第141話 やっぱり土下座!

 悪魔になってはや5年半!

 神話級の存在が闊歩する魔境に転生したり、大陸を支配していた4人の魔王と戦争したり。

 四魔王の内、2人を眷属にしたり!


 果てには超越者……神になって、大陸を統一して国も創った!!

 長かったような、短かったような。

 まぁ、何はともあれ!!


「ふふふ、やっと復讐ここまで来れた」


 いや、マジで何か感慨深い!

 1つのターニングポイントに辿り着いたって達成感が半端ないわ!


 復讐! 復讐!

 冒険王とか呼ばれて調子に乗ってるガスターに復讐!!

 屈辱、恐怖、絶望!果たしてガスターはどんな顔をするのか……


「ふふ、楽しみだなぁ」


「っ!」


 横薙ぎに全力で振り抜かれた長剣。

 圧倒的とも言える程の魔力を纏ったガスターの一閃によって発生した衝撃波によって地面が砕けて、視界を覆う土煙が舞い上がる。


 ちょっと楽しみで。

 やぁっと復讐できる事がちょっと嬉しくてついつい笑っちゃっただけなのに……

 何故か息を呑んで、次の瞬間には斬りかかって来るなんて失礼なヤツめ!!


『いやまぁ、悪魔ちゃん今もの凄く邪悪な笑みを浮かべてたし。

 ガスターがSランク冒険者としての、英雄と呼ばれる強者としての勘でつい反射的に動いちゃったのも仕方ないと思うよ?』


 邪悪な笑み? いやいや、無い無い。

 それは流石に無いわー。

 だって不本意ながら、私は魔国で姫様って呼ばれるキュートで可愛い超絶美少女だよ?


 それに加えて、凛々しく誇り高い淑女にして原初の悪魔!

 キュートな可愛さと、威厳あるカッコ良さを両立した存在なのだ!!


 まぁ、確かに邪悪な笑みもカッコ良さそうだけど……とにかく!

 そんな基本は無表情の私のレアな笑顔が邪悪なんてあり得ない!!


ったか?」


 おぉ〜! まさか生でこのフラグを聞けるとは……


『悪魔ちゃん、もうちょっと真剣にやろうよ』


 え? 何で?

 だってこれは私の復讐……楽しい楽しい、5年半も待った復讐対象を使った遊びなんだよ?


 確かにガスターは並の者と比べれば文字通り格が、次元が違う強者。

 冒険王とか、救世の六英雄とか呼ばれてる人類最強の一角だけど……


 いくら強いと言っても、それは所詮は人間の中ではの話。

 さっきの攻撃も、確かに世界でもトップクラスの実力者に相応しい一撃だったんだろうけど。

 その世界と言うのはこの大陸、安息の大地の中での話。


 ぶっちゃけ、ガスターの実力は終焉の大地では……我が魔国では中の下程度。

 真剣にやらずに遊んでも全く問題無いのだ!!

 現にこうして簡単に避けれるしな。


「死体も残さずに消し飛ばしちまったか……

 チッ、まさか魔物共の国の大使館で魔物じゃ無くて人間の子供を殺る事になるとはな。

 下劣な悪魔共め……人間の子供を使うなんて胸糞悪りぃ真似しやがって」


 いやいやいや、いきなり殺そうとしたのはお前じゃん。

 まぁ別に殺されてないし、私は人間でも無いけど……まぁいいや。

 とりあえず私をあの程度の攻撃で仕留めたと思ったらおめでたいコイツの目を覚ましてやる!


 ふっふっふ! さぁ、愚かな人間よ! 驚愕に目を見開き、私の圧倒的な力と美貌を前に情け無く震えるがいい!!

 私を殺したと勘違いしてるガスターの肩を……あれ? おかしいな、手が届かない……


『そりゃあ悪魔ちゃんの身体では、2メートル近くある長身のガスターの肩には届かないよ。

 しかし、完全に気配を消した状態でガスターの真後ろで必死に背伸びして手を伸ばすとか……ぷっ、ふふ、あはは』


 うぅ……


『いや、ごめんごめん。

 今のは流石の私でも可愛くてキュンキュンしちゃったよ。

 奥で悪魔ちゃんを見てるシルヴィア達も悶絶していたしね』


 だ、だまらっしゃい!

 そもそもお前、男らのくせにキュンキュンとかキモいわっ!! 邪神のバカ!


 ふぅ〜、落ち着け、落ち着くんだ私!

 確かにちょっとしたミスはあったけど、それは全てアホみたいに身長が高いコイツガスターが悪い。


 つまり! 私がこんなにも恥ずかしい目に遭っているのは全てコイツのせいっ!!

 冒険王ガスター! 許すまじっ!


 未だに真後ろにいる私に気付かずに、既に私を殺したと勘違いしてるガスターにバレないように翼を広げて同じ視線の高さまで浮かんでっと。

 そぉ〜っと手を伸ばして、肩をちょんちょん!


「っ!?」


 驚愕に目を見開いて咄嗟に振り返ったガスターのおでこに……


「喰らえ」


 デコピンっ!!


「がっ!?」


 モロにデコピンを受けて後方に吹き飛んだガスターが数回地面を跳ねて転がる。

 ふっ! どうだ、この私のデコピンの威力はっ!!


「ぐっ……!」


 おぉ、流石は人間の中では最強の一角に数えられるだけはある。

 吹き飛ばされた勢いを利用して体勢を整えて止まるとは。


「テメェ、今何をしやがった?」


 何をって……ただのデコピンだけど?


「と言うか、確かにお前は今この手で殺したハズだぞ?

 なんでテメェがまだ生きてやがる?」


「冒険王ガスター」


 片膝をつきながらも生意気にも剣をこっちに向けて睨んでくるガスターの言葉は無視して……


「頭が高い」


「ぁがっ!?」


 ガスターの頭を踏みつけて地面に叩き付ける!

 うんうん、何か違う肉体だったとはいえ、過去に恥辱されたやつから睨まれるのって鬱陶しかったし。

 何より! やっぱり土下座してもらわないとね!!


 今の服装はいつもと同じで物質創造で作った動きやすくて魔王様っぽくてカッコいいワンピースだから、中を覗かれないようにしっかりとガスターの頭を踏みつけてっと!


「がァぁっ!!」


 う〜ん、ガスターが何か言ってるけど……まぁいいや。


『いや、良くないでしょう?

 そのままだと、ガスターの頭を踏み潰しちゃうよ?

 今も地面に亀裂が走ってミシミシいってるし』


 ふむ……こんな簡単に殺して、死なせてあげるわけにはいかないし。

 何よりコイツの血と脳味噌で足が汚れるのは非常に嫌だ。

 仕方ないか、ワンピースの中を覗かれない程度にちょっと踏み付けるのを緩めて……これでよし!


 さてさて、何かいっぱい勘違いしてる哀れで愚かでゴミクズなガスター君!

 本当はもっと甚振って遊んでやりたいけど……ここは超絶寛大な私がコイツの勘違いを正してあげるとしよう!

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