エランの武器

『コ~ン』


 また来ちゃった。来てしまったからには聞いときたいことがある。


「前回の時の『神戸の真相』ですけど・・・」

「あれ? コトリがやった」


 それって『愛と悲しみの女神』で次座の女神が反乱鎮圧のために使った集団金縛り。あれって本当だったんだ。そういえば映像にあった若い女性が誰かは不明になってたけど、立花前副社長だったことになる。


「目に見える範囲なら出来るよ」


 う~ん、宇宙人にも通用するんだ。スゲエな。


「じゃあ、また神戸に来たら同じように」

「タイミングによるけど難しいな」


 前回の時はユッキーさんのところに着陸予告の連絡があったんだって。だからコトリさんは予め空港で待っていて、宇宙船が着陸した時に単身で船内まで乗り込んで行ったで良さそう。


 今回も同じようなシチュエーションなら可能かもしれないと言ってたけど、友好使節を装われるとお手上げだって。


「そうなったら警察や自衛隊がビッシリと空港の警備に当たっちゃうよ。そこを突破するには警備員全員を金縛りにしたらイイようなものだけど、そんな事したら後が大変」


 第一次宇宙船騒動の時は警察だけだったそうだけど、それこそ全国から駆り集められて、何千人って規模だったらしい。そこをタダの民間人が通り抜けようとても無理だし、それでもとなると大騒動になるのはアカネにもわかる。それにしても次座の女神の力ってそこまで出来るんだ。



 武器の方も聞いてみた。前回の時の宇宙船は無傷で政府が手に入れて、空港北側に移動させ、宇宙船全体を覆うような施設が作られて調査研究が続けられてるそうなんだ。


 つうか、全然知らなかった。空港の北側にやたらと細長い建物があるのは知ってたけど、あれが宇宙船研究施設だったとはビックリした。とにかくやたらと警備が厳重で、見学どころか近づくこともできなかったからね。


 その調査研究だけど、とにかく難航してるみたい。地球文明のものと似てるところもあるそうだけど、進歩の度合いが万年単位で違うから、遅々として進んでないみたい。だから一部は民間に研究が委託され、その中にエレギオン・グループの科技研も入ってるって。その関係で、ある程度情報が入手できるみたいだけど、


「前回の時のエラン側の武器は貧弱だったそうですが」

「見た目はね。携帯兵器だけだったからね」


 ユッキーさんもすべてを知ってる訳ではないって言ってるけど、そこはそれCIA並の調査力があると言われてるエレギオンHDだからかなりの精度で知ってた。エラン人が持っていたのは銃というかライフルみたいな形だったらしいけど。


「そうね、イメージとして思い浮かべてもらうなら、光線銃と言うかレーザー銃みたいな感じかな」


 さすがはエラン、鉛玉じゃないんだ。


「ただね、動いたのは一丁だけだったの」


 そんなに故障していたのかと思ったけど、そうじゃなくて安全装置が掛かっていて動かなかったんだって。でもって、現在でもその安全装置の外し方はわかんないそう。動いたのは安全装置が故障していたか、なんらかの理由で外れたままのがあったらしい。


「自衛隊で威力をテストしてるのだけど、かなりどころでないぐらい強力よ」


 武器のイメージはやっぱりレーザー銃みたいなもので良さそう。使い方は撃ち抜くのもありそうだけど、横薙ぎも可能だとしてた。


「横薙ぎすると、そうねぇ、クレイエール・ビルぐらいなら、スパッと切れちゃうぐらいよ」


 ひぇぇぇ、こりゃ怪獣並だ。


「出力は調製出来るみたいだけど、最大出力にすると神戸空港から関西空港まで余裕って話だわ。仮に水平射撃すれば、神戸市内のビルを全部貫通して、六甲山も貫く可能性があるって」


 なんちゅう、こりゃ怪獣以上だ。


「照準はよくわからない部分が多いのだけど、銃単独でも高性能なんてものじゃない上に、宇宙船のレーダーとも連動できるで良いようよ。ジェット戦闘機でも余裕で撃墜出来るんじゃないかとなってた」


