02
始業式の会場に通されたが…うおお…緊張してきたあ…!!
私達は舞台袖に待機している。誤解のないよう言っておくが、大勢の前に立つことじゃなくて再会に緊張しているのだ。
「お前、大丈夫か…?ここにはいつも話している友人達がいるんだろう?もう少し嬉しそうにしたらどうなんだ。」
「いやどちゃくそ嬉しいんだけどさ。それとこれとは別問題なの。」
ディードには分かるまいて。楽しみ、嬉しさ、興奮99.9%。不安0.1%の超繊細なこの精神!
「不安少なっ。大丈夫そうだな…。」
「えー、急ではありますが、今年他国より留学生が…」
ぐあああああ!!もうそんな時間!!?よし、深呼吸…深呼吸…よし!!!
「まず、隣国のグラウム帝国より、第一皇子殿下であるデメトリアス・グラウム殿。
そして…魔国ディスジェイスより王女殿下アシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノス殿。もう1名、ディーデリック=レイン=ウラオノス殿です。どうぞお上がりください。」
皇子、私、ディードの順で舞台に上がる。堂々と、背筋を伸ばして余裕の表情で。私達の行いが国の評価を下げることもある。特に魔国のように閉鎖的な国は。
袖から出ると…生徒達の視線を感じる。ある者は頬を赤らめ、ある者は驚きに目を見開き。…なんで顔赤いの?ああ、ディードがイケメンだからかな?皇子は知らん、ぶっちゃけ彼の顔の造形に興味は無い。
男子生徒の視線の先は…私か?私の顔はまあまあだと思ってるけど…リリーとかララに比べると、ねえ。
さて、余裕そうに微笑みながら…友人達の姿を探す。…が、どうやら探す必要は無かったらしい。
なぜならば…人混みをかき分けて舞台に近づき…人目もはばからず舞台に飛び乗り私に抱きついてきたのは…!
「「「おかえり!!」」」
ああ…リリー、アシュレイ、アル…!!
やばい、泣きそう…!
「た…ただいま!!」
そのまま抱きついてきた彼らを受け止め…きれず…後ろに倒れそうになった。そんな私達を受け止めてくれたのはディードである。
「うおっと。」
そのまま背中を彼に預け、一緒に倒れ込んだ。ディード、私、リリー、アシュレイ、アルのサンドイッチの完成!!
「アシュリィーーー!!おかえり、おかえりなさーい!!」
「待ってたよ。レイなんて待ちきれずに会いに行こうとしてたんだよ。」
「オレだけじゃねえだろうが!でも…アシュリィ、会いたかった…。」
「わ…私も!沢山話したいことがあるの。沢山!」
そう言ってぎゅーっと抱き締める。ああ、懐かしいなあ、このノリ…。…帰って、来たんだなあ…。皆大きくなったなあ…。
まずリリー。分かっちゃいたが…ますますレイチェル様に似て美人になったなあ。真っ白な肌に、私を見つめる…金色の長い睫毛に縁取られた青い瞳。髪は腰ほどまで伸ばし下ろしている。短いのも良かったけど、やっぱりリリーは長い方がいいね。
アシュレイも…髪伸びたなあ。以前私が長髪にして三つ編みにするのとか良くない?と言ったのを覚えていたようだ。編んだ髪を横から流しているが…なんつーか、少年が青年になって…すぐに大人の男性になるんだなあ。背も伸びちゃって、180越えてんじゃない!?こりゃーモテますわ!婚約者とかいんのかな?
そしてアル。彼が一番変わってないっていうか…子供の頃の印象そのままに大きくなった感じ。雰囲気の問題かな?嬉しいけど!オレンジ色のサラサラヘアーも変わらずだ。後で撫でさせて。
でもアルも背え高っ!しかも2人とも声も低くなっちゃってー、もー、久しぶりに会った親戚のおばちゃんの気分だよ!!
私はというと、短かった髪は背中ほどまで伸ばしている。もう男の子に間違われるのはごめんだ…。そんで、身長があまり伸びなくて…155ちょいしか無い。まだ諦めてないけどな!!
そして以前リリーと言っていた、胸ですが。彼女は女性らしい出てるとこは出て引っ込んでるとこは引っ込んでる羨ましいプロポーション。
対する私は……うん。良く言えばスレンダー、悪く言えば断崖絶壁。だが無ではない、貧なだけだ!間違えんなよコノヤロウ!!
暫くそのまま再会を喜び合った。数年間離れ離れではあったけど…その時間を埋めるように互いの存在を確認し合う。だが…
「あのー…殿下、アレンシア君、アミエルさん。貴方達はお知り合い…?というより、まだ式は終わっていませんよ。」
「「「……すみません。」」」
理事長に促され、のろのろと起き上がる。まあ見せられてる側からすりゃ、おいおい式の進行の邪魔すんなし。だろう。ぶっちゃけ始業式の途中であることを忘れてた。
「あ、デメトリアスも久しぶりだね。」
アルは私にくっついたまま皇子に声を掛ける。そういやこの2人って従兄弟同士か、そりゃ接点もあるか。
だがついでのように挨拶をされた皇子はなんだか不機嫌そうだ。
「チッ…相変わらずのようだな、アルバート。魔族殿と知り合いだったとは。」
「うん。そちらの彼は初対面だね。何はともあれまず君達の挨拶から済ませようか。はい、どうぞ。」
アルが道を開け順番に…まず皇子が挨拶をするが、長っ!!こいつ10分くらい語ってたわ、簡単な挨拶ってさっき言われただろうが!!校長先生かお前は!!私は手短に済ませようっと。
「初めまして、ベイラー王国の皆さん。先ほどご紹介に与りました、当代魔王の娘アシュリィ=ヴィスカレット=ウラオノスと申します。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが…私は以前この国で暮らしていた時期がございました。そこで…」
現在私の右腕はリリーがくっ付いていて、左腕はアシュレイが組んでいる。そんで後ろからアルが抱きついて頭の上に顎を乗っけてるんですが…何この状況、ハーレムですか?なんでこんな状態で挨拶してんの私??生徒もポカンだよ。
というより、右…当たってますよ、リリーさん。たわわに実ったアレ、私はついぞ持ち得なかったモノ。うむ、悪ぅない!!ただし私とアル以外にしちゃいけないよ!
そして会場を軽く見渡せば、いるいる!ランス様ミーナ様、トゥリン兄妹ジェイド殿下!他にも見知った顔がいくつか。手を振りたいとこだが今は我慢。後で挨拶に行こうっと。
そのまま挨拶を終えディードに交代。彼も手短に済ませた。そしてまた舞台袖に引っ込もうとしたんだが…3人は元の場所に戻った方が良くない?
そう言ったが、別に良いんじゃない?もう式終わるし。と返されて…まあいっか!
それより…さっきから気になってるんだけど。皇子が…熱を帯びた視線をこちらに向けてくる。そのまま私達に近づいて来て…
「ふむ…其方良く見ると中々に美しい。俺様の妃にしてやろうではないか。」
と…リリーの顎に指を添わせながら言いやがった。
大丈夫、私はもうなんでもかんでも暴力で解決するような子供じゃない。私はね。わ・た・し・は。
代わりに…アルが皇子に跳び蹴りを喰らわせた。
貴方そんなにアグレッシブだったっけ…?
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