3 危険な友だち

 消灯時間が気になって、真斗とは別れ部屋に戻ると、茜がいなかった。同室の美樹に聞いてみると、

「茜ならさっき電話が来て、出て行ったよ。相手は確か藤森とか言っていた。」

「そうなの?藤森君が…で、どこへ行くか聞いていた?」私の問い掛けに、プールがどうのこうのと言うので、あわてて真斗に電話をした。

 再びロビーで真斗と落ち合い、プールのある方へ向かった。プールに着くと、すぐに茜と藤森君の姿が見つかった。藤森君が茜の両手を持って引き寄せようとするのを、茜は腰を引いて抵抗しているようだ。真斗が咄嗟とっさに、

「藤森、何してるんだよ。」と大声を上げた。すると、藤森君が茜の手を離した。「茜、大丈夫?」と私は言いながら、茜に駆け寄った。

「どういう事?」と真斗と私は同時に詰問きつもんしていた。茜が口を開いて、

「愛海と真斗がプールにいて呼んでいるから、俺らも行こう。って電話があっから来てみたら、二人はいなくて…。」

後は真斗に任せて、茜を連れて部屋に帰った。部屋にいた美樹と七瀬の二人は何があったのか興味津々で、茜の話を一緒に聞いた。

「あの人は、私に付き合ってと言ってきて。私が、梨沙ちゃんと交際しているんでしょと言うと、もう別れたからいいんだ。坂上さんが好きになったからと訳の分からない事を言って口説いてきた。それからは見ての通り、手をつかんでキスしようと引き寄せようとした。」

 茜の話を聞いて、無性に腹が立ってきた。二人もあきれているようだ。梨沙ちゃんを振った事も許せないし、何より茜をだまして誘い出し強引に迫った事が許せなかった。藤森君はいろんな女の子に声を掛けて、すぐに別れるという悪い噂を聞いている。真斗がそんな人となぜ友達なのかも疑問であった。折角の真斗との良い思い出が台無しになってしまった。


 修学旅行が終わった後の代休の日に、真斗とカラオケに行った。高校生のデートというとカラオケが定番のコースになっている。二人きりになれるし、デート代もあまりかからず飲み食いもできる。

 その日はあまり歌わず、真斗と修学旅行の話で盛り上がった。その中で、藤森君をきつく問い詰めたと言っていた。真斗は茜の事を心配していた。私は最後の晩の砂浜での事を、恥ずかしくて言い出せなかった。

「砂浜デート楽しかったね。あの時、愛海じゃなかったみたいに、激しかったね。」言いにくい事を遠慮なく言う真斗が憎たらしかった。

「私は私だよ。違うというならキスして!」最近は私から催促する事が多くなっていた。防犯カメラを気にしながらキスをした。

 カラオケ店を出て、私は

「もうすぐ冬休みだね。会う時間を作らないと、寂しいよ。」と言った。

「うん、まずクリスマスだね。それから初詣にも行きたいな。」

「クリスマスか、イブの日は難しいな。私考えてみるよ。」かなり積極的になっている自分を見つけた。真斗とは離れがたい想いのまま、その日は別れた。

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