第254話 闘聖位戦 その3

「よっ、と」


 歓声を浴びながら退場するアークと入れ違う形で、貴賓室の窓からふわりと優雅に飛び降りて闘技場に舞い降りる。

 私の登場と共に歓声と熱気に包まれていた観客の人間共がシーンっと静まり返る。


 ふはっはっはっ!

 どうやら、この私の美貌と優雅過ぎてめちゃくちゃカッコいい登場を目の当たりにして惚けて呆けちゃってるみたいだな!!


 まぁ、私は美形揃いの悪魔族デーモン達の頂点に君臨する魔神なわけだし?

 原初たる私のまさしく魔性の美貌にただの人間が見惚れてるのは当然の結果っ!


「ん」


 うんうん。

 まぁ、人間共に凝視されるのはちょっと鬱陶しいけど…… シルヴィアの腕の中から降りると同時に、縮小化の魔法が解けて元の身長に戻ってるし。

 ふふん! この私に魅入られちゃうのも仕方ない。


『けどさ、こんなに大勢に見られて大丈夫なの?』


 今更何を言うかと思えば……何度も言ってるけど、私はもう他人恐怖症は克服済!!

 まぁ、今でも人前に出るのが好きってわけじゃあ無いけど、これもフェリシアを貶めるための前準備だと思えば楽しめるってもんよ!


 それで?

 私のストレス発散に付き合う事が決定した哀れな対戦相手くんは誰かな??

 とっとと、そいつをぶちのめしてシルヴィアの胸の中で寛ぎたいんだけ……


「おいおい、マジかよ。

 何で俺の初戦の相手はこんな幼女なんだよ……やりずれぇな……」


 よ、よよよ幼女、だとっ!?

 ふざけるなよテメェっ! この私の麗しき美貌を前に、言う事に欠いて幼女!?


「開催式で喋ってたから、お嬢ちゃんが純白の翼のメンバーでAランク冒険者だって事は知ってる。

 が、これは1対1タイマンで助けてくれるパーティーメンバーは誰もいない。

 あ〜、つまり何だ、ケガをする前に棄権しな」


「ふむ」


 なんかコイツの言葉を受けて観客達もちょっと騒ついてるし。

 つまりだ、コイツを含めて世間一般では、私はパーティーメンバーの力でAランクまで成り上がった無力な寄生だと思われてるわけね。


「お前は……お前達は勘違いしてる」


「勘違い?」


 まぁ、私の事を幼女呼ばわりした事は本来万死に値するけど。

 見たところ私の事を案じての言葉だったみたいだし……観客共が煩いな。


「煩い」


 ちょっとだけ魔王覇気で威圧してっと……


「ッ!?」


 よし、これで静かになった。

 さてと、話を戻すけど……こほん、その心意気に免じて特別に! 宇宙のように広く寛大な心で許してやろう。


「私は、お前よりも強い」


 半殺しでなっ!!


「ッ……ぅ、ぁっ……」


 私の威圧を。

 殺気を受けて、名前も知らない哀れな対戦相手が目を見開き、全身をガクブル振るわせて、冷や汗を流して言葉にならない声を漏らす。


「ふふっ」


 対戦相手の膝が砕けてストンと両膝が地面に着く。

 私から視線を外す事すらできずに、呼吸すら忘れて膝立ちでこっちを凝視する対戦相手に向かってゆっくりと、一歩ずつ歩いて近づいて……


「わかった?」


 まっ、この状況で答えられるとは思えないけど。

 あっ、そう言えばまだ試合開始の合図が無かったけど……まぁ、良いや。

 細かい事は気にしたら負けだし!


「楽にしてあげる……ふふ、落ちろ」


 うっかり殺さないように気を付けながら、一瞬だけ魔王覇気の圧を上げて!


「ッ……」


 はい、お終い。

 静まり返ってる闘技場に対戦相手が倒れ伏す音だけが鳴り響いたけど、勝負有りのアナウンスはまだかな?

 早くシルヴィア達の所に戻りたいんだけど??

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