第46話



 アシュレイとも仲直り出来たところで、今後の作戦会議だ!あ。ちなみにいつも秘密の話をする時は必ず遮音をしているよ。アイニー様陣営が聞いてる可能性もあるのでな。



 私はまず、お茶会であった出来事を2人に話した。




「ふうん…じゃあ私は、ミーナさんと仲良くした方がいいかしら?」


「うう~ん…いえ、無理にとは言いません。お嬢様が本当に仲良くしたいと思ってくれたら、でいいです。」


「確かに…その娘を溺愛してるっつー伯爵が、オレらがミーナ様を利用してるとか思われたら面倒くさそうだな。」



 そゆこと。ただシャリオン伯爵家に関しては、返事が来るまでなんとも言えん。なので保留。他にも色々あるしね。



「じゃ、次。お嬢様に招待状がまだ結構あって…今度はどこに参加しましょう?

 そろそろ、本格的に行動してもいいと思うんですよね。」


「行動って?」



 ふふふ、当然。お嬢様の評判を上げる事!ついでにアイニー様が聖女とか言われてんのも腹立つから、徐々に失墜させてやろう。もう勝手に始まってるけど。

 だから今度は、規模の大きい所に参加したいな。うーん、うーん…。

 3人で、招待状に目を通す。小規模っぽいのばかりだなあ…公爵家とかで主催してくれればなあ。



「お。これどうだ?トゥリン侯爵家のお茶会。」



 ふむふむ。トゥリン侯爵家って、王都に近かったよな。距離はちとあるが…いいかもしれん。



—アシュリィ。扉の外に気配あり。いつものだ—


 ん?早速アイニー様か。…!にやり。



「2人共、今から遮音を解く。で、扉の外にアイニー様一派がいるから、一芝居よろしく!私に合わせて!

 アイニー様もトゥリン家のお茶会に参加させるよ!」


「「え。」」


 へい、かーいじょ!!

 それでは、と。





「お嬢様ー。こちらのトゥリン侯爵家のお茶会、参加してみません?」


「そうね…いいのではないかしら?」


「ではお返事しておきますね。ああ、でも今度はどんなドレスにしましょう?正直ネタ切れですー。」


「そうねー。アシュリィに任せきりだものねー。」


「(2人共すげえ棒読み…)」



 あんたも参加せい!!と小声で言いながら小突く。



「うーん…オレの意見としては………。」


「…意見は?」


「…すまん、管轄外だ…。」



 ちくしょう!!アイニー様が参加したくなるような餌は…ハッ!




「トゥリン侯爵家といえば、王都に近いですよねえ。公爵家や殿下方もいらっしゃるかもしれませんねー。」


「!そうですね、第二王子殿下にはお嬢様がいらっしゃいますけど、王太子殿下と第三王子殿下はフリーですよねー。」


「そうねえ。殿下にお会い出来るかもしれないし、気合入れていきましょー!」



「「「おー。」」」



—去って行ったぞ—



 っしゃい!!多分OK!アイニー様の事だから、懲りずに殿下方にアタックするチャンスを狙ってんだろ!彼らは来ないと思うけど。




 話も纏まった所で、今日はもう夕飯だ。

 あれ以降薬とかが盛られてる事は無いが、必ず私が毒味してる。うん、異常ナシ。

 そういえば明日は殿下が来る予定だったな。準備万端でお出迎えしなきゃ!そんな話もしつつ、終了する。






 そんで寝る時間だが…アシュレイに言わなきゃいけん事がある。


「な、なんだ?」


 私が神妙な顔をするもんだから、慄いてるわ。まあ、私も絶叫しましたから…。という訳で、彼に地下室での出来事を全て話した。そりゃもう、細部まできっちりと。

 すると、青い顔でマジ…?とか言ってきた。マジです。




 そんで解散し、寝るかーとなった時。


「いいいい一緒に寝てやってもいいぞ?」


 と、枕を持ったアシュレイが部屋に入ってきた。ほらあ、そうなるでしょ!?とは言わずに、一緒に布団に入る。いやー、落ち着くわー。


 寝る前にアシュレイが教えてくれたが、今日ジュリアさんが来たんだけど私がいないからってまたどっかに行ったらしい。

 そのうち来るねえ~と言っていたらしいが…自由な人だな!!












