第79話 世界の真実 その2
神々の仕業、ね。
「じゃあお前は関係ないと?」
『無関係とは言わないけど、少なくとも魔王という一種の装置について私は何も関与していないよ』
ふ〜ん、なるほど。
関与していない、つまりは他のヤツらが周期的に魔王を送り込む事を肯定もしてないけど否定もしてこなかったと。
「あくまで自分は傍観者か」
『あはは、その通り!
私は神と呼ばれる存在ではあるけど、その世界の管理者ではないのさ。
そして、そんな私は高貴な存在でもあるのだし悪魔ちゃん達ももう少し私に敬意を……』
「うざい」
邪神が高貴だろうが。
魔王を送り込んでたのがこの世界の管理者……神だろうが、ぶっちゃけどうでもいい。
重要なのは……
「しかし、何故神々が魔王を送り込み人間に戦争を仕掛ける必要があるのかがわかりませんね」
そうミリアの言う通り、重要なのは魔王が定期的に送り込まれてくる理由。
すなわち、この世界の管理者の目的。
「まさか……」
流石はシルヴィア、思い至ったようだな。
神々が魔王という名の駒を使って戦争を起こす目的、それは至ってシンプル。
「人間を殺すため。
それが管理者達の目的」
「え……」
「やはり……」
「人間を、ですか? ご主人様」
「ん、より正確には人類種を殺すため」
まぁ他にも戦争を起こして文明の発達を妨げるって理由もあるだろうけど。
主な目的はそれで間違いない。
人類種。
「エルフとかは長命種だから少数だけど、基本的に人類はすぐに数が増える」
何で人類の数を減らす必要があるかっていうと幾つか理由は思いつくけど……主な理由は2つかな?
「数が増え過ぎると管理が難しくなる。
それに、人は……人類は世界を滅ぼしかねない。
だから魔王と言う装置を使って一定以上に文明が発達しないように戦争を起こして数を減らす」
「ちょ、ちょっと待って下さい!
直接見た事はありませんが、その人間というのは一部の強者は存在するけど我らと比べて基本的には脆弱な存在なんですよね?」
「その認識で間違っていませんよミリア。
私は人の世を見た事がありますが、確かに強者たる存在は見当たりませんでした」
う〜む、やっぱりグランが丁寧な言葉遣いで話してるのって何か違和感が凄まじい。
まぁ見た目は美青年だし、イケメン執事って事自体に違和感はないけども……それがグランだとなぁ……
「そうですよね!
そんな人類が世界を滅ぼしかねないって、レフィー様そんな事があり得るのですか!?」
ん〜、まぁ確かにミリアもだけど皆んな人間なんて単独でも数万単位で簡単に殺せる実力を持ってるし。
その程度の人類が世界を滅ぼすかも何て言われてもピンとこないのも無理ないか。
「信じられないかもしれないけど、人類は世界を滅ぼし得る存在。
だからこそ、その人類の数を一定数まで減らし
それが魔王という
『あはは、本当に流石だね』
「ちっ、ぬかせ。
私にそれがわかるように仕向けたのはお前」
『おっと、そこまでバレてるとは』
「レフィーお嬢様、どう言う事ですか?」
「今回の魔王はアルタイル王国が禁忌と呼ばれる異世界召喚を行い聖女を召喚したせいですぐに討伐された。
つまり魔王は役割を満たせていない」
魔王が人間を殺すことで世界に満ちるはずだったエネルギーが今回は無くなった。
まぁ本来ならそれだけの事で世界に影響は出ないんだろうけど…… 禁忌、ねぇ。
管理者も想定外だったんだろうなぁ。
本来、異世界召喚は魔王が強過ぎた場合の人類が滅亡しないための救済処置。
本当にヤバくなったら神託でもして、万全の準備を整えてから異世界召喚をさせるつもりだったのに。
禁忌とまでされている異世界召喚を大して追い詰められてもいない序盤でアルタイル王国が行うなんて。
「異世界召喚を行うには世界に穴を開けて異なる世界と繋げる必要がある。
魂のみの状態ならまだしも、肉体も通れるだけの穴を世界に開けるのにどれ程のエネルギーが必要だと思う?」
しかもだ。
今回は管理者のサポートもなく無理やり世界に風穴を開けた。
ただでさえ莫大なエネルギーが消費されたのに、開けられた風穴からこの世界のエネルギーが流出した。
「この世界は今エネルギーが不足してる状態。
この状態が続けばいずれ世界が崩壊する、世界が滅ぶというのはそう言うこと」
まぁ、この状態が続けばの話だけど。
「でも問題ない。
役割を満たせなかった魔王の代わり、世界のエネルギー補充の役割を担ってるのがこの場所だから」
「この場所、と言うとこのダンジョンですか?」
「ん! だから言った。
この事に私が気付くように仕向けたのは邪神」
何せ私がダンジョンマスターになったのは邪神のせいだし。
ダンジョンマスターたる私がその機能に、世界の現状に気付かない訳が無い。
何か最初から邪神の思惑通りでムカつくけど……後で諸々まとめて請求してやる。
今はそれよりも……
「グラン。
お前は私との戦闘中に人間たちの住む大陸の事を表の世界と言った」
表の世界。
それはこの大陸が持つ本当の意味。
有事の際に世界を再生するための
いくら永き時を生きる古竜だと言っても、管理者じゃ無いグランがダンジョンの事を知っているとは思えない。
だけど知っていた、それはつまり!
「できれば紹介して欲しい」
ドラゴンであるグランと関連がありそうな管理者、神と言えば……アレしか無いっ!
別に会ってみたくてワクワクしてるとかじゃ無い。
ただ邪神はあんまり信用ならないから、管理者に会って世界の現状を正しく話し合う必要があるしな。
本当に子供みたいにワクワクドキドキしてるわけじゃあ断じてないっ!!
「はぁ、こうなるとわかっていたから黙っていたのですが……」
えっ、会えないの?
「ダメ?」
「っ! かしこまりました、全てはお嬢様のご意志のままに」
「じゃ、じゃあ!」
「はい、我ら竜種の神。
竜神との会合の場、必ずや整えて見せましょう」
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