泣きむしな星

雨世界

1 聞こえるよ。君の声が、ちゃんと聞こえる。

 泣きむしな星


 登場人物


 ゆらめき いなくなった男の子


 かがやき 残された男の子


 プロローグ


 聞こえるよ。君の声が、ちゃんと聞こえる。 


 君のためなら、僕はどんな犠牲でも払える。たとえば、……それが僕の命、だったとしても。


 ……だから、ばいばい。


 君の星を見つける


 愛を探そう。

 愛を知ろう。

 そうやって、愛を知って、誰かを愛そう。

 それから、お返しに、……誰かに、愛してもらおう。

 ……誰かに。

 いつか、……きっとさ。


 本編


 見上げると、……そこには本当に美しい星空があった。

 

 こんなに美しい星を見たのは、……どれくらい久しぶりのことなんだろう? とそんなことをかがやきは、偶然見上げた星空を見て、思わず、その足を止めて、しばらくの間、そんな美しい星空のある風景を眺めながら、思った。


 かがやきは、ずっと一人だった。

 小さな子供のころから、ずっと、ずっと一人だった。家族も、友達も、恋人も、頼れる他人(大人)も、誰もいなかった。

 でも、そんなかがやきにある日、たった一人だけ、(まるで本当の奇跡のように)寄り添ってくれる人が、聖夜の日にあらわれた。

 それがゆらめきだった。


 僕たちは幸せになれたけど、……きっとこの世界のどこかには、今も泣いている人がいる。……この宇宙のどこかには、……きっと今も泣いている星があるんだよ。


 そんなゆらめきの言葉を、美しい星空を見て、かがやきは思い出した。


 ……だめだよ。君はちゃんと、生きなくちゃだめなんだよ。


 そんなことを、ゆらめきはかがやきによく言っていた。


 だからかがやきは生きようと思った。(そして、実際にかがやきは、今まで生きてくることができた。それは、全部ゆらめきのおかげだった)


 誰かを愛して。

 誰かに、愛されて。

 そうやって人は、……きっと大人になるんだよ。

 そうやって人はさ、……幸せになるんだよ。


 それから僕は自分のやった行為について、後悔なんて、ちっともしていないよ。


 そんなゆらめきの声が聞こえた。


 それは嘘ではなく、たぶん、本当のことなんだろうと思った。


 ゆらめきはこの世界のありとあらゆる悲しみや不幸を自分の中に溜め込んで、そして、それらの感情を浄化するようにして、たった一人で、自らの命を犠牲にするようにして、にっこりと笑いながら、……かがやきのいる世界からいなくなった。


 泣かないよ。だって僕、今、すっごく幸せだもん。


 そう言ってにっこりとゆらめきは笑った。(かがやきは泣いていたけど)


 かがやきは美しい星空から顔を真っ暗な大地の上に戻して、それから再び自分の足で、一歩ずつ大地の上をゆっくりと歩き始めた。

(僕は大地の上を歩くのが、あるいは、這いずり回るのが似合っている、とかがやきは思った)


 ……すごく、こわれやすいもの。……それっていったい、なんだと思う?


 また、そんなゆらめきの声が聞こえた。


 ……それは君だよ。とかがやきは言った。


 ……さようならは、言わないよ。……絶対にね。


 とゆらめきは言った。


 でも君の目は、僕にちゃんとさよならを言っていたよ。とかがやきは言った。


 消えちゃったね。……本当に、あっという間だったね。


 とゆらめきは言った。


 ……本当だね。本当にあっという間だった。


 と、かがやきは(涙を流しながら)言った。

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