第350話 安心するが良い!

「ありがとうございます」


「ん」


 本来ならお前らのお願いなんて無視して、この場で皆殺しにするなり捕虜にするなりしても良かったんだけど。

 ふふんっ! 寛大な私に感謝するが良いっ!!


 まぁ、ガスター達の命を助けて欲しいって言うアーク達のお願いは聞き入れてやったから殺しはしない。

 な。


「けど、それ相応の報いは受けてもらう」


 ふふふ……救世の六英雄としての矜持を、自身の力に対する自信を。

 完膚なきまでにへし折って、痛めつけて、愚かな人間共の希望を叩き潰す!!


「これは、決定事項」


 これだけは例え誰のお願いでも、どんな対価を差し出されても。

 絶対に譲れないし、譲らない。


「無論、承知しています」


「私が貴女……魔王陛下の立場だったら、あの最低な人達を許さないですし」


「わ、私も許せないです!」


「そうです、そうです!」


「3人とも落ち着いて」


「何よ! マイク、貴方はあの最低な師匠達の味方をするわけっ!?」


「い、いや、そんな事は言ってないだろ?」


 ふむふむ、なんか言い合いが始まったけど。

 ターニャとマナとアナの女性陣3人を始め、星屑の剣は私の考えに肯定的みたいだな。


「まぁまぁ、そのくらいに。

 魔王陛下の前なんだからさ」


「っ! ご、ごめんなさい」


「「すみません!」」


「さ、騒いでしまって申し訳ありません」


 若干恥ずかしそうに謝るターニャは良いとして、なんでマナとアナの双子とマイクの3人はなんであんなにビクビクしてるんだろ?


『まぁ、アレだけ悪魔ちゃんの力を見せつけられたらね』


 ふむ、まっ! 細かい事は別に気にしなくても良いや。

 とにかく星屑の剣の考えはわかった。


「リヒトと、リーゼは?」


「俺もアーク達と同じ意見です。

 どんな事情があってもアイツのした事は許されない。

 多少痛めつけられるくらいの罰は受けるべきでしょう」


 リヒトも特に反対は無しね。


「私も彼らと同じ意見です。

 何も知らなかったとは言え……何も知ろうとも、調べようともせず仲間の言葉を盲目的に信じ込んで貴女様を貶めた事は許されません」


「ふむ」


「しかし、それは私にも言える事。

 いえ、私は当時の一件に不自然な点がある事に気付いていながら何もせず、貴女様が無実の罪で処刑される事を静観しました」


 う〜ん、まぁ確かにそれはそうだけど。


「フェリシアを罰するのなら、私にも同様の罰をお与えください」


 いかに剣聖とはいえ、リーゼは所詮はスパーダ大公家の令嬢に過ぎないし。

 クズ勇者共が民衆の支持を得て主導して各国の王侯貴族共の後押しを受けた当時の一件を止められるハズも無い。


 リーゼを始め、スパーダ大公家の面々が私に対して同情する事はあっても、世間一般に発表された事を真に受けて私を貶めた事は無かったからなぁ。

 けどまぁ、リーゼがそう言うのなら仕方ない。


「わかった。

 これから皆んなみんなには、色々と動いてもらう。

 それが、皆んなに対する罰」


「で、ですが……」


「皆んなは私のモノ、異論は認めない」


「っ……! 承知、いたしました」


 むふふっ! 少しでも私が楽をできるように、それはもう馬車馬のように働いてもらわなければっ!!


『悪魔ちゃんって敵には容赦無いけど、身内には優しいよね』


 ふふん! 当然だ。

 我が悪魔王国ナイトメアと魔国軍はブラック企業では無いのだよ!!

 とまぁ、それはさておき! そうと決まれば皆んなには早速やってもらわないとダメな事があるな。


「皆んなには、戦争でガスター達を倒してもらう」


「「「「「……え?」」」」」


「俺達が……?」


「倒す、ですか?」


「ん」


 雷帝アーク率いる5人全員がSランク冒険者のSランクパーティー星屑の剣。

 ヴァリエ騎士王国の守護者にして姫騎士フェリシアと並び称せられる剣聖リーゼ・スパーダ。

 旧魔王の四天王を単独で撃破した英雄にしてS級クラン白の騎士団を率いるリヒト・アルダール。


 むふふっ! 頼もしい味方だと思ってた面々が私の陣営にいて、敵として姿を見せたら愚かな人間共は一体どんな反応をするかな?

 どれ程の絶望を覚えるのかなっ!?


 それに! ガスターとマリアナは自らの兄弟子と弟子達に敗北を喫し、フェリシアは幼馴染の親友と剣を交えた末に敗北する事になる。

 あはっ! ガスター達も、そしてそれを見る事になる人間共の受ける衝撃はどれ程のものか……ふふっ、楽しみだわ!!


「えっと……流石にまだ俺達では師匠達には勝てないと思うのですが……」


「悔しいけど、本来の力を取り戻した師匠は強いわ」


「私もフェリシアには負けているのですが……」


 まぁ、皆んなの気持ちはよくわかる。

 だがしかし! 諸君にはこの私が付いているのだ!!

 ふふん! 大船に乗ったつもりで、安心するが良い。


「ん、だから皆んなには、この1週間で強くなってもらう」


 さぁ! ガルドへのお仕置きも兼ねて、楽しい修行を始めよう!!

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