんはクラスの人気者。


顔もすごく整っていて、髪型はいつもオシャレだし、制服だってカッコよく着こないしている。


見た目の良さもあり、よく騒いでいるからかなり目立っていて、女子からも男子からも人気がある。


そんな皆藤くんと私が、今こうして一緒にいることに、なんとなくの違和感を感じる。



「こーゆーのは適当でいいんだよ」



シャープペンを奪われ、スラスラと日誌を書いていく皆藤くん。


適当とか言ったけど、私からするとすごいちゃんと書いてるように見える。



「はい、おしまい」


「皆藤くんすごい!あっという間に終わった、本当にありがとう!」


「そんな大したことしてないけど、どういたしまして」



皆藤くんは見た目も完璧なのに、頭も良かったりする。


勉強してるところなんて見たことないのに。


授業中だってずっとふざけてる。


それでも、こうやってなんでもできちゃうのは、要領がいいのかなーなんて思う。



皆藤くんのおかげで今日は思ったより早く帰れそう。


筆記用具を片付けて帰る準備をしていると、皆藤くんは私にこう言った。



「ねえ、今日は彼氏と一緒に帰らないの?」



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