Wake Up from Cold Sleep!! 〜元特殊商人、絶景目指していざ行かん〜

文月 

ハローハローウェアーイズ??

本作は宇宙戦艦ヤマトやマブラヴ、エヴァなどに影響受けまくった作品です。

全てはロマンで解決出来る作品ですので、よろしくお願いします。



今日は第1章を1時間に3話ずつ投稿していきます!



★★★★★★★★★★★★★★



『……一次解凍シークエンス完了』


『二次シークエンス開始』


『ポッド内保存ガス排出。気圧調整開始』


『ポッド内に生存必須気体強制注入開始』


『ポッド大気内気体濃度安定、窒素78.1、酸素20.9、その他0.9……問題なし』


『気体調整後のバイタル変化問題なし。

……ショック起動』


『心臓平常活動再開。血圧上昇』


『肺血中酸素濃度上昇……許容数値内』


『二酸化炭素排出開始……ポッド排気及び換気開始』


『体温上昇……数値上昇率異常値』


『規定によりシークエンス中止は認められず。以後続行』


『各数値安定……二次シークエンス完了』


『三次シークエンス開始』


『記憶処理実行済み……問題なし』


『筋肉機能……低下が見られるが許容範囲内』


『五感機能……反応有り』


『生理機能及び生殖機能……問題なし』


『脳波計測……異常なし。人型範疇生物と承認』


『ポッド内人型範疇生物における体液機能……問題なし』


『同要項細胞細胞賦活機能……安定』


『神経干渉……無し』


『細胞物質放出を確認……三次シークエンス完了、全シークエンス完了を確認』


『G型人類と認定。コールドスリープ解除』


『以後の管理はAIに権利譲渡』


『おはようございます』



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




・俺(■■■)



 おはようございます。

 どうも。俺です。

 何故か知りませんがいつの間にかこんなよくわからないポッドみたいなところに入れられてG型人類とか言われてました。GってあのGじゃないよな?カサカサしたあれ。某カフカみたいのは嫌だよ俺。



 それにそもそもどこだよここ。


 記憶もなんかあやふやだし……


 さっきはなんか色々電子音声っぽい声でアナウンスしてたけどそれからポッドには何の変化もない。身体もポッド内だけだが動かせる。


 まあアナウンスの最後くらいは聞こえていた。目は半目で外はボヤけた状態だったけど。あれだ、麻酔が解けかけてる感じ。あれくらいのぼんやり感だな。


 手を開いて閉じて、首動かして足の方見て、全裸だから見えるこんな状況でも何故か元気いっぱいな我がブラザーにちょっと呆れて。


 周りは内から見た円筒形のポッドで、ガラスとかが貼られているわけじゃないから特に何も見えない。どこからか青白い光で照らされているから内部は見えているが、外が見えるなんてことは無いみたいだ。

 今いるのは細長いベッドみたいな場所でご丁寧に頭の下には枕が。

 俺の身長が180くらいだったはずで、今見えてる限りだと足の先にもいくらか空間があるからベッド含め二メートル以上はあるポッドなんだろうな。


「はぁー……お、声は、なんとか、出せるか」


 さっきこの中に酸素とか入れたって言ってたから話すことも出来るんだろう。でもなんか突っかかりがある感じ。まるでずっと寝てたあとみたいな。

 そんな感覚の中でも今の頭の角度的にどうしても視界に入ってくるマイブラザーは置いておこう。


「全裸なのは、一旦置いとくとして……コールドスリープ、って聞こえたよな。あれは、なんだ?」


 知っての通りSF作品で有名な単語だ。確か人間を冷やして仮死状態にして眠らせて、数十年とか数百年とかの後に目覚めさせるある種のタイムマシン。

 技術こそ確か2040年に開発されたはずだが……


 違うな、これが最後の記憶か。2040年7月27日。これが最後の記憶、加えてコールドスリープ技術の開発のニュースを見た朝だ。それが最後。そこから後の記憶が無い。朝飯の前だったから前日の夕食の味も覚えてるんだけど。薄味の病院食だったよ。


「仮にそのコールドスリープに巻き込まれるなりしてたとして、ここから俺は出られるのか?」


 一度発声したからかだいぶ滑らかになった声と違って最初から普通に動かせる手で目の前のポッドを触ってみたり押してみてもどこか開くわけではなかった。ただ質感はプラスチックだ。殴ればいけるか?


