第4話 後輩の南ちゃん
「それじゃ、行ってくるね」
休日明けの出勤日、ベッドですやすや眠るレンくんに声をかけて家を出る。お仕事イヤだなぁ。確かに仕事自体もイヤだけどレンくんを一人にしてしまうのが心苦しい。
「はーあ」
「立川さん、おはようございます。どうしたんですか? ため息なんかついて」
「わわっ、南ちゃん。おはよう」
駅でばったり出会ったのは職場の後輩の「
「また、飼い猫のレンくんのことです?」
「そうなんだよー。レンくん一人にしてると思うともう」
南ちゃんはレンくんのことを知ってる人間のうちの一人。たまに遊びに来たりするよ!
「レンくんだって男の子なんですから大丈夫ですよ」
「でも心配だよぉ」
「それに最近新しいゲーム買ってあげてたじゃないですか。寂しさも紛れてますって」
「それはそうだけどさぁ。でもレンくん、ゲーム渡したときになんて言ったと思う? 『ゲームは嬉しいけどボクはご主人様との時間が一番嬉しいな』って言ったんだよ! それがもう」
「その話何回目ですか……ほら、そろそろ最寄り駅ですよ」
レンくんのことを熱弁してたら職場の最寄り駅についた。仕方ない、お仕事頑張りますか!
――
「ああー、ようやくお昼だぁー」
長かった午前中が終わり、お昼ごはんの時間である。ささ、お弁当お弁当〜
「立川さん、よかったら一緒にどうです?」
「南ちゃんもお昼ごはん? いいよ〜」
二人して休憩室に行き、お弁当を広げる。私のお弁当はレンくんに作ったお弁当と内容がほぼ一緒なのだ。
「立川さんのお弁当、レンくんが来てから豪華になりましたよね」
「いやぁ、あはは」
「前はご飯に海苔乗せただけとか……」
「それを言わないでぇ」
「見た限りレンくんの好きそうなものばっかりですけど栄養バランスとか大丈夫なんではすか?」
「ふふん、ちゃんと考えてるよー」
そう、このお弁当は一見子どもの好きそうなものしか入っていない。しかーし、その中身にはちゃんと野菜が入っているのだ!
まず肉団子、これにはレンくんが苦手なピーマンを細かくフードプロセッサーで刻んだものが入っている。この肉団子はレンくんのお気に入りだ。中身を教えても喜んで食べてくれる。
そしてスパゲッティのミートソース、これには玉ねぎが入っているんだけど見えなくなるまで徹底的に煮込んである。レンくんは玉ねぎがあんまり好きじゃないからね。ピーマン程じゃないけど。
ちなみにレンくんは猫だけど猫が食べちゃいけない食材でも食べられる、というよりは人間と同じものを食べることができるのだ。
そして最後にだし巻き卵、この卵にはレンくんの大好きなかつお出汁をふんだんに使っている。なかなか巻くの大変なんだよね。
「ていうかなんでそこまで料理できるのに今まで作らなかったんです?」
「ゔっ、それは……作る相手がいなかったからだよ……」
「……なんか、ごめんなさい」
「南ちゃんはいいよねー、まだ二十三だし可愛いし」
「いえ、そんな……」
「私知ってるんだからね、南ちゃんが飲み会の後に男と……」
「わーわー! 言わないで下さい!」
そう、南ちゃんは会社でもかなり人気の女の子だ。狙ってる男性陣は多いと見える。
羨ましいなぁ、とか思ってる時期もあった。でも今は微塵にも思わない。何故か? それはレンくんがいるからだ!
「そういえば立川さんのデスク、またレンくんの写真増えました?」
「お、鋭いね。この前ショッピングモール行ったときにプリクラ撮ったんだ〜」
「本当にレンくんって女の子の服似合いますよね」
「へへへ〜、この前もいっぱい買っちゃったよ。写真見る?」
「うわー、すっごい……こんな着こなしできるなんて。ちなみにいくら使ったんですか」
「うーん、十万くらい?」
「むぐっ! 一日でですか!?」
「そうだよー。似合う服はすぐに買わないとね。あんまりお出かけもできないし」
私は実のところお金を余らせていた。お給料はいいけど使い道がなかったからね。貯金はかなりあるしレンくんに使ってあげるのだ。
「あ、そろそろお昼休憩終わりですね」
「うわ、ホントだ。あーあ、イヤだなぁ」
イヤだと思っても時間は過ぎるのである。まぁ、なんとか片付けて早めに家に帰りたい。レンくんとゲームもしたいし!
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