第194話 ぬくぬくふかふかで退屈だから仕方ない
「お嬢様」
「んぅ…… 」
「レフィーお嬢様!」
「ふぁ〜、シルヴィア?」
どうしたんだろ?
シルヴィアだけじゃ無くて、皆んなして何か呆れたような顔をしたり、苦笑いを浮かべて……
『まぁ、そりゃあねぇ。
流石の私でもちょっと呆れちゃうよ』
む、失礼なヤツめ!
本来ならお仕置きと言う名の天誅を下してやるところだけど……感謝するが良い。
今は寝起きでちょっと面倒だから許してや……あっ。
「全く……レフィーお嬢様、流石に彼らの仕事中に寝てしまわれるのは良くないと思いますよ!」
ま、まずい! コレは非常にまずいっ!!
こ、この私とした事が……まさかルーナとセイヴァエルがお仕事を。
フラン帝国を滅ぼしてる途中で寝落ちしちゃうなんて!!
一応、今回の仕事は私が2人に任せたみたいなもんだし。
言ってしまえばルーナとセイヴァエルの2人は眷属であるグランとミリアの件もあって実質的な配下みたいなものなのに……
配下にお仕事を任せて、配下がお仕事を頑張ってる途中で寝落ちとか上司にあるまじき失態っ!!
うぅ……どうしよう? 私のクールでカッコよくて可憐な、完璧で威厳に溢れる素晴らしい上司としてのイメージがぁっ!!
『いやぁ、最初からそんなイメージはどこにも……』
煩い! 今はお前に構ってる暇ないのっ!
くっ、どうにかこの窮地を乗り切らないと……配下に仕事を押し付けて寝てる最低上司とか思われてしまう!!
「ん! ね、寝てないよ?」
「っ!!」
「ご主人様、今のは……」
「今猛烈にギュッてしたくなった!」
「ミリア様、わかりますっ!!」
んん? な、何か知らんけど! とりあえず誤魔化せたみたいだな!!
ふぅ、焦ったぁー。
でも言い訳するわけじゃないけど、私が寝落ちしちゃうのも仕方ないと思う。
何せフラン帝国、帝都フラーニューを守護する前回の戦いで容易く敗走した先発組に合流するはずだった3カ国連合の軍勢と二柱の魔王。
常闇の女王ルーナと暗黒竜王セイヴァエルとの戦いは2人の圧勝!
序盤から一方的な展開だったし。
まぁ、そもそも魔王に覚醒する強さの基準が万単位の敵を壊滅させ、勇者共と単独でも対等に渡り合えるってのだから当然なんだけども。
いくら冒険者ギルドから協力を拒否られて当初の予定である20万には届いて無くても10万程度はいたし。
10万 VS 2人なんだから、もうちょっと連合軍には頑張ってほしかったってのが正直な感想だな。
『つまり?』
こうもワンサイドゲームだと観ていてもそんなに面白くないし、手に汗握る展開とかワクワク感も何も無くてつまらなくて退屈!
私がついつい上空に浮かべてたふかふかなソファーで、夜風で身体が冷えたらダメだからって羽織ってたぬくぬくな毛布に包まって寝落ちしちゃったのも仕方のない事!!
つまり! コレは不可抗力であって、私は何も悪くないっ!!
ふっ、我ながら完璧すぎる理論武装だぜ!
『うわぁ、完全な責任転嫁だ』
邪神は何か言ってるけど。
そもそももう夜中だし、いつもなら熟睡してる時間だし。
うんうん! ぬくぬくふわふわな環境下で退屈だったら寝ちゃうのも仕方ないな!!
よし! 私は何も一切、これっぽっちも悪くない事が証明された事ですし。
肝心の戦場はどうなってるかな〜?
「ふむふむ」
帝都の様子は……至る所に血が飛び散り、赤い水溜りができていて。
道端に倒れ伏す死体の山! 原型をとどめずに肉片になってるのも一杯あるしこれは結構凄惨な事になってるなぁ。
ルーナとセイヴァエルの2人は……王宮の中か。
ふ〜ん、3バカの前にいるみたいだし、そろそろ大詰めってわけね。
いやぁ、起こしてくれて助かった。
起こしてくれ無かったから確実に寝過ごしてたなこれ。
「こほん」
まぁ何はともあれ! 気を取り直して……
「じゃあ、行こう」
ルーナとセイヴァエル、2人のできる上司として!
そして
ふふふ! 滅びを告げに行くとしよう。
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