 ガンッ


 殴ってみても特に変化は無し……か。残るのは痛みだけ。けどその痛みに違和感。左手の指に何か金属質のものが……


「これは……ああ良かった」


 刻印のされた綺麗な銀色の指輪が嵌っていた。そうだ思い出した。大切なものだ。けど今は……



 気を取り直して。

 ベッドは質感は布のシーツそのもの。その下はウレタンみたいな素材。


 全裸だけど温度調節がちゃんとされてるのか寒いってことは無い。


 はて……


「とりあえず服が欲しいけど……多分こっから出ないことには始まらないな」


 この状況、盛大なドッキリってことも考えられるけど、わざわざ俺相手にやるだろうか?俺はただの小市民……では無いけど。

 東京住まいで小さな商社で上司にこき使われて、その結果人生も殺伐とするだけの生活を送っていた。一応、仕事の内容は商いだから分類だと商社マンになるんだろうけど、そんなことは置いとこう。


 さて俺は、誕生日こそ友人に祝ってもらえるが、こんなドッキリ仕掛けるような知り合いは日本に居ないし、そんなイベントが出来るような日は近日中には無かった。


 いや、今の状態になる前に俺の身体がドッキリじゃなくても何か仕掛けられるような状況にあったのは否定しない。


 それが今ある程度落ち着いている理由でもあるのだが……


 その時だった。


『……ポッド内人型範疇生物の意識覚醒を確認。バイタル計測終了。問題なし。ロック解除。おはようございます、マスター』


 ガコンッ


 お?いきなりさっきのアナウンスと同じ声、女声のような電子音声がしたと思ったらなんか開いた音がしたな。もしかして……


 もう一度腕をのばし、天井を押してみる。


「おお、開いた」


 少し押すと左側から光が差し込んでくる。一定のとこまで押すとポッドはそこから自動で開いていく。パシューっと空気が抜けていくような音がしているから空気圧式だったのかな?


 ドライアイスで白い煙がモウモウとなる中ポッドから出ていったら少しは様になるのかもしれないけど、そうはいかない。煙ないもの。


 起き上がってみたら何やら不思議空間だ。


 俺がいた白いポッドが中央にあって、周りはなんだろう、360度シアターみたいな空間だ。それに壁が濃いブルーで時おりスカイ○リーの展望台みたいに横に向けて光が走る。ステレオタイプなSFルームみたいなそんな感じだ。

 というか、壁の色合いから暗いはずなのにしっかりと周囲が見える明るさだ。どうやってるんだ?


 床には何も置かれておらず、ポッドの周りにも何も無い。いや、ポッドから伸びてる太いケーブルはあるな。壁に伸びて接続されてる。


 いくら見渡しても何か変わるわけじゃ無いか。さっきのアナウンスで「AIに権利譲渡」とか言ってたからポッドが開く直前のアナウンスは多分そのAIによるものだと予想してるんだが。


 まあどう見たって病室じゃないな。少なくとも俺は移動させられたって訳か。


 俺の最後の記憶は病室だ。ちょっとした事だったが短期間入院することになって、ベッドの上にいた。

 それにさっきのポッド。色々聞こえてはいたが、外から見ると穴のないMRIなんかの医療機器に見えないことも無い。それに医療の発展はここ数年著しいからな。俺の知らない機械があってもおかしくはなかった。


 扉らしきものは無い。

 でもこの部屋は案外狭そうだ。どうやら壁がスクリーンのようになっていて、映像を映している感じだ。その映像が奥行きを感じさせている。多分この部屋は球形だけど半径三メートル無いんじゃないか?


 少し怖いが……ちょっと動いてみるか。


 相変わらずお元気なマイブラザーだが、さっきよりは落ち着いている。どうやら俺の治まってくれという念が通じたのかもしれない。


 ポッドから降り、壁に向かう。指先で軽くつついてみると硬い感触。金属とかプラスチック、ガラスでも無いな。なんだこれ?