 翌日。朝食も終わり今日の予定の確認。

 お嬢様の部屋で、お茶を飲みながらするのがいつものスタイル。

 お茶を4つ淹れ終え配り、席に座り私から切り出す。


「で、今日は殿下が正午に見える予定です。あのお茶会以来、お会いしてませんもんねえ。遠いのにはるばる来てくださるとはね。」



「うんうん、遠いよね。だからリリーナラリスが王宮に来てくれてもいいんだよ?

 前回はアシュリィの精霊で来たそうじゃないか。僕も乗せて欲しいな。」


「それもいいかなあ。お嬢様、どうでしょう?」


「そうね。ご招待頂けたら、行きましょうか。」


「ついでに今日、殿下にトゥリン家のお茶会一緒に行きませんかーって聞いてみたらどうです?」


「え、お茶会?いいよ、参加しても。君達が一緒なら面白そうだしね。」


「ほら、殿下もこう仰ってますよお嬢様…。」



 …今、アシュレイの提案に答えたのは…。






「「「ぎゃあああああっっっ!!!?」」」



「うーん、いい反応してくれるね。」



 またもいきなりの殿下!?なんでこの人しれっと現れんの!

 というより、約束は正午でしょうが!まだ9時過ぎですけど!?優雅にお茶飲んでんじゃねー!!自然に淹れちゃってたじゃん!!



「あ、あの殿下?お時間にはまだ早いのですが。」


「うん。」


 だからうん。じゃねー!!3人揃ってがっくりと項垂れてしまった。

 今日はヒマだったから、馬を飛ばして来たらしい。ちゃんと付き人兼護衛もいるよ、とのことで扉の方に目を向けると、若い騎士の方がいた。

 そして苦笑しながら会釈してきた。私達も返すが、ありゃあ「止めたんですけどね」と言いたげな顔だな。


 恐らく彼は、ヒュー様だろう。ヒュー・アレンシア様。アルバート殿下に唯一心からお仕えする忠臣で、ゲームでも最期まで彼と共にいた人物だ…。




 てかラッシュ?なんで部屋に入れちゃってんの?



—む?アルバートはリリーナラリスの番なのだろう?ならば良いのではないか。

 それに悪意などは一切感じなかったのでな。少々其方らを驚かそうとはしていたが、可愛いものよ—


 ……まあいっか!!私は考える事を放棄した。




 殿下がいるんだから私達は席を立つ。すると殿下は不満そうな顔をした。


「つまんない。なんで立つの。」


「分かっておいででしょうが…殿下のような高貴な方と、ボク達使用人が同席する事は許されません。

 お嬢様とは習慣になってしまっていますが。」


 そうそう。…あのう、何故泣きそうなお顔をしていらっしゃる!?


「だって…何処でも誰も僕とお茶を飲んでくれない…。」



 私達は同時に着席した。新記録が出たんじゃないかってくらいの早業だったね!着席速度日本一選手権があったら優勝を狙えるだろう。

 ただし!公式の場では無理ですからね!!?そう言うと、殿下は顔をパアアア…と輝かせた。…くそう、負けた。ついつい言う事を聞いてしまう。



「折角ですし、そちらの騎士様もどうぞお座りください。席ならございますよ?」


 ヒュー様も道連れにしたろうと思い、声をかける。まあでも真面目な彼の事だから…



「お気遣いありがとう。でも私は…」


 断るよね。だが逃さん!どうせ殿下と2人きりだったら座ってんでしょーが、ほら座れえい!!

