発掘物件
みなはら
第1話 TRPGシナリオのために書いたおとぎ話
-まえがき-
まずは読みづらい文書でごめんなさいm(_ _)m
これは作成したTRPGシナリオの一部で、セッションの情報提供のために作成した文書です。
それを
今回転写するにあたり、少し直そうかと思ったのですが、結局改行や段落一字下げくらいしかいじりませんでした。
一度形にしてしまったものを再び作り直すのは難しいものですね(苦笑)
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序文. ある地方に伝わる民話
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昔々あるところに、とてもえらい魔法使いが住んでいました。
魔法使いの家は人があまり来ない静かな森のおくふかくにたっていました。けれども魔法使いはとりわけ人ぎらいだったわけではなく、一夜の宿を求めておとずれたたび人や彼にてだすけを求めてやってきた人たちをこころよくむかえ入れたし、彼らに手作りのお茶やクッキーをふるまうことを楽しみにしていました。
魔法使いはけっこういたずら好きで、 (中略) そうやって魔法使いは、のんびりとたのしくくらしていました。
-◇-
ある日の午後、魔法使いのところに王さまからの使いがやってきました。
使いが持ってきたのは、王子の誕生日のお祝いの招待状と大臣からの手紙でした。
それを見た魔法使いは、すこしゆううつな気持ちになりました。
なぜなら魔法使いはこのとてもわがままな王子のことが好きではなかったし、大臣からの手紙はいままでに何回もとどいている手紙と同じで、どうせ王子のわがままな命令をどうすればいいかという相談だと思ったからです。
使いの兵士にお茶をだしておいて、魔法使いは気乗りがしないまま手紙をよみはじめました。
手紙にかかれていたのは大臣が王さまから受けた命令の相談で、王子のわがままのことではありませんでした。
王さまは大臣に、王子がどんなりっぱな王さまになるか見てみたいと言って、それを見ることができる魔法の品物を王子の誕生日までにさがしてくるようにと命令したのだそうです。
大臣が魔法使いにおくった手紙には、りっぱになった王子のすがたを見ることができる品物を作ってほしいとかいてありました。
魔法使いには大臣の考えていることがよくわかりました。あの王子が大きくなったなら、さぞかしわがままな王さまになるにちがいないとだれにでもわかるからです。
魔法使いは考えました。
『あの王さまはいい王さまなのだが、王子をあまやかしすぎる。王さまが王子のわがままをやめさせないから、だれも王子のわがままを止めることができないのだろう。なんとかいい方法はないものだろうか?』
あれこれと頭をひねりましたが、なかなかいい考えはうかんできません。
魔法使いは王子のことで頭をなやませるのにはもううんざりしていたので、いっそのこと出かけるのをやめて、王子がよろこびそうなお祝いの品物でも使いにもっていってもらおうかと思ったとき、とつぜんいい考えがうかびました。
魔法使いは使いの兵士に、「よろこんでお祝いにでかけます」と伝えました。
そして自分の思いついたかんがえを思いだしてくすくすとわらいながら、さっそくお祝いの品物じゅんびをはじめました。
-◇-
王子の誕生日がやってきました。5才になった王子のことを祝って町はとてもにぎやかです。
町のひろばには屋台や見せ物小屋がたって、おとなもこどもも楽しそうにあるいています。
おしろは赤や青や黄色のとてもきれいなはたでかざられていて、ときどきお城のにわからうちあげられた花火がぽんぽんと大きなおとをたてていました。
魔法使いはお城の門にむかっていって、 (中略) お祝いにきた人たちはくちぐちにおめでとうと言いながら、もってきたお祝いのおくりものをじゅんばんに王子にわたしました。
王子はえらそうなかおをしてそれを受けとっています。
やがて魔法使いの番がきました。
魔法使いはすまして王さまと王子のまえでおめでとうといいました。
そして魔法使いはもってきたおくりものをさしだしますが、王子はへんな顔をしてうけとりませんでした。ほかのおくりものはきれいでめずらしい物ばかりだったのに、魔法使いのおくりものはしんちゅうでできたおもちゃの王かんで、かざりも何もついていないようなみすぼらしい王かんだったからです。
やがて王子は、顔をまっかにしておこりだして魔法使いに言いました。
「こんなおくりものいらないや!!
ほかのおくりものみたいに、きれいでめずらしい物をくれないとおしおきだぞ」
魔法使いはあわてずにこう言いました。
「王子さま、これはこの世にふたつとないとてもめずらしい魔法の王かんです。
これを頭にのせるとだれよりもえらくなります」
「いまだってえらいぞ」
王子がそう言うと、魔法使いはくびをふって言います。
「あなたよりもえらい人はたくさんいますよ。たとえばあなたの父上です。
これは魔法の王かん。だれにでも命令できるようになります」
「ほんとうに?」王子はそうたずねました。
魔法使いはうなずきました。まわりの人たちは、そのはなしを聞いてざわざわとしはじめます。
「それだけではありません。これを頭にのせれば魔法だってつかえます。
ちょっとかんがえるだけで、
空をとんだり動物になることだって思いのままです。
それでもいらないというなら……」
魔法使いは王かんをしまおうとしました。
王子はあわてて王かんをとって頭にかぶりました。
「これはぼくのだ!!