 他にもペタペタと壁をしばらく触りまくっていると、何やら壁とはまた違った質感の物、ガラスみたいなひんやり感だ。

 つついてみても反応は無い。

 壁と同化していてわかりにくいが、よく見てみるとタッチパネルみたいな見た目になっているな。


 ドラマとかで見る手を当てると手相だかなんだかを照合してロックが外れるやつ。あれみたいだ。テンキーとかは無い感じだし。

 そのまわりにはスイッチとかは無く、手を出すとしたらこの部分だろう。


 でもさすがにいきなり手を出すのは怖いな。

 他にもないか?


 まだ探してない部分もいくらかあるし。まるで謎解きだ。


 狭い空間だから探す範囲は少なくて済むけど、さっきのタッチパネルみたいな物のように壁にあるとは限らないからな。

 さて、謎解きタイムスタートだ。




 うーん。


 結論から言うと何も無かった。

 ポッドから伸びているケーブルにも触れてみたが、コンセントみたいに壁に突き刺していると言うよりは壁の奥に埋め込まれている感じだったな。

 それに壁は引っ掻いてみてもキズは付かない。プラスチックならともかく、爪程度で傷付く金属素材は無いだろうし、強化プラスチックとかでも傷は付けられまい。


 つまり手を出すとしたらこのタッチパネルみたいなものだけか。

 声で呼びかけてみても良いが、もしここが何か問題ある場所なら変に音立てるのもダメかもしれない……



 心配事は残るものの、意を決しタッチパネルみたいなものに右手を押し付ける!



 ………。


 ……あれ?


 押し付けて数十秒。電子音もそれっぽい光も何も無い。


 もしかして違ったのかな。手を押し付けるタイプじゃ無かったか?もしかして音声認識?


 そう思い、タッチパネルみたいなものから手を離そうとした時だった。


『システム再起動完了。掌紋認識。G型人類。特殊救護室ロック解除。スクリーンシャットダウン。マスター、お進みください』


 その音声がポッドではなくて目の前のタッチパネルから聞こえると同時にタッチパネルの右側がパシュッと音を立ててスライドして開く。さらに濃いブルーの壁も白へと変化し、部屋全体が明るくなる。


 なるほど、その権利譲渡されたAIがどうやらこの空間、さらにはその先も管理しているようだ。


 ……さて、進んでくれと言われたわけだけどその前に。

 マスターってなんだ?俺の事なのか?


 俺の手には三画の紋章とか無いしなんか呼び出せる訳でも無いぞ?


 また少し待ってみても、そのAIから何か言われるわけではなかった。どうやらここ、特殊救護室から外に出るしか無いようだ。

 もしかして俺、状況的になんかヤバイ?


 ……よし。


 色々ビビりながらも俺は開かれた扉から外へ一歩踏み出した。




 な、なんだここ。

 どう見たって病院じゃない。宇宙世紀とかで見たやつだ。

 いくつか並ぶさっきまで居た部屋の扉に似た扉とその横にあるタッチパネル。


 今いるのは廊下みたいな場所。基本的白色で、一番奥に俺の居た救護室があり、その廊下には片側三つくらい扉が並んでいる。


 これは進むしかないのか?仮にここが誰かの所有物だとしたら部屋を開けるのは不法侵入になる……


 さらに俺から見てこの廊下の奥はT字路になっているらしい。


 進んでみるか。


 ゆっくり歩いて進んでみると、扉は自動ドアみたいに開くわけじゃないようだ。確かにパカパカ開かれても困るけど。


 T字路には何も表記がない。


 どちらに曲がってもすぐに扉に当たる。


 さっきのAIとやらはこちらに指示してくれるのか?せめてどっちに曲がれば良いかくらいは教えて欲しい。


『…………』


 沈黙と。


 とっても静かだ。微かにウィーンって機械っぽい音が聞こえるような気もするけどその程度。


 でもその音が左から聞こえてくるような気がしている……右だな。


 そこ、天邪鬼とか言うなよ。これはリスク管理だ。そうリスク管理。音がしてるのは誰か居るかもしれない。静かな方が安全ってよく聞くしな。


 右に進んでまた一度角を曲がると見える扉に進み、前に立つ。他の扉のようにタッチパネルは無い。


 ふむ……これはどうする?


