第十二話…式典
……今日の空は……。
今日の空は灰色、雨である。ゲームの中の空は黒、星が煌めく夜だった。
「まぁ……飲めや兄弟、ウハハハハ……」
「あ……頂きます。」
ハイオークの族長に気に入られた彼の名は、ベルン・ヘーデルホッヘ。またの名を老騎士ともいう。
そう、族長に気に入られたのは、
ヾ(゜∀゜)人(゜∀゜)人(゜∀゜)ノ ぽこうさぶひぃ~♪
の方ではなく、老騎士だった。
「貴殿の名は聞き及んでおり申す。ウハハ、今宵は愉快じゃ!」
「恐れ入り仕る……」
大きなハイオークの族長にバンバン背中を叩かれた老騎士はむさえた。
老騎士の杯に、葡萄酒がなみなみと注がれる。
「うわっはっは! でな、ワシの妹を嫁にする話は受けてもらえようの?」
「ごほっごほっ」
再び老騎士はむせる。
……(メ´・ω・) ぁん? (’∀’;) ぃぇぃぇ……。
「……」
――それから数日後。
モンスター達が多く住む、森の奥の【邪教の館】にて、怪しげなる木と連なる霊芝のシワシワの化け物のような司祭が口を開く。
「……んほ……ごほんごほん、失敬」
「汝、ベルン・ヘーデルホッヘは……
「ち……、、、誓います……
「誓いますわ❤」
「では、誓いのキスを!」
(´・ω・)(・ω・`) ❤
【システム通知】 … ハイオーク族族長の妹と老騎士は結婚しました。
……ちゃんちゃかちゃ~ん♪ どんどんぱふぱふ~♪
「お父さん、おめでとう!」
実の娘にお祝いされ、年甲斐もなく照れる老騎士。
ある種、この森のまわりの住人が平和になるであろうと感じた瞬間だったのかもしれない。
ハリコフ王国側のブタの家臣である人間の騎士と、モンスター側の族長の妹が結婚した形になったからだ。
がんがんと音を鳴らした祝福やら、粗っぽい歓迎の中、森の中にしては比較的広い【邪教の館】にて無事に式は執り行われた。
かなり人間からしたら野蛮な式であった。なにしろほとんどのお客様はブタ!
もう右も左も、ブタ! ブタ! ブタ! ぶひぃ~な式だった~♪
……実はこの老騎士、若いころに兵卒から武勲を挙げ騎士爵をうけた戦士の誉れ高い勇士だった。
当時、若くて血気盛んだったハイオークの族長があこがれた対象だったのだ。
ハリコフ王国の正当なる騎士とハイオークの妹との結婚は、飲みにゅけーしょんなる伝統により、かなり勢い(しつれい)に流されたとはいえ、正統たる騎士と正統たる魔族の初の公式カップルとなった瞬間だった。
――
「そ……、それは誠か!?」
……ボロンフ辺境伯爵は書斎でワナワナと手にした杯を震わせていた。
ボロンフの麾下であるはずのブタが、仇敵である『モンスター達と勝手に手を結んだ』との知らせを受けた時、彼は天に向けて大きく呪い叫んだと言われている。
――誰かが幸せになれば、運命の女神の嫉妬により誰かが不幸になるかもしれない。(歴史学者 マーチャン・アサイ)
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