-03.礼儀知らず、恥知らず
教授に認められた俺たちはすぐに一度日本に帰国して報告した。
学生証も見せて
「母さんたちや美香にも興味があるって。MITに誘ってくれないかって言われたよ。入学試験を準備して待ってるからって。」
俺がその話をした途端、美香も含めて全員が渡米の準備を始めた。
確かにこんなチャンスめったにないからね。
美香はみかちゃんずのメンバーもつれていきたがった。
俺は許可を出し、俺たちの秘密を共有してもらうことにして、日本で明日の夕方、ボストンでの朝にこちらに俺だけ帰ってきてラーニングさせると伝えた。
美香はすぐにメンバーにチャットで呼びかけていた。
翌朝。
俺は起きてすぐに会社に転移した。
リビングに行くとすでに美香たちはそろっていた。
「美香がどうしても、君たちと一緒に留学したいっていうんで、急遽来てもらったんだ。」
「でも、私たち美香ちゃんのように頭がよくないし。留学する費用なんて持ってないんです。」
「うん。それは俺の方で何とかするよ。今は入学を許されたという既成事実を作る方が先だね。」
俺は俺の特殊能力と美香を含めたここに出入りしている全員が俺の能力で学力がアップしていることを説明し、4人の子たちにも同じようにラーニングしてみないかと誘った。
ラーニングを2時間で終え、今日はいったん帰ってもらった。夜遅くまで付き合わすわけにもいかないからね。
そして帰ってお母さんにも一緒に留学しないかと誘って明日の15時にまた会社にきてほしいとお願いしておいた。
俺はボストンに戻り、しおりたちと共に、各教授のもとに行ってそれぞれの専門分野の議論を続けた。
俺たちは昼食時と夕食時には必ず食事をとることにしている。
そうしないと教授型はエンドレスで議論したがるのだ。
よほど、今まで研究が停滞していたのだろう。
ある教授は今日だけで3つの研究テーマを思いついたらしい。それってすごいよね。
翌日まだ朝の4時から俺は日本に転移して、お母さん方と一緒に来ている子供たちに昨日どうだったと感想を求めた。
するとどの子も、夏休みの宿題を終わらしてしまったらしい。
それを見て話を信じたお母さん方が今日は同行してきたらしい。
「娘から聞きましたが、私たちにも紀夫君が持つ能力を使うと頭がよくなるの?」
「いえ、頭がよくなるのではないんです。理解を深めて記憶できるようになるんです。あちらの部屋に2段ベッドがありますからそれぞれ寝転んでもらえませんか?ラーニング中は少しボーっとする感覚があるので、寝転んでもらうだけです。意識はありますから安心してください。」
俺はそう言ってお母さん方全員にラーニングしていった。
2時間後、全員で集まってここにいる全員にラーニングをかけていること。
既にみんなの頭の中には英会話をはじめとする外国語はもちろん、小学校から高校卒業までの教科書の知識を刷り込んでいることを話した。それ以外にも八極拳などの拳法や身体強化、感覚強化などのスキルも勉強していることを伝えた。
もし、可能なら、アメリカに留学させてみないか、そしてできることならお母さん方も一緒にどうですかと誘いをかけた。
それにはもちろん旦那さんの許可もいるだろうし、他の兄弟もいるだろう。
9月にもう一度渡米するのでそれまでにできれば結論をもらえるように話をした。
また留学の際に必要なトーフルなども受けておいてほしいことも話した。
みんな大学には行きたがってた。それにすでに知識がある学校に行っても本人が無駄に過ごすことになることを話した。もし興味があるようなら旦那さんやほかの兄弟も一緒に留学するための手伝いをすると話した。
明日も同じ時間に来るので、もしその気があれば集まってほしいことと、このことがばれると俺がモルモットにされかねないので決して家族以外には口外しないように念を押した。
実際既に話したがらないように暗示は掛けてるけどね。
俺はそれからボストンに戻り、朝食を食べて八極拳の套路をしてから研究室に向かった。
その日も無事終わり今日は23日(日)だ。
俺は朝方4時から会社に向かうとブレーメンの子供たちとお母さん以外にも男性が3名と高校生らしき子が3名いた。
「おまえか?母さんと妹に怪しげな誘いをかけてるのって。」
「義之、やめなさい。紀夫君はそういう子じゃないのよ。」
