第4話 しゃべるトカゲ
「きさまぁ!何てことをしてくれたんじゃ!」
骨の美味しさを噛みしめながら何故か意識のハッキリしたスケルトンの耳にどこからともなく声が聞こえてきた。
「コツコツ(誰だ?俺は骨が美味しいという新たな発見を噛みしめるのを邪魔するのは!)」
先ほどまで自分が守るべき者をフラフラと探していたとは思えないほどハッキリとした意志がスケルトンには宿っていた。
「どこを見ておる!ココじゃ!ココ!」
すぐ近くから声が聞こえてのだが祭壇の周囲には人はおろか魔物の姿のない。
「どこを見ておる、もっと下じゃ。祭壇の上じゃ。」
キョロキョロ周囲を見回すスケルトンの耳に再び声が聞こえてくる。
声の内容に従って祭壇の上に視線を戻すとトカゲがスケルトンを見上げていた。
トカゲ、毒々しい紫色で鱗がちょっとだけトゲトゲしているが正真正銘のトカゲだ。
そう言えばさっき骨を拾ったときに視線の隅に映っていた気がしないでもないとスケルトンは考えながらトカゲを見る。
声の主がこのトカゲとは思えないので他に何かないかと祭壇の隅々まで探すが話ができそうな知的生命体どころか生き物すらトカゲしかいない。
「コラ、無視するんじゃない!」
トカゲの口の動きと声が一致しているような気がする。
「コツコツ(もしかしてトカゲが喋っているのか?)」
スケルトンは声を出せないので変わりに骨を打ち合わせる。
「トカゲじゃないわ!ドラゴンと間違えるならまだしもトカゲと間違えるとは何事じゃ!」
トカゲはトカゲではないと激しく主張するがどう見てもちょっと変わったトカゲである。ドラゴンのよう牙も角も羽もないのにドラゴンと間違えるほうがおかしい。
「コツコツ!(なんでコツコツしか言ってないのに伝わるんだ!?)」
スケルトンは自分が言葉を発してないのにトカゲと意思疎通ができたことに驚く。
「そっちに驚く!?普通はワシが喋ったことに驚くとこじゃろが!」
「コツコツ(いや、理性的なスケルトンがいるくらいだから喋るトカゲがいてもおかしくないだろ?)」
毒々しい怪しげな骨を食べてから何故か意識ハッキリしたスケルトンは冷静に答える。
「そういうもんかのぉ。」
「コツコツ(そういうもんです)」
仰々しい祭壇の上で大きくうなずくスケルトンと首を傾げるトカゲという非常にシュールな絵面が出来上がっていた。
「ってそうじゃない!ワシの骨を返すんじゃ!」
「コツコツ(トカゲの骨?トカゲさんの五体満足のようですが?)」
祭壇の上で前足をバシバシと地に叩き付けているトカゲは骨が欠損しているようなところはない。
「ちが~う!この祭壇の上に置いてあった骨じゃ!」
「コツコツ(・・・美味しく頂きました。)」
「うむうむ、幾星霜の年月をかけて熟成された魔素と瘴気がこの上ない美味を醸し出しておったじゃろ。」
「コツコツ(すいません。俺にグルメレポは無理です。ただ今まで食べた物で一番美味しかったです。)」
スケルトンとして生まれて初めて食べたのだから一番美味しいのは当たり前である。
「ウヘヘ、じゃろ。」
トカゲは骨が美味しかったと聞いて気味の悪い笑い声をあげている。
「コツコツ(気持ち悪いのでその笑い止めてください。)」
「気持悪くないわ!初対面で失礼なヤツじゃ!ってそうじゃないわ。お前が食った骨はワシの骨じゃ。今すぐ返すんじゃ!」
「コツコツ(トカゲも骨を食べたかったの?全部食べちゃったからなぁ。・・・吐き出そうか?)」
「吐き出すんじゃないわ!おまえはスケルトンなんじゃから取り込んだものを召喚できるじゃろが!」
「コツコツ(そうなの?)」
「なんでスケルトンのお前が知らんのじゃ!ハァハァ。」
連続してツッコミを入れたトカゲは息切れを起こした。
「コツコツ(それじゃ早速やってみる。)・・・・コツコツ(どうやんの?)」
「出来んのかい!!!」
息を整えたトカゲのツッコミが地下に響きわたったのだった。
トカゲの苦労はまだ続くのか?
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