第82話 VS破壊神?

「あの……ご主人様」


「やだ」


「で、ですが、きっと皆さん心配していますよ?」


 何と言われようがイヤなものはイヤだ。

 絶対にこの絶対領域サンクチュリア、ベッドの中から出てなるものか!!


『そんな拗ねなくても。

 ふふ、悪魔ちゃんはまだまだ子供だね』


 拗ねてないわっ!

 私は怒ってるの! この私に向かって拗ねてるなんて失礼な!!


 あんなに人目がある中でシルヴィアに抱っこされて移動するなんて……誰が何を言おうが人目に晒されて深く、それはもう深〜く傷付いた。


 傷心の私には子ネコ姿のミーシャを抱き締めて癒されるモフモフタイムが必要なのだ!!

 せめて別室で休むって名目で移動したんだから、ずっとベッドに篭ってやる!


『それが本音か。

 本当に悪魔は欲望に忠実だよね』


 ふん、何とでも言うが良い。

 とにかく! 今はこのふかふかなベッドでモフモフなミーシャに癒されるんだ……ムフフ!


「失礼いたします。

 レフィーお嬢様、お加減は如何ですか?」


 来たな! 我が宿敵にしてこの絶対領域サンクチュアリを幾度となく破壊した破壊神シルヴィア!!

 しかし、今回は起きたく無くてベッドで怠惰にゴロゴロしているいつもとは違う。

 今の私には体調が優れないから別室で休むと言う歴とした名目があるっ!


 しかもだ、これはシルヴィアに抱っこされて執事さんやメイドさんの前を移動すると言う苦行の末に多くの人に周知されているのだ!

 ふっふっふ、いかにシルヴィアと言えど今回ばかりはこの癒しの時間を邪魔させないっ!!


「……けほっ、けほっ。

 く、苦しいー」


『……え、嘘でしょう?

 コレはいくら何でも……』


「ふふふ、レフィーお嬢様は昔から演技が苦手なのです」


『いや、そうだとしてもコレは酷過ぎるでしょう!?』


「それなのにご本人は演技が上手いと思っていらっしゃる所がお可愛い……うへへ、キュンキュンします!」


 2人して何をコソコソと……

 う〜ん、今の仮病は我ながら完璧だったし、まぁ問題ないかな?

 ふっ、この調子で今日こそは破壊神シルヴィアを退けてモフモフタイムを堪能してやる!


「こほっ、こほっ。

 しんどいから、少し寝る……」


「ふふふ、承知いたしました。

 アーグベル達が御馳走とデザートをたくさん用意して歓迎会を予定していたようなのですが」


 えっ?

 ちょ、ちょっと待って、そんなの聞いてないんだけど!


「仕方ありませんね。

 レフィーお嬢様のご欠席は私から伝えておきますので、今はゆっくりとお休みください」


「……行く」


「ですが、レフィーお嬢様はご体調が」


 くっ、さっきの完璧な仮病がここに来て……!!


「も、問題ない。

 もう大丈夫……」


 ここは有無を言わせないだけの元気ですよアピールが必須!

 そうとなれば、いつまでもベッドで包まってるわけにはいかない!!


「御馳走とデザートを食べ……こほん、歓迎会に行く」


 毛布を跳ね除けてミーシャを抱いた状態で立ち上がっても一切ふらついたりして無いし。

 元気ですよアピールには十分! なハズ……


「ふふふ、かしこまりました」


 よし! これで御馳走とデザートは私のものっ!!


「しかし、ご体調を崩されていた事に変わりはありませんし。

 会場までは念のため私がお連れ致します」


「っ!?」


 い、いつの間に!?

 ま、またしても抱っこ……いやそれ以前にこの私が反応すらできないなんて……!


「皆様、お喜びになられますね。

 アーグベルの話では皆様、レフィーお嬢様にご挨拶するのを心待ちにしていらしたようですので」


「えっ……」


 うそ、嘘だよね?

 ね、ねぇ邪神、皆様ってミリアとグランにアーグベル達だけだよね?


『……』


 何か言ってよっ!!


「では、参りましょう」


 シルヴィアがそう言った瞬間に視界が切り替わり……


「……」


 あはは、人がいっぱいだぁ……早く御馳走とデザートを食べたいなぁ。

 

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