 それじゃ、その銃一丁で地球上のすべての兵器に対抗できるとか。


「エネルギー源はカートリッジ式になっていて、簡単に交換できるし、カートリッジもたくさん船内にあったみたい。さらにエネルギー・チャージも可能みたい」


 そんな兵器が百丁も二百丁も出てきたら、


「自衛隊の戦車の装甲でもバターのように切り裂かれたみたいなの。とにかく強力だし、射程は長いし、照準は正確無比だし、もし侵略されたら、地球の兵器で対抗するのは容易じゃないみたいよ」


 だろうな。そんなバカ強力な武器相手じゃ、なにかを盾にしての銃撃戦をやったら全滅するものね。だって相手は遮蔽物に隠れて撃てるけど、こっちはコンクリートの壁でさえ撃ち抜かれ、切り裂かれるんじゃ勝負にならないじゃん。


 戦車や装甲車を繰り出しても同じ。なにしろテストでは、五キロ離れたところからでも装甲を切り裂けるって言うし、主砲どころか、機関銃の銃口に余裕で撃ちこめたって言うから驚異的なんてものじゃない。


「自衛隊の研究員の人と話をしたこともあるのだけど、おそらく対レーダー技術も優れているはずとしてたわ。現在の兵器はレーダーとかからの誘導兵器が多いけど、余裕で麻痺させたり、コントロール出来るだろうって。地球の技術じゃ防ぎようがないぐらいかな」

「じゃあ、地球は勝てない」


 ここでコトリさんが、


「アラは必勝の作戦を授けてくれたわ。エランの武器は携帯用でも強力だけど、持久戦をやれば勝てるって。エネルギーが尽きれば武器は使えなくなり、エラン人だって鉛玉に当たれば死ぬからね」

「どれぐらい持久戦をやれば」

「三年ぐらい頑張れば必ず勝つだろうって。ただしそのためには、空港に釘付けにしないといけないから、もしやってたら神戸は瓦礫の山に変わってたと思うわ」


 コトリさんは次座の女神モードになると、口調が変わるんだよね。それは置いといて、


「だからあの時に乗り込んだ」

「瓦礫の山の神戸は見たくないし」


 下手すりゃ、アカネも生まれてなかったかも。再びユッキーさんが、


「自衛隊もあれこれ研究したけど、勝つなら一斉攻撃によるロケット攻撃しかないだろうって」


 ロケットもミサイルも似たような兵器と思ってたけど、ロケットは誘導装置がなくて、ミサイルは誘導装置があるんだって。おそらく誘導装置は通用しないだろうから、遠距離からのロケット弾を浴びせかける作戦なら通用するんじゃないかって。


「ただね、あの宇宙船には戦車こそ乗ってなかったけど、ある種の移動式の対空砲みたいなものはあったそうなのよ。これもロックが掛かっていて動かないんだけど、ロケット弾の一斉攻撃でも全部撃ち落としてしまう可能性はあるとしてた」


 こりゃ、ガチの侵略作戦だったかもしれない。たったそれだけの武器と人数で、地球側は戦力を総動員しないと勝てそうにないよね。う~ん、大昔の映画で自衛隊が戦国時代にタイムスリップして合戦に巻き込まれるってあったけど、そんな感じがする。


「もしまた神戸に来て戦争になったら」

「もちろん逃げるわよ。女神だって生身の人間だから、当たれば死ぬし」


 もちろんアカネも逃げる。


「そうだ、着陸前に戦闘機で撃ち落とす作戦は?」

「まずミサイルは当たらない可能性があるわ。戦闘機の照準も無効にされそうだし、戦闘機と言ってもコンピューター制御の塊のようなものだから、近づいただけで墜落させられる可能性だってあるもの」


 なるほど。


「それより何より、仮にも友好使節を名乗られたら攻撃なんか出来ないよ」


 これもわかる。それにしてもだ、こういう情報って軍事機密なんてものじゃないはずだけど、よく集めたもんだ。


「これぐらいは集められないと、今時の会社経営なんて出来ないよ」


 この辺の情報戦争の実態は物凄くて、ハッキングのためには情報セキュリティ会社ごと買収するなんてのも、ありふれた手法らしい。情報戦争のことはアカネにはあんまり興味がないけど、アカネがこの夜に理解したのは、


「戦争になったら、宇宙船一隻でもヤバイ」


 こりゃ、どの国も大騒ぎになるはずだ。

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