第22話  準決勝

 今朝の座長はやたらとご機嫌だった。


 ベスト4に座からの3人がいるのだ。つまりどう転んでも準優勝確定なのだ。ひょっとするとワンツーフィニッシュの可能性すらある。3位と4位決定戦もある。ギランが今日負けても1〜3位に二人も入るのだ。機嫌が良い筈だった。


 今日はいつもと違い座の者一同で送り出された。


 大輔はいつもの通りに向かうが、トーマス戦はやりにくい。


 同じ座の者は手の内を知り尽くしているからだ。


 大輔は鞭を使って脚を絡める戦法に出る予定だ。トーマスには鞭を使った事が無い。あくまで予定で、大輔のような者は予定通りに行かないと相場は決まっている。


 トーマスはスタミナが大輔よりかなり上なので持久戦になるとトーマスの方が有利だ。


 因みにダイスの秘密を知っているのはケイトだけだ。


 今回はダイスを持っている。試合早々にダイスを振る為だ。最近アンラッキーが出なくなってきたので期待していた。

 大輔の戦いは基本的に戦略を立てはいるが、運に左右される事が多い。


 競技場への扉が開き中央に向かう。熱狂的な騒ぎで会場は満員だ。大輔は気が大きくなり手を頭の上で叩き、群衆を煽っていた。


 会場の雰囲気に飲まれ興奮してきたのだ。


 対するトーマスは冷静で対峙してお互い睨みあっていた。


 司会が同門対決だの座の紹介などをしていたが大輔達は聞いていない。ただ、開始の一言を待っていた。


 そろそろ開始の合図のようなのでダイスを振るが、よりによって99が出た。アンラッキー度大だ。


 そして開始が告げられた。大輔は開始早々にダイスを拾い距離を取り、鞭で攻撃を始めた。今まで殆ど鞭で攻撃していないから皆何をしようとしているのか理解出来なかった。トーマスも警戒して攻めあぐねていた。


 漸くトーマスが苛立ちから間合いを詰めるが、大輔はそれを許さず距離を置き地味な攻撃を続ける。引いては攻めを繰り返し、1分経過したので再びダイスを転がす。出たのは81だ。


 距離を離すのを止め、一転し距離を一気に詰める。そしてブラピジャンプをしようとし、前方に飛ぶ振りをして後ろに下がる。

 やはり警戒されていてモーニングスターが予測位置に飛んでいた。

 大輔の鞭が鎖を捕らえ一気に地面に倒れ込みながら体重を掛けてモーニングスターを奪う。奪ったモーニングスターを絡まった鞭ごと、ハンマー投げの要領で何処かに飛ばした。

 するとVIP席に飛び込んで行き、誰かの背後に回り込んでいた者の頭を撃ち砕く。雷が落ち乗馬、気配察知、隠密のスキルを咀嚼する旨が聞こえてきた。


 大変な騒ぎだったが、後で聞いたが領主を狙った暗殺者だったようで、ナイフが首を掻き切る寸前だったと謝礼が出た程だ。


 そんな事は露知らず2人は身構える。トーマスはサブウェポンの短剣を出して応戦するが、こちらはブロードソードなのでリーチが違う。果敢にトーマスが攻めてくるが、剣の腕は大輔の方が、正確にはダリルのスキルだが上だ。段々とトーマスを追い詰め、遂に15合位で首筋に剣を当てた。


 トーマスは手を挙げて降参した。


 会場は拍手喝采で、トーマスは早々に闘技場を後にし、大輔は観客に両手を掲げて勝利の雄叫びを上げるのであった。

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