第12話 嘘でも…
聖陵学院の生徒たちが入部届を提出し賑わっている頃、職員室ではその提出された入部届を各部活動の担任へと渡されていた。
そんな中、職員室に身長は170センチ後半で良くも悪くも至って普通とも言える顔立ちの青年教師が入ってきた。
「おぉ春瀬先生。入部届来てますよ」
隣の席に座っている男性教師に声をかけられる青年教師。
彼の名前は
ここ聖陵の現国の教師であり、野球部の監督も務めている。
彼の机の上には入部届の紙が置かれており、普通なら喜ぶところであるが春瀬の反応は少し違った。
(まぁ初めはいつもこんな感じなんだよなぁ。入部はするけどいつの間にか幽霊部員になったり、他の文化部に移ったり。俺が就任した頃は人数いて試合も出来たけど次第に減っていって現在では来てくれてるのは二人。はぁ、どうせ今回も同じだろうよ)
ペラペラと入部届を捲りながら確認をする春瀬。
何枚か捲った所で彼の手が止まった。
「あれ?この名前って…」
入部届に書かれていた名前を見ながら呟くと、すぐに机のパソコンで何かを調べ始める。
そしてとあるホームページにたどり着くと何回か画面と入部届を見ながら確認し、次に他の教師に話をしに行き何か紙を見せてもらい確認する。
「やっぱり。てか、なんでいるんだよ。こんな学校に。」
そう言いながら次の紙を捲るとさらに驚いた。
「おいおいウソだろ。あ、コイツも、コイツも名前知ってる…」
全ての紙を確認し春瀬は椅子に座りながら驚いた表情を見せながらも自然と笑みが零れていた。
「いやいや。これは何かのドッキリじゃないか?いや履歴書も間違いなかったし。あるいは同姓同名?これは次の練習日に確認してみるか。誰かが悪戯でやったって事もあるしな。」
何やら自分で解決をした春瀬。
そして春瀬は入部届の中から二枚の紙を上に広げながら呟く。
「この二人。本物だったらこれは事件だぞ。あぁしかし信じてはダメだ…」
半信半疑の春瀬だが、もはやニヤケが止まらなかった。
ここ最近の野球部は実質二人しか活動しておらず、グラウンドでは女子ソフトボールと合同で使わしてもらっているのが現状である。
また他の部活からも半分厄介者の扱いを軽く受けており、廃部すべきとの声も上がっている状態である。
春瀬としても結果を目に見える形で残したいところでのこの入部届が届いたら、嘘でも信じてみたいのは当然ではある。
「あぁもうこの際嘘でもいいわ。俺に夢を見せてくれよー。ちゃんと来てくれよぉ、
二枚の入部届を見ながら呟く春瀬であった。
そしてその夜、俊哉はと言うと初練習に備えて荷物を詰め込んでいた。
中学の時に使っていたユニフォームとグラブにスパイクを野球用の鞄へと入れている。
「明日から部活動が始まるのか。シュウの方はすでに始まってるみたいだし、俺もうかうかしてられないな。明日から楽しみだな。あと、他の仲間は誰が来るのだろうか。竹下は“大丈夫だ。問題ない。”とドヤ顔で言ってたけど…なんか心配だ。」
独り言をボヤキながら荷物を確認する俊哉。
荷物が詰め終わると、そのまま布団の上へとボフンと寝転がり天井を眺めながらニッと笑顔を見せながら呟く。
「さぁ、明日から高校野球の始まりだ。待ってろよシュウ!そして甲子園!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます