第294話 進化の眠り

「ふぅ」


 あぁ〜、疲れた!


『疲れたって、今の悪魔ちゃんならこの2人に名付けして眷属化をした程度じゃあ大した負担はないでしょ?』


 ふっふ〜ん! まぁね。

 リリィーの時もそうだったけど、セラフィルとアリシアがそこらの一般人よりも強いと言っても所詮は人間の子供。


 冒険者に当て嵌めればCランクからBランクくらいの実力だし。

 そんな2人に名付けをして眷属にしたところで、魔神たる私には全くもって問題ないのだ!!


「レフィーお嬢様、どうぞ」 


「ん、ありがと」


 2人に同時に名付けと眷属化なんて行なったら、並のヤツなら魔素エネルギーを搾り取られて普通は死ぬ。

 もうミイラみたいになって干からびる。


「ふふん!」


 つまり! こうして優雅に足を組んで、頬杖を着きながらシルヴィアが用意してくれたお茶を飲める私は凄いのだよっ!!

 さぁ! もっともっと、今まで以上に私の事を褒め称えて崇めるがいい!!


『はいはい、凄いねー。

 じゃあ、どうして疲れてるの? 特に疲れるような事はしてないよね?』


 はぁっ!? お前、今なんて言った?

 特に疲れるような事はしてない……とか、聞こえたんですけど。


 ちゃんと考えてみろ。

 今日は朝から魔国に不法入国した侵入者であるレオン達の対応に始まって、セラフィル達との対話と眷属化。

 こんなにも忙しく色んな事をやったんだぞ!


 どうよ? こんなにも今日はいつも以上に一杯働いて、頑張っているのだよ。

 もっと労って欲しいもんだわ。


「なぁ、お嬢……」


「ん? 何?」


「コレはどうなってんだ?」


「コレ?」


 あぁ、コレね。

 まぁ、魔王であるレオンでも流石に初見じゃあビックリしちゃうのも無理ないか。


「セラフィルとアリシアが進化の眠りについてるだけ。

 気にしなくていい」


「はは……だけって、軽いですね」


「ショウ、一々気にしてたら身体がもたねぇぞ。

 これがお嬢だ」


 むっ、何か言外に失礼な事を言われた気がするんだけど……まぁ、今日は色々と頑張って疲れてるし、聞かなかったことにしてやろう。

 寛大な私に感謝して咽び泣くいいわ!


「しかし、コレは……」


「凄いな」


 まぁ、私達を省けばこの世界でも最強クラスの2人が思わずそう呟いちゃう気持ちもわかる。


「ふむ」


 セラフィルは光の、アリシアは青白い雷の、それぞれ球体に包まれてるし。

 しっかし、光に雷と属性は違うけど演出自体はリリィーの時と寸分違わず一緒だな。


 う〜ん、ミーシャは見れてないけど、聞いた話によると周囲を凍てつかせながらその中心で丸くなって寝てたらしい。

 グランの場合は蘇生自体が進化の眠りの代わりを果たしたからわからないけど。

 ミリアは普通に目を瞑って寝てるようになっただけだし。

 私の場合は進化の繭に包まれる事になる。


 つまり、多分だけど進化の眠りにつく方法は種族によって違う。

 この最初にそれぞれの属性の柱が上がって、球体に包まれるのが、人間が進化するときの演出かぁ。

 何か人間だけ派手なんだけど……恐らく、あのクソ女神の仕業だな。


「ふん」


 自分が守護する人間だけを特別扱いか。

 胸糞悪いクソ女神め……っとまぁ、今はアイツの事は置いておいて。


 荒れていた膨大な魔素が安定して収束して来てるし。

 リリィーの時からして、そろそろ2人の進化の眠りは終わるハズ。


「ふふっ」


 果たして2人はどんな種族に進化してるのかってのもメッチャ楽しみだけど……


「溺愛する自分達の子供が、魔に身を堕とし。

 そして、自分達と対峙する……あはっ!」


 あぁ、想像しただけで笑いが止まらない!

 セラフィルとアリシアが。

 私の眷属に。

 私の仲間に。

 私の家族になったっと知った時。


「どんな顔をするかな?」


 あぁ〜、本当に楽しみだわっ!

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