和の音が響く

あめのすけ

二歳にて、第二の人生。

「今日からここがお前の家だよ、和音」


1849年春。

試衛館道場当主・近藤周助は、自分の腕に抱かれ、黙したまま己を見上げる幼子に告げた。


幼子の名は芦川和音。

理由あって、本日より周助の門下生となる。


雪解け水が流れ出す季節。

この日はとても暖かく、和音の柔らかな群青色の髪の毛を、優しい風がさらさらと撫でた。


「かずねのおうちはここじゃないよ」


全てを理解するには和音は幼すぎる。

不思議そうに大きな目を瞬かせ、丸い顔をこてんと傾げた。


その様子に周助は一瞬切なげに微笑み、和音を優しく抱きしめる。


「お前のことは俺が守る。今日から俺が和音の父上だ」


幼子をしかと抱え、男は固く決意した。

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