第6話 祝勝会へ
ケイトを伴い大輔は座長の所に向かう。しかし、二人共来たばかりで、どこに行けば良いのか分からず彷徨っていた。
暫く彷徨っているとガラグと出くわした。
「ガラグさん、俺座長の所に行かなきゃなんですが、場所が分からなくて困っているんです。どこにあるのでしょうか?」
「おお!坊主はどうやら死ななかったようだな。嬢ちゃんも良かったな。ダイスが死ねば娼館送りだもんな。俺も丁度ボスに用がありこれから行く所だったんだ。よし、ついてこい」
そしてあっさり座長の部屋に来る事ができた。
「ボス、ルーキーを連れてきたぞ!」
許可の返事が来る前にドアを開け部屋に入ると、座長が一戦交えている所だった。
「ばか野郎!、いきなり開ける奴がいるか。まあいい、なんだ?」
ケイトは真っ赤である。
座長が致している最中だからだ。子供には刺激派が強すぎるが、大輔もだ。二人は慌てて部屋の外に出る。
「ルーキーが起きたら直ぐ連れてこいと言うから来たんだぜ」
「ああ、そうだったな。ちょっと待て。直ぐ終わらせるから。おらぁ!行くぞ!」
女性の矯声と座長の恍惚の呻きと共に行為が終わりを告げた。ガラグはにやにやしながらその様子を見ていた。
そしてバスローブだけを羽織り、女を裸のまま外に出し、服や荷物も放り出した。どうやら娼婦だったようで、娼婦と致していたようである。そして裸の女に真っ赤になりながら、二人は部屋に入る。その女は周りの目を気にせず服を着て引き上げていく。
「おお!ダイスだったな。良くやった!お前のお陰でひと財産稼ぐ事が出来たぞ。初戦のルーキーには座長がルーキーの勝ちに賭けるのが仕来たりでな。お前の勝ちは二つあり、ただ勝つのと殺すのだったよ。まあ、二つに賭けざるを得なかったが、しかし1万倍だぞ、金貨が1万枚になったよ。だから約束の女もお前さんの要望通りの生娘を買ってやったぞ。その女はお前の好きにしてもよい奴隷だ。まあ、一応儂の奴隷だがな」
改めて座長をみると50歳位の細身の壮年だ。体は傷だらけで、剣闘士上がりな雰囲気がある。
「はい。助かりました。俺は今後どうすればよいのでしょうか?」
「ああ、明日の試合に出ろ。合計で10戦出れば奴隷から解放してやる。闘技奴隷の決まりだからな。また全勝だったら褒美がある。」
「彼女はどうなりますか?」
「そんな醜女に情が移ったか?お前が欲しければ1000万出せ。こいつを買った値段だ。または解放後10戦戦え。1戦につきファイトマネー100万だ。ここにいる限り誰もその奴隷には手を出さないから、まあ考えておけ。それとまああり得ないな、無敗だったらその女はお前の所有奴隷にしてやる。ガラグ、また稽古をつけてやってくれ。ダリルを殺ったから明日のファイナルの前座戦だとよ。早速申込みが来たぞ」
「わかりやしたボス。おいお前ら外で少し待ってろ。ボスと話したら早速稽古だ」
部屋を出て廊下で待機になった。
「あの、勇者様、先程の事はどういう事でしょうか?」
「うん。出来れば君を解放したい。ってまずは俺が生き残れる力を付けなきゃだけどな。」
「そんな。私なんか捨て置きください。」
「駄目だよ。それよりなんでケイトは奴隷になったの?」
「はい。敗戦国の神官見習いでしたが、逃げている所を奴隷狩りに捕まったのです」
そして逃げている時に火傷と、魔物に襲われ体に傷を負ったと。それで身動き出来ない所を捕まったという。
彼女は必死だった。大輔が死ねば人生が終わる。大輔は後で聞いたが、丸一日意識が無い間の下の世話までしてくれたのだ。
ケイトのいる位置はいつの間にか大輔の左側のみだ。火傷をしていない側を大輔に向ける。ケイトは大輔が勇者だと信じて疑わないのだ。
ケイトは今は醜くなった左側が恨めしかった。彼に捨てられると娼婦をさせられるのだ。そして勇者は絶対的な存在だ。優しい以外今は取り柄がなさそうだが、自分が成長を助けねばと思う。二度と人を好きにはなれないと思っていたが、今は弱いとは言え勇者の筈だ。彼に付いていけば間違いはないと思うが、いずれ奴隷から解放されたら、自分のような傷だらけで顔も醜くなった者は必死に取り入らないと直ぐに捨てられると焦ってもいた。
そして大輔の気遣いにドキドキしていた。大輔のように怪我をしたばかりの傷は魔法で簡単に治療が出来るが、ケイトのように古傷になってしまうとかなり厳しいのだ。
「あとこの世界に君の怪我の跡を治す手立てはないのか?」
「多分最上級の回復魔法ならば或いはですが、お金が5000万は掛かりますから現実問題として無理ですよ」
「そっか手立てがあるんだね!」
と話しているとガラグが出てきて
「時間が無い、稽古をするからついてこい」
また稽古場で稽古をつけて貰う。
まずは攻撃と言われ、剣を振ると3合目でガラグの手を叩き剣を落とさせた。
ガラグが驚いていたが、大輔自身が一番驚いていたりする。油断もあったが、当てられたのだ。
次に防御は綺麗に受け流すが、20合位で大輔は肩で息をし、剣が持てなくなっていた。
上半身のスタミナが不足していたのだ。
そこからは一方的にやられていく。
「何故かは分からんが、ダリル並に剣の技術はあるな。しかし、膂力とスタミナが足りなさ過ぎるぞ。死にたくなければ鍛えるんだな。よし今日はこれまでだ。お前下半身はしっかり鍛えているようだが、上半身とのバランスが悪過ぎる。明日は短期決戦で行くんだな。長期戦だと殺られるぞ。それじゃあ飯だ。今日はお前の祝勝会だぞ。確か3カ月振りかな?最近ルーキーは初戦で皆死んでいてな。生き残ったのがダイスが久し振りなんだよ。まあ、今日はボスがご馳走してくれるから楽しめ。勿論嬢ちゃんはダイスの従者として身の回りを世話しながら一緒に食べるんだぞ」
そう言うが余裕の無い大輔には苦痛でしか無かった。
ガラグは大輔を強引に引っ張っていく。その後ろを上着の裾を掴んだケイトがついていく感じだ。
そうやって筋肉痛で腕の上がらなくなった大輔とケイトは、ガラグに食堂に連れていかれるので有った。
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