第168話 もう終わり?

「魔神……」


「貴方が……貴女が悪魔王国の王……

 ドラゴンじゃ無くて悪魔だって言うの?」


 ふっふっふ! 驚いたようだな!!

 アークとターニャ以外は驚きのあまり声も出ないみたいだし。

 まっ! 私のこの完璧な登場を目の当たりにすれば当然だろうけど!!


「そう、私はドラゴンじゃ無くて悪魔」


「じゃ、じゃああのドラゴンの姿は? さっきまでの貴女は何!?」


 ふむ、まぁ当然気になるわな。

 ふふふ〜! 別にわざわざ教えてあげる必要も無いけど、そこまで知りたいのなら仕方ない!!


 むふふっ!

 これは私の魔王覇気を耐え抜いたご褒美に教えてやろう!

 あぁ〜驚愕に目を見開き、唖然と畏怖の念を浮かべるターニャ達の顔が目に浮かぶ!!


「さっきも言った。

 私は悪魔の王にして、魔を統べる神。

 ドラゴンになれるのは、悪魔だけどドラゴンの力も持ってるだけ」


「はっ! 騙されるなよ!!

 こんなガキにそんな力があるわけがねぇ!」


 こ、コノヤロウ……アークの精神強化スキルの影響で強気になってるのかは知らないけど、私の事を鼻で笑いやがったな!!


 しかも、誰がガキじゃっ!!

 こんな超絶美少女に向かってこんなガキっ!? 無礼にも程があるわ!

 もう怒った、これは完全にギルティーだわ。


「ねぇ」


「あ?」


「誰が喋って良いって言った?」


「ッ!!」


 ちょっと魔素エネルギー量を普通に会話できる程度まで抑えてやれば調子に乗りやがって。

 ふふふ、この程度の殺気を受けてガクブル震えちゃう程度のザコのくせに。


「平伏せ」


 とりあえず、付与者の権能で命令してっと。


「なっ!?」


 顔面蒼白で震えてた傭兵が驚愕に声を漏らす。

 まぁ、そりゃあ自分の意思とは関係なく身体が勝手に動いて地面に這いつくばる事になったらビックリするわな。


「私はターニャと話してた。

 誰が口を挟む事を許可した? 誰がお前如きが勝手に話して良いって許可した?」


「かはっ! ……っ!!」


 私の魔王覇気を受けて、まともに息もできずに苦しそうに顔を歪めて、声すらも出せずに酸欠になったみたいに口をパクパクさせてるけど。

 この程度の出力でコレとは情けない。


 でもまぁ、仕方ないか。

 さっきはココロをへし折り、絶望を与えるために最小限の威力で放ったけど。

 本来、私の魔王覇気を受ければ一般人は勿論、それなりの実力者じゃなかったらそれだけで簡単に死に至るし。


「それに……誰がガキだって?」


 ぶっちゃけ、コイツら程度なら手加減せずに普通に魔王覇気を放てば普通に殺せちゃうけど。

 そう簡単に楽にはさせない! ふふふ、私を怒らせた恐怖を思い知るがいい!!


「っ! ま、待てっ!!」


「図に乗るなよ人間」


 アークが何か叫んでるけど待たない! だってお前の言う事を聞く必要も、聞いてあげる義理も無いし!!

 はい! 一瞬だけ出力アップ!!


「ぁ……」


 ビクンって痙攣して白目を剥いて動かなくなったけど……まぁ別に殺してはいない。

 ふふふ、尤も死ぬよりも恐ろしい恐怖を魂に刻み込んでやったけど。


「っ!!」


 何やら怒りの形相で切り掛かってきたアークの剣を微動だなする事なく結界で受け止めて弾き返して吹き飛ばす。


「燃え尽きなさい! 火炎領域陣フレアサークル!!」


 それなりに高度な魔法だけど……残念、私には通用しない。

 まっ、このタイミングとアークとの連携は良かったと思うよ?


「バレット」


「っ! マイク!!」


「任せろ! 対魔法巨盾マジックブレイク!! ぐっ、おぉぉぉらぁっ!!」


 おぉ、何とか私の魔弾バレットをターニャを庇って受け切った!

 そんでもって、このタイミングで視覚外から魔弓での婉曲射撃。


 流石はSランクに最も近いと言われるAランク冒険者。

 冒険者ギルド期待の若手なだけはある、けど……この程度なら寝てても避けれるわ!


身体超強化フィジカルバースト! アナ!!」


「任せてっ、風牙ノ刃ウインドブレードっ!」


 消えたと錯覚するような速度で切迫してきたアナによる刀身に螺旋回転する風を纏わせた鋭い一閃。

 鋼鉄をも軽く斬り裂くだろう一撃だけど、それでもまだ私には届かない。


「っ!!」


 結界に自身の細剣を受け止められた事にアナが目を見開くき……


「なんてね!」


 次の瞬間には笑みを浮かべる。


暴風領域陣ミストラルサークル!!」


 対象を中に封じ込め、外に出ようとする者を風の刃が切り刻む暴風の牢獄。

 そして……


「くらえ! 雷鳴剣っ!!」


 耳をつんざく雷鳴が鳴り響き、風の牢獄を霧散させる。

 雷を纏い、極限まで身体能力を上昇させたそれはまさしく雷速。

 雷帝と呼ばれる冒険者パーティー星屑の剣のリーダー、アークが放つ回避不可能な神速の一撃……


「それで?」


「なっ!」


 アークの目が……星屑の剣のメンバーを含め、人間達の顔が驚愕に染まる。

 ふっ、決まったな!!


 私もファルニクスにやられたやつ。

 全力の一撃を、至極当然のように指で挟んで受け止めてやったわ!!


 ふっふっふ〜! うんうん、確かに息のピッタリと合った連携は良かったし。

 個々の実力もSランクに足り得るだけのモノはあったよ? まぁ、尤も……


「もう終わり?」


 私の敵じゃあ無いけどっ!!

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