FILE015:3匹を斬れ!
ここはとある山あいのダム。
作業員たちがいつも通りに働いていた、その時――突如として全身がケイ素で出来たモンスター・シリコニアンの大群が現れ、彼らを取り囲む。
何が起こったのかわからず、混乱する作業員たちの前に、壁を破壊して黒服の男たちが現れた。
「貴様たちは包囲されている……」
そう宣言したのは、黒服のリーダー格であり犯罪結社ヘリックスの構成員である――関根だ。
いかつい顔に下卑な笑みを浮かべる。
「だ、誰だ!?」
「貴様らには関係ない。このダムは我々が占拠した……! そして破壊させてもらう」
「そんなことしたら街が洪水になっちまう! 破壊なんかさせねえ!」
わけもわからない中で、勇気を振り絞った1人の男を関根は殴り倒して鼻で笑う。
作業員たちが腰を抜かす中で3人の黒服は薄ら笑い、関根がジーンスフィアを取り出す。
「バカめ。自ら寿命を縮めにくるとは」
≪ライノセラス!≫
関根がジーンスフィアをねじって、ヘビー級の巨体を誇る重装甲の怪人・ライノセラスガイストへと変身。
全身が金属化した分厚い表皮に覆われたライノセラスは地を鳴らし、雄叫びを上げて周囲を威圧した。
「ブゥアー! 死ねい!」
一心不乱に掴みかかってきた作業員を怪力をもって撲殺。
「次はお前たちだ」、と残る作業員をにらみ、周りを破壊しながら1人、また1人とツノミサイルやツノから出すビームなども利用して追い詰め、殺して行く。
かくしてダム内は死体が散乱する地獄絵図と化した!
「ガッハッハッハッハッハッハッ!! 残ったのはお前だけだな。案ずるな、すぐにでも同僚の後を追わせてやるぞ……」
破壊と殺戮をひとまず終えて悦に浸るライノセラスは、ただ1人生き残った作業員をその足で踏みつけ、踏みにじっていたぶる。
「よっしゃ、爆弾をしかけて……」
「おっと! まだ壊すな。No.0が来るまで待つのだ。そして残ったこいつを……ぐへへへへへ」
変身を解除した関根は、時限爆弾をセットしようとしたマツモトを止める。
どうせNo.0=アデリーンがやってくるだろうから、それまでは生かして彼女の目の前でむごたらしく殺して、その際に爆弾も改めてセットして爆破して、精神的に苦しめてやろうと、そう企んでいるようだ。
「はっ? なんて心地良いんだ」
順調かと思われたその時。
どこからともなくフラメンコギターが奏でられた。
生き残った作業員の男にとっては美しく心が癒されたが、心悪しき関根たち3人は逆に頭を抱えて苦しみ出す。
「ぐわー! しまった、この音は……!?」
「な……No.0ぉ!」
人造人間としての優れた感覚によりこの危機を感知したアデリーンが、その場に参上したのだ。
演奏していたフラメンコギターを背負って、倒れ伏していた作業員を起こし、険しいながらも優しさを秘めた顔をして彼を落ち着かせる。
そして、生存したその作業員をかばう形で彼の前に出た。
「そこまでよ。悪が栄えた試しは無い!」
黄金色の髪を手で梳かしてから人差し指を黒服たちに向け、アデリーンは勇ましい表情と口調で言い切った。
義憤から来るその【気迫】に一瞬、黒服たちはたじろぐ。
「世迷言を。やれ!」
≪ライノセラス!≫
≪ジャガー!≫
≪トータス!≫
黒服の関根たちが、いっせいにジーンスフィアを持ち出してねじる!
