第3話 サヤ

「サヤさん、体のほうはもう大丈夫なのか?」庭先に咲の着物を羽織る美しい少女の姿があった。彼女はサーヤ・エブリリュームと名乗ったが幻次郎達にはその言葉を発音するのが難しきったので、彼女の事をサヤと呼ぶことにした。彼女は、ある目的の為に場所に訪れたが反目する追手に襲われてこの地に落ちたそうだ。


「ありがとう幻次郎さん、貴方達のお陰ですっかり元気になりました」サヤは満面の笑みを幻次郎に送った。幻次郎はその場にヘタリ込みそうなほどの衝撃を受ける。まさに心の臓を撃ち抜かれたような感じであった。

「な、なんでも困った事があれば遠慮なく言っていくれ」彼女に気持ちを悟られないように必死に冷静さを保とうとした。

「ありがとうございます」サヤはそういうとニコリと可愛く微笑んだ。幻次郎は顔を真っ赤にしながら「ああ」と返事をするだけであった。


「あれは、きっとこの辺りにあるはず……、あれは奴らの手には渡せない」サヤは、宙を睨み付けるように見上げた。

「あれとは一体何の事なのだ。それに奴らとは・・・・・・追手のことか?」幻次郎はサヤの言っている意味が理解できなかった。


「私の父が作り出した最高の傑作です。それを有効利用できれば色々な新しい発見がさらに可能なのです。しかしそれを使って人殺しの道具を作ろうとする者が現れたのです。戦いの道具に自分の発明を使われる事を恐れた父は密かにそれを持って私達のくにから逃亡したのです。」サヤは両拳を強く握りしめた。


「サヤさんの父上が作ったものは、そんなに凄いものなのか!」幻次郎はそれらしく驚いて見せたが、サヤの言っている物が何なのかは結局理解はしていないようであった。

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