第54話 口裂け女!
「っていうか、今でも新しく妖怪が出来ているんだ」
しかし、鈴音は学校の怪談ブームによって、新しい妖怪が出来たというのに驚いてしまう。
「それはそうだ。最近は都市伝説と言われるものも、多くは妖怪に分類されるからな。口裂け女がいい例だ」
「ああ。日本中で流行ったっていう。赤いコートを着てるんだっけ。で、マスクをしてるのよね。で、『私、綺麗?』って問い掛けるっていう」
「ええ、その通りですわ」
「!?」
健星ともユキとも違う女性の声に、鈴音はびくんと背中を震わせる。そして、健星と、健星のスーツの裾を摘まんでいた。
ふ、振り向きたくない。確実にいるじゃん、口裂け女が!
「口にするから呼び寄せることになるんだ。まあいい、口裂け女、ここであった事件の犯人を知っているか?」
健星はあっさり振り向き、あろうことかそんなことを問い掛けている。鈴音はびっくりし、そして覚悟を決めて振り返った。赤いコートを着た、髪の長い女性がいる。口元にはしっかりマスクをしていた。
「ごきげんよう。お姫様」
そんな鈴音に向けて、口裂け女が目元を微笑ませて挨拶をしてくる。
「ご、ごきげんよう」
そんな挨拶、人生で初めてしたなと思いつつも、鈴音は頑張って笑顔で返した。すると、口裂け女が両手を胸の前で組み
「可愛いわ。立候補した時からずっと影から見てたけど、可愛いわ!」
とテンションを上げてくる。ええっと、影から見てたって、まさかのストーカー第二弾。ユキに続いてこの人もなのか。
「おい。時期王女にテンションを上げている場合じゃない。その姫君がお困りなんだ。犯人を知らないか?」
健星はやれやれと溜め息を吐きつつ、ちゃっかり口裂け女の慕う心を利用しようとする。本当に策士だ。
「あ、そうだったわね。知ってるわよ。この学校に通う不良君に取り憑いた
口裂け女はそうそうと軽く答えてくれる。あっさり答えが解ったわけだが、まさかのかまいたちでもなく、学校の怪談でもない妖怪。
「おんもらきって何?」
でもって、鈴音の知らない妖怪だった。まったく、この狭い日本にどれだけの妖怪がいるのやら。そう考えると、トラブルが続出するのも仕方がないのかも。
「陰摩羅鬼は人間の死体から漏れる気が固まって出来た妖怪だと言われている。本来は供養が足りないとそういう気が発生すると言われていて、
これは予想外だったと健星も溜め息を吐く。まったく、反対勢力も目に見えて反対していない連中は把握しづらくて困る。
「何だか大変そうですわね」
「大変だよ。口裂け女、お前は姫君応援派だろ。手伝ってくれ」
こうして口裂け女が仲間に加わることになるのだった。
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