「母さんたちは騙されてるんだよ。父さんも言ってやれよ。このままじゃ家族がバラバラになっちゃうよ。」
これは予想外だったな。しおりに念話して、今日は研究室に行けないと言づけてもらおう。
「えっと。俺が玉田紀夫です。義之さんですか?決してあなた方の家庭をばらばらにするつもりはありませんし、むしろいい方向に向かえばと声を掛けさせていただいたのです。といっても実際に体験しないことにはなかなか信じてもらえないのも事実です。じゃあ実際に体験してみませんか?もちろんここで会ったことは他言無用でお願いしますね。」
「だから、俺は騙されないって言ってんだ。」
「仕方ないな。今俺は実はアメリカのボストンに滞在してるんです。おかしな話ですよね。実は瞬間移動で日本に帰ってきてるんですよ。いいですか?」
「なんだよ。」
俺は義之君の肩に手を当てると一瞬でボストンのプレイングルームに転移した。
「な!」
義之君は驚いていた。
「これが俺の転移能力です。ここは俺たちが拠点にしているボストンの共同住宅です。外に出てみませんか?」
俺はそう促して外に出た。プレイングルームからも外に出れるようになっている。俺はアイテムボックスからサンダルを2つ出し1つを義之君に渡して外に出た。
外に出るとそこは朝のボストンだった。
「あそこがMIT。世界最高峰の頭脳が集う学び舎です。」
俺はアイテムボックスから学生IDを取り出して見せた。
「俺はまだ日本の呉竹南高校の一年生ですが、こうやってMITの学生になれました。」
呆然としている義之君を促し部屋に戻って日本に転移した。
突然現れた俺たちに驚いていたが義之君のお父さんが大丈夫かと聞くと。
「今一瞬でアメリカのボストンまで行ってきた。俺にもこんな力が使えるのか?」
あ、こいつは調子に乗るタイプか。
「いえ、これは俺たちだけの能力です。能力を使って調子に乗るような人に授ける気はありません。」
と、俺はきっぱり言った。
「あなた方に授けるのは私たちがため込んだ膨大な知識と株を使った資産運用ぐらいですかね。」
「資産運用?」
う~ん。ここの親子は男どもは全滅かな。欲が顔に出ちゃってるもの。
「そうですね。今俺は100億程の個人資産を持っています。」
「100億!!」
「会社は資産運用してすでに1,000億の資産を超えてますし、わが社の社員は全員20億ほどの資産を持っています。」
「そ…その株式運用を俺たちにも使ってくれるというのか?」
この二人は保奈美ちゃんのお父さんとお兄ちゃんのようだ。
娘さんとお母さんは素直で謙虚なのにどうしてこうも違うかね。
「う~ん。ごめんなさい。あなた方二人は無理なようですね。」
「なんでだ。差別じゃねーのかよ。」
ふ~。これが日本教育の一番悪いところだよな。
「まず、私は名乗りましたが、私はあなた方の名前も知りません。ひょっとして知っていて当たり前だと勘違いされているのなら訂正しておきますね。私とあなた方は初対面です。これでまず礼儀を知らないということがわかりますね。それに初対面の人間に対しての口の利き方。礼儀が成っていないのもひどいですよね。それにさっき差別っておっしゃいましたが、これは差別ではありません。区別というのです。人間誰でも自分の友人を選ぶ権利もあり、選んだ友人とそれ以外では区別しますよね。そういうことですよ。保奈美さんとお母さんは素直で謙虚なのにお父さん。あなたはお金の話になったとたん露骨に目の色が変わりましたね。息子さんも転移能力が使えるかもと思った瞬間に俺にも使わせろっていう勢いで他人に迫ってました。そんな人と秘密を共有できたり、仲間にする必要があると思いますか?」
「俺たちを仲間にしないとこのことを世間に言いふらすぞ。俺たちの資産もお前が増やすんだ。」
「そうだ。学校にも行けなくしてやるぞ。」
それを聞いていた周りの人たちは俺も含めてはあ~と大きくため息をついた。
「あなた…。もう本当に情けない。いまみんながあなたのことをどういう目で見ているかわからないの?」
「なにを偉そうに。お前は今まで通り家でもし作って俺の言うとおりにしておけばいいんだ。」
「そうだ。保奈美も最近生意気だぞ。」
俺はそれ以上の醜態は見たくないので首筋に掌底を打ち込んで二人を気絶させた。
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