第21話 花と鳥の楽園
ここはどこなんだろう。
周りの景色がとても色鮮やかに見える。
緑が生い茂っていて、鳥たちもたくさんいる。
しばらく、歩いてみると、人も大勢いた。
みんな、この場所の植物や鳥を見ている。
どうやら、ここは植物や鳥を間近で見ることができるテーマパークらしかった。
家族連れの人や友人同士が、みんなでわいわいしながら楽しんでいるのが分かる。
私は、ここに一人でいたが、その雰囲気につられて、何だか楽しい気分になってきた。
私も、ここを色々と見て回ろう。
そう思って、敷地内をぐるぐると歩き出した。
敷地内はとても広くて、マップがないと何処を歩いているのか全く分からなかった。
緑も多いため、何処を歩いたのか覚えておらず、さっき通ったような場所も何度か歩いていたような気がする。
それでも、色んな種類の色鮮やかな花や鳥たちがいっぱいいたので、飽きることはなかった。
小さい鳥たちも可愛かったが、大きな鳥を間近で見れるのは、とても迫力があって感動した。
花や鳥のことは、全く詳しくなかったが、色々と見て回るうちに次第に愛着がわいてきた。
鳥たちも、毎日たくさんの人がいる環境に慣れているせいか、こちらが近づいても全く怖がる感じがなかった。
どの花や鳥たちもみんな生き生きしているように見えて、ここはまるで楽園のようだと感じた。
敷地内には、色々なエリアがあるみたいで、それぞれのエリアに説明書きの看板がたてられていた。
説明を読むと、余計に花や鳥たちのことが理解できて、楽しくなってきた。
簡単に花や鳥といっても、実に形や大きさが様々で、エリアによって特徴が違うのがはっきりと分かった。
このテーマパークだけでも何十種類も存在するのだから、世界にはもっとすごい数の花や鳥たちがいるのだろうなと思った。
色んなエリアを歩き回り、全てのエリアを回り終わったかなと思ったころには、すでに日が暮れ始めていた。
それほどまでに、このテーマパークは広くて、私が夢中になっていたのだ。
周りの人たちも、少しずつ帰っていく人が目立ち始めた。
私もそろそろここを出ようかな。
そう思って、人々の流れに交じって、出口の方へ向かって行った。
みんな、当たり前のように出口から外へ出ていく。
私もみんなと同じように、そこを通り過ぎようとすると、係員の人に止められてしまった。
私は、何故止められてしまうのか訳も分からず、もう一度出ようとする。
すると、また係員に止められてしまった。
そして、みんなが帰っていく中で、私だけ中へ戻れというように手で追い返されてしまった。
これは一体どういうことなのだろうか。
私は、実はこのテーマパークの関係者なのだろうか。
真剣に考えてみたが、思い当たることがなかった。
他に何か、ここを出てはいけない理由があるのだろうか。
全く分からないまま、私はもう一度、テーマパークの中に戻り、うろうろと歩きながら考えた。
しかし、どう考えてみても分からない。
何故、自分だけがここから出ることを拒否されてしまうのか。
困り果てながら、ぐるぐると歩き回り、ふとエリアにある水場をのぞき込むと、そこに映っているはずの自分の姿がない。
いや、よく見ると映ってはいたのだが、驚くことに映っていた自分は人間の姿ではなく鳥の姿だった。
私は、いつの間にか鳥になっていたのである。
そういえば、なんとなくいつもより見える景色の高さが低いような気がした。
これでは、出口で係員に止められても仕方がない。
しかし、私は人間。
見た目が鳥になろうとも、何とかしてここを出たかった。
私は、人が出入りする場所以外から、ここを出られないか必死になって探し出した。
この広いテーマパークの周りをぐるっと一周回って、どこかに外へ出られる場所がないか確認する。
しかし、何処にもそんな場所はなかった。
やはり、無理か・・・。
諦めかけていたとき、とっさにひらめいた。
今の私の見た目が鳥ならば、空を飛べるのではないか。
だとしたら、上に飛んで壁を乗り越えればいい。
我ながら、いい考えだと思った。
私は羽を広げて、少し飛んでみる。
問題なく、体は宙に浮いた。
これなら、簡単に壁を飛び越えられそうだ。
私は、そう思って、力強く上へと羽ばたいた。
体がどんどん地面から離れて、上へと上がっていく。
私は、必死に壁の一番上を目指した。
そして、割と簡単にたどり着くことができた。
しかし、これで終わりではなかった。
壁から上は、金網フェンスが続いていたのである。
このフェンスが、どこまで続いているかは分からなかったが、ここまで来ては後には引けない。
私は、まだ見ぬ出口を目指して、必死に上へと向かって飛んだ。
どれだけ飛んでも、金網フェンスは途切れることなく続く。
それでも、どこかに隙間や穴があって、そこから抜け出せるのではないかと思い、必死に飛びながら探す。
しかし、期待とは裏腹に出ていけそうなところは、どこにもなかった。
そのうち、金網フェンスの一番上の行き止まりまで来てしまった。
どうやら、このフェンスはドーム型になっており、テーマパークの天井を覆っているようだった。
長い間飛んで、疲れてしまった私は、もう飛ぶことができなくなり、地面に戻ることにした。
私は、ここから出ることができないのだ。
これだけ頑張って、分かったのは、その事実だけだった。
ここは花や鳥たちにとっては、楽園のような場所。
しかし、中身が人間である私には、楽園とは程遠かった。
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