第26話 連絡先交換
ゴールデンウィーク期間の練習が終わり学校が始まった。
いつもの様に学校へと通い放課後にいつもの様に練習をする毎日を過ごしていく俊哉達。
あっという間にひと月が過ぎていき6月に入ると、世間では梅雨入りがニュースになっている中、静岡は晴れが続き空梅雨の状態が続いていた。
そんな中の図書室ではとある会議が3人の女子生徒で行われていた。
「第一回。なんで俊哉君に話さないのよ会議ー」
「なんですソレ…」
パチパチと拍手をしながら話すのは、ハルこと
そして向かいには、つかさこと
「でもなんで会議です?」
「そりゃ勿論!私の可愛い可愛い 司の為だもの!!」
「いやハルのではないと…」
力強く言うハルナと引きながらもツッコミを入れる由美。
その間でも 司は下を俯いたままである。
「てか、司!なんであれからひと月なのに未だに俊哉君に声かけないのよ!?」
「だ、だだだだってー。俊哉君すぐに外に行っちゃうし、それに男の人達が近くにいて…話しかけれない~」
「放課後に捕まえなさいよ!?」
「む、むむむ無理だよー、それに…迷惑じゃないかと思っちゃって…」
弱弱しく話す司に対し、あれやこれやと話すハルナ。
そんな光景を見てか、由美はハルナの話をさえぎるように司に話しかける。
「司は、どうしたいですか?」
「え?どうって…?」
「司自身の考えです。あの時、男性が苦手な貴女から俊哉さんの名前が出た時、私は…嬉しかったですよ?よほど気になるのかな?とも思いましたし。」
そう話す由美に、司はグッと唇を閉じ黙っている。
そして落ち着いたのか、ハルナも司に対して言葉を投げかける。
「まぁ、アンタがどう選択しても、私たちは応援するよ?」
「ハル、ユミ…うん。分かった…今度話してみる」
そう話す司に二人は顔を見合わせ微笑む。
そして翌日の昼休み、司は俊哉が座る場所を見つめていた。
この日は運がいいのか1人で机にいる俊哉に対し、チャンスが来る形となった。
司の後ろではハルナと由美が隠れながら応援をする。
(今がチャンスよ!?)
(頑張るです)
心の叫びを見せる二人に、司は二人を見ながらコクリと頷く。
一歩が重く感じる。
バクバクと心臓が鳴る中、司はついに重く感じた一歩を踏み出した。
「あ、あの!!」
声を裏返らせながら言葉を掛ける司。
その声に俊哉はすぐに気づき、司の方を振り向く。
「あれ?えっと…姫野さんだっけ?どうしたの?」
「あ、あの…その…」
言葉が出ずにオドオドとする司に首を傾げる俊哉。
すると教室の入り口から竹下と山本が俊哉を呼ぶ声が聞こえてくると俊哉は返事をして行こうとする。
「あ、呼ばれた…えっと、何だっけ?」
「あ、あの…」
真っすぐ見つめる俊哉の顔を見ながら自分の顔を真っ赤に染める司。
それを見つめるハルナと由美。
時間はわずかしかない、司は何時もなら諦めている所をグッと堪え口を開く。
「あ、あの…連絡先交換しませんか!?」
ついに言えた言葉。
その言葉を聞いてハルナと由美はグッと小さくガッツポーズをとる。
俊哉はというと、少しポカンとしているもすぐに笑顔になりスマフォを手に取りながら話す。
「勿論いいよ。ラインで良い?」
「ひゃ、ひゃい!!」
思わず声を裏返す 司はギクシャクしながら自分もスマフォを取り出し連絡先の交換を無事済ませることができた。
“ありがと”と言い席を立つ俊哉。
司は、しばらくその場で固まっているも、ハルナと由美が近づき二人の顔をが確認するとその場にヘタリと座り込んでしまったのであった。
「はぁぁぁぁー」
「いやぁ良くやった!!感動した!!」
サムアップして喜ぶハルナに、由美は司の肩に手をポンと置きながら笑みを浮かべながら話す。
「流石ですね。」
「き、緊張した…」
涙目で話す司に、二人は笑顔を見せながら、司の頭を撫でるのであった。
そして時を同じくして廊下。
(拝啓、お父様お母様。そして皆々様…私、横山俊哉は…女の子からラインを交換してもらうよう言われました!!)
