第12話 未来から妹がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!05


「はふ」


 ラインを終えて、僕は寝っ転がる。


 春の夜気。


 涼しげで少し寒い。


 さりとて不快ではない。


「お兄ちゃん……」


 ルリの声だ。


「どうかした?」


「一緒に……寝よ……」


「いいよー」


 可愛い妹と添い寝は、希少な体験だ。


 ましてソレが司馬ルリとも為れば、至福も至福……ああ、ルリのお兄ちゃんで僕は幸せでございますっ。


「えへへ……」


 はにかんで入室してくる。


 こざっぱりとした部屋模様。


 趣味が読書なので、これは致し方なし。


 図書館で借りているから、積んでもいないしね。


「ラピスお姉ちゃん……どうなるかな……?」


「未来人ならどうとでもしそうだけど」


 とはいえ近未来なら、然程でもないのかな?


 まずもって時間移動が普遍的なのか。


 あるいはラピス特有のモノなのか。


「ルリ?」


「何でしょう……?」


「変なこと聞くけどさ」


「はい……」


「タイムマシンは造れる?」


「無理です……」


「構想は?」


「無いです……」


「じゃあやっぱり別人か?」


 あるいは誰かの発明を利用したか。


「お姉ちゃんは……たしかに私……なんだけど……」


「そこは理解するけどさ」


 十年未満で、そこまで技術が進躍するか……と。


 仮にするのなら、ルリの可能性の途方も無さが……皮肉の大風呂敷となって収拾が付かなくなる。


「うーむ」


 色々と考えてしまう今日この頃。


「むにゅ……」


 ルリが抱きついてきた。


「お兄ちゃんも……奇蹟……」


「ラピスと一緒で?」


「格好良い……」


「恐縮だね」


「本当……」


「そっか」


 白髪をクシャクシャ撫でる。


 シルクのように滑らかで、まるで絵本の中の少女のように愛らしくも静謐で純情無垢なオーラ。


 その囀りの様な声に悲痛がのった。


「お兄ちゃんは……死んじゃやだ……」


「今のところ健康だけどね」


「あう……」


 悲しげ。


 そして何処か悔しげ。


「私は……無力……」


「そんなことないよ」


 頭を撫で撫で。


「僕はいっぱいルリに助けられてきた」


「嘘……」


「ルリという奇蹟の女の子」


「嫌……」


「ルリがこうやって生きているから、僕はまだ絶望しないでいられる」


「お兄ちゃんに……迷惑を……」


「かけてない」


 自虐は良い方向へは向かない。


 基本的に、ネガティブ思考に益は無い。


 ルリが卑下するのは、一つ人格形成に於ける結果論だけど、僕はルリにこそ幸福であって欲しく、自分が嫌いなことを忘れられるような幸せに包まれて欲しい。


「そこそこ。こんなもの」


 そんな感じで良いのだ。


「ルリが居るから生きていける」


「お兄ちゃんが……居るから……」


 なら、


「相思相愛だね」


「あう……」


 ルリの赤面。


「じゃあ寝よっか」


「にゃ……」


 ボタンで照明を落とす。


「お兄ちゃんの……匂い……」


「変態っぽいよ?」


「変態……です……」


「そんなルリも好き」


「シスコン……?」


「だよ」


 本当に今更です。


「ルリは?」


「ブラコン……」


「にゃ」


 ギュッと抱きしめる。


「可愛いなぁ。可愛いなぁ」


「ふ……にゃ……」


 きっと赤面しているのだろう。


 けれどもシスコンの身ではソレすら愛おしい。


 業が深いとはこのことだ。


 いいんですけどね~。

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