それぞれ、邪悪なエネルギーとともに凶悪なディスガイストへと姿を変えた。
「早く逃げて!」
作業員を逃がすため、アデリーンは敵の攻撃を躱しながら氷のシールドをあちこちに展開。
少しでも時間を稼ぐためだ。
その合間に戦闘員・シリコニアンたちを次々に撃破していき、最後には全滅させて大きな部屋を仕切るほどの防壁を作った。
「ブゥアーッ」
「ヒョーウ!」
「ガメガメガメガメ!」
両肩から射出されるツノミサイルや、スーパーボール爆弾、バズーカ砲――敵からの猛攻を受けて氷の壁が破壊され、室内に氷の霧が立ち込める頃には――アデリーンは既に変身を終えていた。
3体の怪人を同時に相手しても彼女はまったく退かない。
光線銃ブリザラスターだけで敵の攻撃をかわしながら上手く立ち回り、敵をぶっ飛ばして戦場を屋外へ移す。
多数の犠牲者を出したヘリックスの怪人に対する彼女の怒りは、とどまるところを知らない。
「いくら不死身の貴様が頑張っても無駄だ。このダムを爆破して、街を水浸しにするゥ……」
「なんですって!」
「洪水が起きれば最後、さしもの貴様とて簡単に脱出することはできぬゥ! 死ぬこともできず、暗く冷たい水の底で一生を過ごすのだ……。グワハハハハハハハハ~~~~~~ッ」
アデリーンは鬼気迫る勢いでゼロ距離射撃とハイキックを繰り出してライノセラスガイストを仰け反らせ、そのままジャガーガイストとトータスガイストにも狙いを定める。
アイスビームがかすっただけで体が一部凍り付くが、今度という今度は相手もひるまずに向かってくる。
その執念は本物。
「そうだ、今日こそお前の命日! それが嫌なら、おとなしくわれわれに捕まって不死身の兵器となるんだ。ヒョーウ!」
「このマツモトの名を上げてやる! ガメェェェェェェーッ!」
ジャガーが飛びかかり、トータスが指先の機銃を掃射してアデリーンを襲う。
その場で避けて、すかさず氷のシールドも作り出して凌ぐ。
「ブリザーディアッ!」
隙を見計らって、アデリーンはブリザーディアを召喚して搭乗。
巧みに駆って相手を翻弄し、光線銃ブリザラスターからの射撃もプラスして2大怪人を凍らせながら追い詰める。
そして、フルパワーの1発を撃ち込んで大爆発を起こし、ダウンしているライノセラスガイストと同じ位置まで吹っ飛ばしてみせた。
「まいったか悪党ども!」
ブレーキをかけたアデリーンは、まだまだ立ち退く様子のない怪人たちに対して啖呵を切る。
いきり立った彼らは、アデリーンに対し一斉に突進し出した。
ブリザラスターからアイスビームを撃ったり、地面からツララを生やして反撃・妨害したりなどしながら、アデリーンはブリザーディアの右ハンドルを抜き、ビームソード【ブリザードエッジ】へと変形させる。
彼女が最も得意としている、剣と銃による二刀流スタイルだ。
斬撃も射撃も打撃も刺突も、目まぐるしく使い分けて敵を翻弄し、痺れるような動きや技を見せつけて圧倒する。
罪なき人々の命が懸かっている以上、負けるわけにはいかないのだ。
絶対に――。
「おおっと! この爆弾が目に入らんか!」
「起動すれば最後、このダムは木っ端みじん、街は大洪水だ。ぶははははははは……はっ!?」
だが、卑劣にもジャガーとライノセラスが爆弾を見せびらかして揺さぶりをかける。
しかしアデリーンがそれに屈するわけもなく、閃光もほとばしるほどの速さで奪取して、凍結。
空高く蹴り上げてブリザラスターで撃ち抜き――空中で大爆破。
「爆発するからなんですって?」
氷の粒が空からひらひらと舞い、落ちる中でアデリーンは軽い口調で挑発。
こうして最大の脅威は取り除かれた。
作戦を台無しにされた3大怪人は当然怒り狂うが、アデリーンは逆に翻弄し、徐々に敵を追い込んで行く。
「ふへへへへへへへ――ッ! なんだかすごいことになってるねえ~。にしてもでっかい花火だったなッ!」
そうやってアデリーンが3大怪人とデッド・ヒートを繰り広げている中、不敵な笑いとともに唐突に姿を見せたのは――黒尽くめの女暗殺者・【黄金のスズメバチ】こと蜂須賀だ。
ダム屋外の高いところで柵に右腕の肘を乗せて、芝居がかった言動をアデリーンやライノセラスらに見せていた。
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