 パシュッ


 また圧縮空気か。というか勝手に開いたな。


 その先は……?


「oh……宇宙戦艦○マトの艦橋か……」


 いや、誇張した。あそこまで色々とある訳じゃない。けどそこには一般人どころか地球人類のほとんどが至近で、生で見たことないであろうものがあった。


「あれは、星……いや木星か?」


 ここまでやってきた警戒など全てを忘れ俺は目の前にある巨大な窓へと駆け寄る。


 外は真っ暗闇。ただ一つだけ巨大な物が浮かんでいる。

 昔、親と見学に行ったデカい望遠鏡。それで見た木星。それにそっくりなのだ。


 ここは……一体。


『おはようございます。マスター』


 外が見える窓に張り付いて、その光景に呆然としていた時だった。

 またあの声だ。マスターって俺の事なのか?


『現在時刻11:32。モニタリング結果問題なし』


 すぐに振り向く。

 どうやらモニタリングされていたようだ。

 俺は警戒しながらもその声に応答する。


「な、なあ。そのマスターってのは俺のことか?」

『はい。マスター・リュウジ=カラキ』


 リュウジ=カラキ……俺の名前か。なぜ知っている?


『私は本艦の総合制御AIアステールと申します。今後はマスターのサポートを務めることとなります』


 ???


 AIの名前がアステール。それは分かった。それに俺がそのマスターだと言うことも。細かく区切って話しているせいでどれがどの意味かわかっちまう。


「お前さんの策かは知らんが、単語単語の意味はわかったよ。まず一つ聞かせてくれ。本艦ってのはなんだ?」


『私が管理し、私を管理するマスターが今いるのは300メートル駆逐級宇宙船グウィバーの内部となります』


「駆逐級宇宙船?」


 その言葉が引っかかる。確かに外には星みたいなものが見える。リアルではあるが……まさか本物の星では無いだろう。


『マスターが運用する本艦の分類区分となります。駆逐級、軽巡級、重巡級、戦艦級、要塞級、主な区分としてはこの五つです』


「いやそっちじゃなくてだな。宇宙船ってのはどういうことなんだ?そもそも俺は日本の東京の病院に居たはずだ。なのに気がついたらよく分からんポッドの中に居た。コールドスリープとかも言われた。あれはなんだ?それにここには人は居ないのか?」


『宇宙船というのは言葉通りとなります。───質問します。マスターは自分のことをどれだけ覚えていますか?最後の記憶の年月日は覚えていますか?』


「こっちが質問してんだがな……」


 いや待てよ。マスターと言ってるあたり少なくともこのAIは俺に危害を加えるとは思えない。ここは従った方かいいのかもしれない。


「自分の名前は殼生龍二。年齢は25歳の東京の商社勤めで、デカい仕事の連続による過労で一時的に病院に送られた。最後の記憶は2040年の7月27日だ」


『ありがとうございます。ではマスターの質問にお答えします。まず一つ信じて頂きたいのはここは先に述べたように駆逐級宇宙船グウィバーの内部ということ。これを前提として進めますがよろしいですね?』


「……ああ」


 これは信じるしかあるまい。そうじゃなきゃ説明が進まないのだろう。


『まず現在の時刻を。暫定西暦換算で3117年11月12日11:39。続けて現在座標はアンドロメダ銀河クラル星系第4惑星軌道上となります。ここまではよろしいですか?』


「……ドッキリじゃないんだな?」


 信用出来ないな。

 警戒心を滲ませながら聞き返す。


『はい。現実です。次にマスターがなぜここに居るのか。その説明となります。まずマスターは7月28日以降の記憶が消去処理されています。理由は後述。そして7月29日付でマスターはコールドスリープ施術の対象となり、特事法第三項により同意を得ない強制施術が実行されました』


「つまり、俺は東京の病院に居て、そこでコールドスリープを受けたってことか?でも過労で?」


『はい。データにロックが掛けられており、詳細は不明。しかし施術の対象となり、先程までマスターが入っておられたポッドに麻酔により眠らされた状態でコールドスリープが開始されました』


