神々の日々 番外編 2023



「ねえ雪柊。白川が、東ノ国神話・旒のコンセプトブックとかいうのを出したらしいよ。」

「え、それは何かしら。」

「まあ、どうでもいいんじゃないかな。」

「あら、そうなの…?」


「今日のビーチはきれいだね。」

「そうね。」

「ふわふわのかき氷でも頼もうか。」

「私は冷たい飲み物にしようっと。」


青い空には大きな入道雲が高くまで伸びている。

白い砂浜には、陽をよく遮るビーチパラソルの下、大理石のテーブルが並んで、風になびく薄衣と、七色を散りばめたスポーツウエアの二人がぽつりと見える。


時折、熱気を払う風が吹いて、

二人の時間は続いた。














飲み物を載せたトレイが運ばれてきた。


トレイの下には迦琉の従者の鼠だ。


「はい。ご苦労様。」

迦琉が労うと、従者の鼠は嬉しそうにしている。

「ところで君たち、体はちゃんと洗っているよね?」

迦琉が問うと、鼠たちは立ち上がり、両手を顎の下に垂らしたまま、一斉に頷いている。


テーブルにはグラスが並んだ。


するともう一匹が後から走ってくる。

何かに慌てているようだ。

「え。何?」

迦琉が不思議そうにすると、鼠はテーブルの上に登り、置いてあった本の周りを走り始めた。

「これを紹介しろと。」

鼠がしきりに頷いている。

「仕方ない。」


迦琉は訝しげにその本を手に取り、指先でページをめくった。

「何これ、登場人物にミハルがいないよ。」

「え、本当?」

「ほら。これはきっと白川の嫌がらせ。」

迦琉がそう言ってページを見せる。

「本当ね。ミハルが西ノ国だからかな。」

「真相を聞いて…お灸を…。」

「迦琉。」

「私のことはまあまあかわいく描いたから、それは許してやるとしても…。」

「迦琉、落ち着いて。」


雪柊の言葉を待たず、迦琉は飛び出した。


 ・   ・   ・


数時間後、迦琉が戻ってきた。


「どうだった?」

「白川は素直だったよ。」

「あら、よかったわね。」

「うん。この火の剣を首筋にひたひたと当ててさ…。」

「迦琉、そういうのはやめなさい。」


雪柊が台本を取り出す。


「というわけで、東ノ国神話・旒 コンセプトブック。

 Amazonにて好評発売中です。

 これまでのダイジェストで、いいお話が盛りだくさん。

 応援、宜しくお願いします。」


雪柊がにっこりと笑って手を振る。

迦琉も遅れてそれに続いた。


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