魔法実習

 同日、ラァとラナはミルシャから結界魔法及び守護結界の授業を受けていた。


 「すでにお二方には基本はお教えしてありますが、魔法はこの世界にあふれている世界を構成する要素『マナ』をミスリルロッドで触媒として顕現する術式です」


 「また、お二人には王家の女性のみに発現する守護結界を発現する力もあります」


 「ただ、守護結界は儀式が終わるまでは不完全な状態でしか具現化しません」


 「今は魔術の修行のみを行ってください」


 「質問です」とラァ


 「はい、どうぞ」


 「ミルシャ先生は水魔法のマスターですが、他の系統の魔法は使えるんですか?」


 「私は水魔法以外使えません。また、ほとんどの魔術師は一系統の魔法しか扱えません」


 「でも、わたしは水と風を、ラナは水と土の魔法を使えるんですよね?」


 「その通りです、王家の方々も二系統の魔法が使える方はほとんどいないのですが、お二人には元々そのような才能があるようです」


 「ただ、魔術院でも、今一人だけ、三系統の魔法を使いこなせる者がいるとか」


 「え・・・すごい、三つも・・」とラナ


 「たしかにたくさんの術式を使えることは非常に貴重ですが、一つ一つの術式の使い場所、術式の完成度、潜在的な魔法力の向上も重要です」


 「はい」少し釘を刺されたようで、二人とも素直に返事をした。


 「では、ミスリルロッドに魔力を貯めて、それを放出する反復練習をしてください。術式は詠唱しなくてけっこうです」


 幼い二人にはまだ大きなミスリルロッドを両手で持ち、目を閉じて集中しはじめた。


 ミスリルロッド全体が不思議なオーラで光っている。


 通常、この光で魔術師の系統が分かるのだが、二人の王女は銀色のミスリルロッドがミルシャの見たこともないような光り方をする。


 ・・・すごい、多分わたしが十五歳でテイマーを取った時よりも、お二人のほうが魔力の絶対量が多い。ミルシャはそう思った。


 「そのまま、放出してください」


 二人の王女から勢いよく魔力が流れ出した。


 二人とも、長い髪の毛がいったん波打つように跳ね上がり、また自然な長髪に戻った。


 額には汗が浮かび上がっている。


 「今日はこれを十回一セットで十セット行います」


 「はい」二人とも異存はないようだ。


 ・・・ラ・カームを守るためだから。


 そう思っていた。

 


 「はい、終了です。二人ともよく頑張ったわね」


 夕刻、二人にとっては今までで最も長い一日が終わった。

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