「コールドスリープが何かはわかるが……それならなんで俺はこんな場所にいて、そんなに年月が経過しているんだ?」


『略年ですが、マスターがコールドスリープ施術を行われ、東京大地下深部に安置された状態で百年が経過しました。地球では資源枯渇における各国の緊張状態が極限に到達しました。またその緊張状態により世界大戦が開始されかけました』


「されかけた?」


『はい。かねてより計画されていた宇宙環境地球人口分散計画です。大規模移民船団にてコールドスリープを用いた地球型惑星を目指す計画です。その実行により、世界大戦は回避されました』


「なるほどな。で、なんで俺はここに?」


『計画実行より百年。加速を続けた移民船団は突如観測された小規模ブラックホールに飲み込まれました』


「は?」


 ブラックホールだと?そんなの……


『しかし、ブラックホールは当時解明されていないことも多く、どうなるかはわかりませんでした。結果として、移民船団は約半数が無事にブラックホールを脱出しました』


「それは……良かったと言うべきかご愁傷さまと言うべきか」


 俺は地球人類がブラックホールに飲み込まれて死んだと思っていた。半分とはいえ無事なことに安堵していたのだ。


『ブラックホールに飲み込まれていたのは艦内時間にて約一週間。ブラックホールより放出された地点では計測は不可能でした。しかし、現在地点のみは把握が可能でした』


「それがアンドロメダ銀河ってことか?」


『はい。しかし、人員は無事とはいえ艦は無事ではありませんでした。故に艦長は艦を守るため、艦の破壊に巻き込まれなかった一部のコールドスリープ状態の人員を専用の個人脱出艇に乗せ、射出したのです。コールドスリープ状態の維持にはエネルギーの消費がかなりありますので』


「射出……って要は宇宙に捨てたということか!?」


『はい。艦長はコールドスリープ維持のエネルギーを艦の維持に使用することに決定しました。しかし、そのコールドスリープ状態の人員の射出が半分をすぎた頃、艦は爆発したと記録しています。その後、私は最低限の機能を残したシャットダウン状態となり、マスターのポッドに格納されていたのです。その後、数百年以上、射出時速度に加え、脱出艇そのものの加速により、宇宙空間の漂流を続け、現在の星系に到達し、偶然軌道に乗ることに成功。恒星光発電を用い、私の再起動を実施。本艦の構築を行いました』


「なーるほどな……なんか、苦労したみたいなだな。ありがとう」


『いえ。しかしマスターが無事でなによりです』


「おう。で、次だ。そもそもなんであんたは俺のポッドに?それにこの船はなんだ?どこから持ってきた?」


『まず、私が何故マスターのポッドに格納されていたかですが、不明です。記録そのものが消去され、復元も不可です。これは先程のロックデータに詳細がバックアップされていますが、解除は不能。

次に本艦は私が構築したものとなります。各ポッド及び脱出艇には移民船団内部で開発された特殊マテリアルが格納されています。本来、その特殊マテリアルは宇宙空間での緊急脱出用の一時的生命維持装置が構築出来る量のみなのですが、マスターのポッドの場合船一隻を構築出来る量が格納されていました。先にお答えしますと、私の存在同様、このポッドに格納されていた理由は不明、また記録の復元も不可となっています。

──再起動した私はそれを用い、脱出艇をべースに本艦を構築し、マスターがお目覚めになるまでの数百年を延命措置という形で運用しました』


「つまりこの船を作って俺がここまで生きられるようにしてくれていたのか」


『はい。本来、何の設備にも繋がないコールドスリープポッドの耐用年数及び内部の生命維持期間は多く見積もって三年とされています』


「そうか……本当にありがとう」


 俺は素直に声が聞こえる方に頭を下げる。


『構築した本艦グウィバーは設計やプログラム等マスターの記憶処理の際のデータを用いました。マスターならば心当たりがあるのではないでしょうか』


「ああ。ずっと気になっていた。えーっと、アステールでいいのかな?」


『はいマスター。何が御要望で?』


「この船の全体像を見たい。出せるだろう?」


『はい。……ホログラムにて表示』


 アステールの声により、俺が今いる部屋の中央、今気づいたが天井にプロジェクターみたいなのがあって、部屋の中央にホログラムが表示される。



 グウィバーと名付けられた宇宙船の全体像だ。

 葉巻が横に二列並んだような見た目、後部には葉巻の直径より少しだけ径が小さくなっている大型のスラスターエンジンが二基、それぞれのエンジンの上下にサブエンジンが一基ずつの計四基。