 私のしつこいお誘いについに折れ、ヒュー様も腰を下ろす。2人掛けのソファーに殿下とお嬢様、1人掛けのソファーにヒュー様。私とアシュレイはスツールだ。そこで改めて自己紹介タイム。



「お招きありがとう。

 アミエル侯爵令嬢におかれましては、ご機嫌麗しく。私はヒュー・アレンシアと申します。アルバート殿下にお仕えしておりますので、どうぞヒューとお呼びください。

 もちろん君達も、気軽に呼んでくれると嬉しいな。」


「わかりましたわ。ではヒュー様と呼ばせていただきます。私の事も、どうぞリリーナラリスとお呼びくださいませ。」


「ヒュー様、ありがとうございます。ボクはアシュレイと申します、よろしくお願い致します。」


「私はアシュリィと申します。今後ともよろしくお願いします、ヒュー様。」



 そんなやりとりをしていたら…また殿下がむくれとる。どないせーっちゅーねん。




「まあまあ、せっかくいらしてくださったのですから、どうぞ交流なさってください。ね、お嬢様。」


「そうね。殿下、本日はどうなさいますか?」


 そう言うと殿下は考え込む。…婚約者(候補)との交流って、実際何すんだろ。お茶飲みながらアハハウフフしか想像できん。

 殿下は何か思いついたのか、がばっと顔を上げた。




「さっきも言ったけど。アシュリィの精霊に乗って散歩したいな。

 王宮魔法師達は、危ないからと言って乗せてくれない。…ジェイドだって乗せてあげてるのに…。」



「今すぐ行きましょうか!ねえアシュリィ!?」


「お任せください!構いませんね、ヒュー様!?」


「…うん、お願いしようかな。」



 ぐうう!!殿下の同情心を煽る作戦には完敗だよ!!しかも狙ってやってんじゃないのがタチ悪い!聞いてあげたくなっちゃうじゃん!?

 勢いよく立ち上がる私とお嬢様。そしてヒュー様も同意してくれた。どことなく嬉しそうなので、きっと彼もなんとかしたいと思ってたんだろうな…。


 あとお嬢様。あんま殿下を甘やかしちゃいかんよ?




 お嬢様は動きやすい格好に着替える必要があるので、アシュレイに2人を庭に案内してもらった。

 お嬢様も、上空デートが楽しみっぽいな!2人きりには出来ないのが残念だけど。


 そして私達も遅れて庭に向かっている途中…アイニー様の邪魔が入った。

 取り巻きのようにメイドを引き連れ、待ち構えていたんだろうね。おヒマなこって。



「ご機嫌よう、アシュリィ。今アルバート殿下がいらっしゃっているそうね。」


「ご機嫌よう、アイニー様。はい、現在お庭にいらっしゃるはずです。」


「そう、この後何をするのかしら。」


「殿下が私の精霊に興味があるご様子ですので、これよりお披露目の予定でございます。」


「そう…じゃあね。」


「はい。」



 そして去り際にお嬢様を睨みつけていた。やんのか、おん?こっちは殺気飛ばしたろか?だが今はおやめなさい、とお嬢様に引っ張られる。つまり、いつかはいいって事ですね!


 そんな事よりも、庭についたらトロくんもいた。どうやら殿下に捕まったようだ。



「君は庭師なのか。かなり鍛えているように見えるが…剣術とかはやってるのか?」


「いいえ、全然ですね。そもそも僕は闘うのは苦手なので…簡単な護身術くらいしか使えませんね。」



 どうやら話は弾んでるようですね。そこに合流し、早速リュウオウを呼び出す。殿下は大はしゃぎだ。

 そして並び順をどうするかになった。全員乗らなくてもよくね?と思ったが…。まず私、殿下は確定。ヒュー様も護衛として同行が必要だ。そしてお嬢様も殿下と一緒に飛びたいだろう。アシュレイは遠慮しようとしたが、逃さん。トロくんは逃げた。

 ただまあ逃げる際に、私達に「よかったね」と言って行った。ふふ、仲直りの事だろうね。



 最終的に私、お嬢様、殿下、アシュレイ、ヒュー様の順で落ち着いた。





 それでは皆様、テイク・オフ!!





 

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