だれにもわたさないぞ」
王子がそういうと、まわりにいた人たちは王子にむかっていっせいにおじぎをしてこういいました。
「その王かんは王子さまのものです。
だれもとろうとはしません!!」
王さまも、すわっていたいすから立ち上がってそう言っています。
「すごいや、ほんとうに魔法の王かんだ」
王子はうれしそうにそう言って、めずらしく魔法使いにありがとうと言おうとしました。
けれどもさっきまでそこに立っていた魔法使いは、いつのまにかけむりのようにどこかへいなくなっていました。
-◇-
そのあとのお城のさわぎはまったくすごいものでした。
王子はたいくつなぶとう会をやめさせて、かわりにお城ぜんぶを使ってのかくれんぼやおにごっこをしました。
お城のりょうり番はあまいケーキやおかしをたくさんつくったし、兵士たちはお城のにわでせんそうごっこをさせられました。
そして空をとんでお城のてっぺんへのぼったり、ねずみやくまになってまわりの人をおどろかせたり、 (中略) 王子は楽しそうでしたが、命令される人たちはたまりません。
でも王子がかぶっている王かんのせいで、みんなも王さまも王子の言うことをきくしかありませんでした。
あそびつかれた王子が王さまのベッドでねてしまうころには、王さまも大臣も兵士やそのほかの人たちも、うごくこともできないほどつかれていました。
やがて、つかれて王子のベッドでねている王さまのところに魔法使いがあらわれて、ねむっている王さまをおこしました。
王さまは魔法使いをつかまえようとして、大きなこえで兵士をよぼうとします。
「しずかに!!せっかくねている王子がおきてしまいますよ」
魔法使いがすました顔でそういうと、王さまはあわてて口をふさぎました。
そのようすを見てくすくすとわらいながら、魔法使いは言いました。
「王さま、わがままにそだった王子がどんな王さまになるかわかりましたか?
いまの王子にひつようなのが、何なのかもわかったと思いますが?」
そう言ってにこにことわらっている魔法使いを見ているうちに、顔をしかめていた王さまもつられてわらってしまいます。
「どうやらわがままな王子にひつようなのは、
おくりものではなくしつけのようだな」
そう言った王さまをみて、魔法使いは大きくうなずきました。
そして魔法使いは王さまといっしょに王さまのへやへいって、ねむっている王子の頭から王かんをはずすと、王さまにあいさつをして家へとかえっていきました。
-◇-
つぎのあさ、王さまはねむっているみんなをおこしました。
そしてねむそうにしているみんなのまえで王子をしかって、きのうのさわぎのことをみんなにあやまらせました。
そして王さまも、いままで王子をあまやかしていたことをみんなにあやまって、これからは王子がりっぱな王さまになれるように、がんばってべんきょうさせるとみんなにやくそくしました。
それからしばらくたって、わがままだった王子はおとなになってりっぱな王さまになり、みんなのためにがんばってはたらきました。
それから王さまはきれいなおひめさまとけっこんして、二人のあいだには王子がうまれました。
そしてすくすくとそだってゆく王子を見て、王さまはむかしのわがままだったときのことを思いだしてたのしそうにわらい、王子の5才のたんじょうびには、王子のどんなわがままもわらってきいてやったそうです。
ところであの魔法使いはどうなったかというと、お城をさわがせたばつに王子のきょういく係をまかされて、わがままな王子がりっぱな王さまになるまでずいぶんとくろうをしたそうです。
王子がりっぱな王さまになってからは、魔法使いはまた森の家へともどってのんびりとくらしながら、たずねてくる人にはお茶やクッキーをごちそうしたり、ちょっとしたいたずらをしたりしてたのしくくらしました。
魔法の王かんがどうなったかはだれもしりません。
魔法使いは王かんのことをけっしてはなしてくれなかったし、王かんはこわしてしまったのか、それともどこかひみつのばしょにかくしてあるのかも、ついにわかりませんでした。
もしちいさな子どもがおもちゃの王かんをかぶっていて、その子どものわがままをきいているおとながいたなら、その王かんはあの魔法の王かんかもしれません。
-おわり-
-あとがき-
TRPGシナリオ本文は、現在別のことに使う予定がありまして、とりあえず未公開としております。
そのTRPGシナリオですが、もしかしたら折りをみてこちらへ公開する事があるかもしれません(^_^;)
このお話を作ったのは20代の頃です。
これは当時、自分が創作活動を中断する寸前に書いたもので、見つかるまで存在することすら忘れていたものでした。
けれども、紙面からの転写作業をおこないながら読み返していて、
文書自体の読みやすさはともかく、童話のように書かれたこの文書に込めたものは、今も当時もそんなに変わらない気持ちで書かれているのに気づくのですね。
それがわかったことは収穫であったと思います。←進歩が無いってことかな(苦笑)
まあ忘れてはいても、あまり意識せずに書いていた今のお話と当時の文章とが繋がって感じられるというのは、なかなかに面白い経験です。
一旦辞めて、新しく始めたはずの創作の道は、なぜか続いていたのですね。
面白いものです(笑)
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