 前方には戦闘機のカナード翼のように右か左に一つずつ、翼に対して垂直になるように三角形の翼が。二列並んだ葉巻の真ん中辺りに跨るようにあるのが俺が今いる艦橋になるのだろう。そこを挟んで葉巻の前側にかつての戦艦なんかに付けられていた二連装砲台が二基ずつ。同じく後ろ側にも同じ砲台が一基ずつ。

 前方下部には列車のレールを二本組み合わせたような砲身が葉巻一つにつき一基ずつ。

 それぞれの葉巻は前から見ると潜水艦のようにも見える。側面に発射管が付けられているからだな。


 ああ……かつて俺が夢見たまんまだった。まあ所詮、「ぼくのかんがえたさいきょうのうちゅうせん」となっている。恥ずかしながら俺が高校卒業の時に知り合いを巻き込んで3Dモデリングして形を作り上げた戦艦グウィバーそのままだった。


「なあアステール。本当に俺の記憶から参照してこれを作り上げたのか?」


『はい。武装等含め、現行技術で可能とされるものの再現に過ぎませんが、実用可能なスペックとなっています』


「ははっ……なあアステール。俺って遠いとこ来ちゃったんだな。コールドスリープされてて、いつの間にか宇宙の旅始まってて、こうして自分がかつて空想した宇宙船が現実に現れて。どうしたらいいのか教えてくれないか?」


 色々あった。ありすぎだ。なんか疲れてしまったのだ。

 俺はその場に座り込み懇願するように問いかける。


 改めて窓の外を見ると、目の前の星以外にも色々と目に入ってくる。

 中心の恒星の光で照らされた小惑星群、プラネタリウムよりも壮大な様々な色の星が見える暗闇、遠くに虹色に見えるのは星雲とやらだろうか?


『マスター。私はマスターに同情することは出来ません。しかし、導くことは出来ます。それも限度がありますが』


「じゃあ可能な限り教えてくれ。まず何をすれば?」


『分かりました。ならば……』


「ならば?」


 俺は立ち上がり、壮大な宇宙空間が見える窓をバックにアステールの返答を待つ。


『ではまず最初に、服を着ましょう。風邪をひきます』


「あ、はい」


 訳分からん壮大すぎる話のせいで忘れてたけどそういえば俺全裸だったわ。言われてみれば肌寒い。マイブラザーも元気を失っている。


『マスターが歩いてきた道を戻り、右手の部屋の一つ目がマスターの部屋となっています。最低限のものしか構築出来ませんでしたが』


「構わないさ。とりあえず着替えてくるよ」


 そう答え、俺はさっき通り過ぎた部屋へと向かうのだった。





「よし、アステール。俺は何をしたらいい?」


 俺はちゃんとパンツから上着まで着た状態でさっきの艦橋に戻ってきていた。

 服装は何故かパンツァーヤッケにトレンチコート。ネクタイまで含めてどれも黒。なんとビックリスーパー厨二スタイル!仕事でもこんなの着たことないし着たくねえ。


 よくわからないかなりしっかりした素材だし、これしかないから贅沢は言わないけど。


『はい。私が現在有する情報の全ては約250年前の所属不明の全帯域通信による無差別発信によって得られたものです。どうやら、この星系からさほど離れていない地点でマスターと同じ人類とはまた別の人型範疇生物が存在し、コロニーを構築し生活を営んでいます』


「なるほどね。ところでそれは俺のG型人類とかと関係あるのか?」


『はい。G型人類とは先程の人型範疇生物の呼称となります。ほぼ不老に近い肉体となる代償として子が産まれにくくなると』


「なるほどな。俺はそのG型人類になったと。つまりその地球以外の人型範疇生物……めんどくさいから人類って言うけど、その人類と接触しても何か起こるわけじゃないんだな?」


