第12章 悪魔姫の復讐・教皇編

第206話 主人なのに怒られた……

 整った美貌を絶望に染め上げて、絶叫するマリアナを連れて最初に居た部屋に転移!

 即座に遮音結界を展開してっと……これでよし!


 ふっふっふ〜ん! 流石は私、惚れ惚れする程に見事なこの手際の良さ!!

 これで外に声が漏れる事もないし、誰かに違反に気づかれる事もない。


「さてと……」


 むふふ、この場所には私とマリアナ以外は誰もいない。

 すなわち!! この場所ならば、いつもは保護者様シルヴィア達に禁止されているアレを……


「ぐふふ!」


 絶望に顔を歪めるマリアナを眺めながら、好きなだけ美酒を呷る事ができるのだ!!


「お酒、お酒〜!」


 おっ、何やら高級そうなワインを発見!

 まぁ、私としては地球時代の記憶をもとに魔国で開発した低アルコールでジュースみたいな酎ハイが一番好きなんだけど。

 当然、ワインも嫌いじゃないっ!!


「よっと」


 ふむ、さっきも思ったけど流石は天下の大賢者様。

 この高級そうなワインもだけど、なかなかにふかふかなソファーを使ってらっしゃる。


 けど……ふっ、勝ったな。

 ふふん! 私がいつも使ってるお気に入りのソファーとか、クッションの方がふわっふわで座り心地も抜群だと断言できる!!


『機嫌がいいね』


 あったりまえじゃん!

 何せガスターに続いて2人目、私の復讐対象の中でも筆頭の1人であるマリアナにも復讐ができたんだからな。


『まぁ、悪魔ちゃんが嬉しそうで何よりだけど……祝杯をあげるのはちょっと厳しいと思うんだけどなぁ〜』


 あーあー、聞こえなーい。

 どうせ邪神もシルヴィアとか、グランと一緒で私にはお酒を飲むなって言ってるんだろうけど無視だ、無視っ!!

 マリアナを持ち上げて、磔にした時みたいに魔素を操って……


「ん〜」


 キュポン!


 よし、コルクが抜けた!

 あとはワイングラスにワインを注いで、ついでにおつまみも召喚してっ……ぐふふ! 完璧っ!!


「むふっ、むふふ、ふはっはっは!」


 さぁ、準備は整った!

 救世の六英雄とか、大賢者とか呼び称えられ。

 調子に乗って、身の程知らずにも自分達が世界最強だと思い込んで勘違いしたバカな愚か者よ。


 好きなだけ自分の無力さに!

 魔法が使えないとと言う現実に絶望し、自らの大きな過ちを後悔しながら子供みたいに醜く泣き叫ぶが良い!


「ライト! っ!!」


 みっともなく子供みたいに泣き叫びながら最下級の魔法を発動しようとし続けていたマリアナが目を見開いて息を呑む。

 マリアナの持つ杖の先に浮かぶは、暗かった室内を明るく照らす頭サイズの光球。


「や、やった! やったわ!!

 魔法が、魔法が使えるっ!!

 うふふ、そうよ、そもそも永遠に魔法が使えなくするバフなんて不可能。

 全ての魔法を操るとすら謳われる大賢者たるこの私が魔法を使えなくなるなんて事があり得るハズが……」


「はい、おしまい」


「っ!?」


 一瞬にして光球が、火球が、水球が……マリアナが発動していた魔法の全てが掻き消える。


「私の強欲者グリードで奪ったモノの所有権は私にあって、元の持ち主が使えるようにするも、しないも私の思うがまま!

 ふふふ、今のは一時的に魔法の使用を許可しただけ」


「そ、そんな……」


 あぁ、この絶望に染まった表情!

 それに何より表情と同じく絶望に恐怖に染まり、負の感情に押し潰されたマリアナの魂の色とこの波動!!


「ふふっ!」


 マリアナが膝から綺麗に崩れ落ちたけど……まぁ、それは置いておいて!


「この素晴らしき復讐の日を祝して! 乾ぱ……」


「こほん、レフィーお嬢様?」


「……」


 う、うそだ。

 マリアナじゃ無いけど、この場所には私とマリアナの2人しかいないし、そんな事があるハズがない。

 うん、今のはきっと幻聴だな!


「お嬢様、そんなに耳を押さえても無駄ですからね?」


 聞こえない! 聞こえない! 幻聴なんて聞こえなーいもんね!

 私は無様なマリアナを眺めながら勝利の美酒を! 美味しいお酒を飲むのだ!!


「わっ!」


 むぅ、後ろから抱き上げられてしまった。

 はいそうですか、幻聴じゃ無いですか。

 当然わかってた、現実逃避してただけで当然わかってたましたとも……


「ダメですよ。

 この間、ミーシャとミリア、リリィーの3人を買収して私とグランに隠れてお酒を飲み、お屋敷を半壊させた事をお忘れですか?」


「うっ……」


 た、確かにこの前は怒られるからシルヴィアとグランに隠れてお酒を飲んで気が付いたらお屋敷が半壊してたけども!


『あぁ、アレは酷かったね。

 酔っ払った悪魔ちゃんが、もう止めた方が良いって宥めるミーシャ達の静止を振り切って駄々をこねた結果……』


 う、煩いわ!

 と言うかお前! シルヴィアとグランがこっちに来る事を知ってて黙ってたな!?


『いや、そもそも悪魔ちゃんの復讐が完遂すれば2人だけじゃなくてキミの眷属全員がそこに来る予定だったじゃん』


 ……ま、まずい! テンションが上がってすっかり忘れてた!!


『だから言ったでしょ?

 祝杯をあげるのは厳しいと思うって』


 くっ、邪神のくせにぃ〜! けど正論だから言い返せない……っ!


「あ、貴方達は何者なの?

 その小娘とどんな関係が……」


「黙りなさい、醜い人間ゴミ風情が」


「お嬢様に向かって小娘とは……まだ自身の置かれている現状が正しく理解できていないようですね」


「ひっ……!」


 あ〜あ、シルヴィアとグランに威圧されて失禁しするとか。

 まぁ、仕方ないとはいえ……ふふ、これで大賢者の威厳も完全に地に落ちたな!

 そして! 2人がマリアナに気を取られてる隙にワインを……


「「お嬢様!!」」


「うぅ……ごめんなさい」


 怒られた。

 むぅ、今更な気がするけど私は2人の主人なのに怒られた……

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