廊下を早歩きで進む俊哉の脳内に流れているこの言葉。
出来事はつい先ほどの出来事である。
彼はいつもの様に昼休みに竹下、山本のいつものメンバーと一緒にキャッチボールに出かけるはずだったのだが、今までと全く違う出来事が彼の身に起きたのである。
(あれ?あれ?!あの子って姫野司さんだよね!?同じ中学でも無かったし、それに!それに!今まで話したことあったっけ?!)
頭の中がグルグルと同じ言葉が走り抜けていく状態のまま昼休み、午後の授業と時間ばかりが経過していく。
そしてついに俊哉は1つの答えにたどり着いた。
(あ…!!あの時のホ○ージャパン!!)
その記憶が蘇ったのは帰りのHRの時間であった。
思わず立ち上がりそうになる俊哉だが、我に返ったおかげでグッと堪える。
(でもでも!あの時はほんの数回しか会話してないし…わからん…わからん!)
混乱状態のまま部活へと向かい部室で着替えをしている時も、グルグルと彼の頭の中には今までの記憶と共に今日の出来事が回っていた。
そんな状態のまま練習をする俊哉だが、集中できるわけなくミスを何回かしてしまいペナルティのランニングをさせられる事となる始末である。
「おい、おいトシ…おーい」
竹下の問いかけに答えられない俊哉に、竹下は首を傾げながらも次に呼ぶときには背中を軽くパンチしたのである。
これには流石に気づいた俊哉は痛そうに背中を摩りながら竹下の方を向く。
「え?何?」
「いや、何じゃ無くて…もう練習終わり」
そう言われ俊哉が周りを見ると片づけをしていた。
どうやら俊哉は無意識に行動をしていたようで今の状況を呑み込むのに多少の時間がかかった。
「あれ?もう終わり?」
「はぁ?お前何言ってんの?てか、今日どうした?」
俊哉が心配になったのか、問いかけてくる竹下。
彼は言うべきかと考えたが、自分も把握できていない事なので聞くのを止め「大丈夫」とひと言言いながら片づけへと向かう。
「なんだぁアイツ」
「ありゃあ…女だな」
竹下の横に来て話すのは明輝弘。
竹下はどういう意味なのかを明輝弘に聞くと、明輝弘は顎に手をやりながら話す。
「俺も気になってトシを見てたんだ。あの呆けた表情、手中力の散漫…あれは女絡みだよ」
「トシに女?まさかぁ」
「いや、ああいうタイプはこういう状況に慣れてないから、あんな感じになるもんだよ」
そう言い部室へと帰って行ってしまう明輝弘に竹下は半信半疑のまま後を追うように部室へと戻る。
俊哉も片づけを終えて部室へと戻り、黙々と着替えをしてそのままフラフラと部室を後にする。
帰り道、俊哉はスマフォを開きラインのフレンド画面をジッと見つめる。
今日登録した姫野つかさの名前は間違いなくあり、俊哉は夢かと思っていたが現実であることを実感していた。
(夢じゃあないな。でもあの子、前髪で隠れてたけど…可愛い顔してたよな…)
あの時の司の表情を思い出し、真っ赤な顔をしながら話す彼女の顔を思い浮かべると俊哉もまた少し顔を赤らめながらトボトボと自宅へと帰るのであった。
(どうしよ…何か書いた方が…いいよね?)
俊哉は結局何も出来ずに今日を終えるのである。
また丁度同じ頃の別の場所でも何か書いたらいいかどうかが分からず1人部屋で悶える司の姿があったのは別の話である。
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