『はい。構築の結果肉体の怪我などと言った物は消失、治癒能力もある程度向上しました。最たるは寿命ですが、肉体の細胞の活動期間が著しく伸び、さらに細胞分裂の制限などもほぼありません。病気や外傷などで死亡こそしますが、寿命という概念は消えたと言っていいでしょう。しかし、正確な数値は把握出来ていません』


「俺はスーパーマンになっちまったみたいだな……そんな技術どこで?また移民船団か?」


『いいえ。先の通信と同じ通信より得た技術となります。その通信は技術的情報も無差別に発信しましたから。再起動したばかりの私も受信し、解析をしましたが時間が掛かり、構築した船体のアップデートを含めてマスターの解凍までにかなりの時間を有してしまいました。』


「そうか。ふむ……アステール、もう一度聞くがこれはグウィバーなんだよな?寸分違わず」


『はい』


「だったら……」


 俺はその艦橋の中央の席、さっき俺が初めてこの部屋に入った時に窓にへばりついた場所にあるところに座る。


 計器の位置や、ボタン、様々な場所を確認していく。

 高校卒業から大学生にかけての頃、知り合いや伝手を使って二年がかりでコンピュータ上に構築した戦艦。内装まで設定を含め当然作り上げ、俺がその配置をしたのだから当然覚えている……というか、知らないはずの知識まであるような?


「まあ今は良いか。よし……起動コード『王の剣卓キャメロット』」


『起動コード承認。二重粒子加速変換エンジン〈UROBOROS〉出力開始』


 アステールとは違う電子音声が響き、起動したであろうエンジンが微かに振動を伝えてくる。二重粒子加速エンジンってのは知らないが、例の通信でアップデートされたのだろう。


『マスター。現状、本艦は構築されてより数百年経過しています。しかしエンジンシステム、武装システムなどは通常よりも出力がかなり低下していると判断します』


「経年劣化か?」


『いいえ。エンジン起動によりエネルギーの伝達が開始されましたが、兵器通常出力に至るまではエンジン出力が上がりきっていません』


「なるほどな。どれくらい掛かる?」


『約24時間と推測。本来このエンジンは起動し続ける物なのです』


「まあそうだろうな。なんかデカいエンジンは切らずにそのままって聞くし」


 俺は計器を弄ったりして細かく見ていく。


「アステール、コロニーの座標を表示してくれないか?」


『了解』


 目の前のモニターにどの方角に向かえばいいのかが表示される。が、俺はその意味がわかるのだ。なぜだ?というか、この目の前の計器のデザインとかしたのは俺だけど扱えるわけじゃない。


「アステール、俺はこの計器の見方とか操作方法は分からないはずなんだ。なのにわかる。理由って何かわかるか?」


『はい。マスターのコールドスリープの際、定期的に記憶情報の更新が行われていました。その際に、既に本艦は構築済みの為、移民船団所有の操艦データをインプット致しました。これにより、操艦知識が存在しているのです』


「だからどれがどれってわかるのか……そういえば、アステール。なんでさっき正確な年月日を答えられたんだ?」


『先の無差別通信のログを参照し、発信時の日付、宇宙空間での通信による速度、わたしが受信した際の受信までの差を計算し、コロニーの座標含め求めました。しかし、正確性は不明です』


 なるほど。まあ確かに暦と言ってもブラックホールのせいでズレちゃってるんならなあ。そもそも千年かも怪しいし。


「じゃあ当面の目標はこの船のスペックなんかの再確認と食料とかの物資の確認。エンジン安定後はコロニーを目指すってことで」


『了解。……マスター、本艦に接近する物体が存在します』


「は?避けるって言っても今は無理だぞ?」


『はい。……カメラで確認。モニターに表示します』


 アステールによって天井近くのメインモニターへ表示されたそれは……


「これは……ポッドか!?」


 とてもボロボロではあったが、まるで俺が入っていたコールドスリープポッドにそっくりなものであった。




★★★★★★★★★



 最初からほぼ説明ばっかりでごめんなさい!次から早速戦闘あるんでよろしく!


次の更新は1時間後に!!

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