第24話 和真の仮説
俺といのりは今日の学校は結局そのままサボってしまった。学校では昼休みに入ったであろうタイミングで瑠川さんと和真の2人にいのりはもう大丈夫であることと、話があるから今日の放課後に話があるから集まれないかとLINEを送ったところ2人ともすぐに既読が着き了解の旨の返事をしてくれた。
放課後になると学校から離れた喫茶店にて合流する。学校から近いと学校帰りの生徒と出くわす恐れがあったためだ。それから軽くお互いに今日あったことを話す。いのりが人殺しなんかでは無いけど事故で人が亡くなったというのは事実であると伝えると瑠川さんと和真はそんなの言いがかりだと怒ってくれていた。それを聞いていのりは俺の横でまた泣いていたが悲しさからでは無く嬉し涙であることはこの場にいる全員が理解していた。
「ということで、今回の首謀者にどうにかしてやり返してやりたいんだけど.......その前に今日の朝は本当に助かった。ありがとう」
「うん。私からも本当にありがとうね」
「友達なら当然のことをしたまでだよ!」
「おいおい蒼空。お前がそんなにかしこまられると何だか気味悪いからやめてくれよ」
このお礼は今日の朝、黒板に書かれていた文字を2人が先生が来る前に消してくれていたおかげで大きな問題にはならなかったみたいだ。2人が言うには最終的には2人以外にも何人かの生徒が協力してくれてみたいだからその人達にも感謝しないとな.......。
「それでなんだが.......今回の首謀者は恐らくというか間違いなく柚希だ」
「まぁ、普通に考えて宮崎さん以外にいないよね.......」
「うん。だけど困ったことに全く証拠がない」
噂を流した張本人くらいなら噂の出処まで芋づる式にやっていけば辿り着けるかもしれないけど、今日の朝の件と同一の犯人に繋がる訳では無い。それに噂くらいならイタズラでやったで済まされてしまう。
「それならいっその事、今日の朝にあったことを先生に暴露するってのはダメなのか?」
「したところで誰がしたかなんていう証拠が無いから最終的にはあやふやのまま無かったことになると思う。それでも大問題にはなるだろうから俺達も動きにくくなるからな」
「なるほどな.......。けど、それだと俺達も何にもできなくないか?」
「そうだな」
「いや、そうだなって.......」
「どうしたらいいか分からないからこうやって話し合ってるんだろ?」
実際問題として本当に証拠がないのだ。証拠が無い以上は何を言ったとしても知らないの一点張りで終わらされてしまう。そうなってしまっては詰みだ。それでも、逆に言ってしまえば証拠さえあればあとはどうとでもできるとということだ。
「う~ん.......何を持って証拠とするかだよね」
「都合良く黒板にあれを書いた人を見ていた人とかいてくれれば簡単なのにな」
「ていうか、あれっていつ書いたんだろ?」
「ん? それなら昨日の夜しか無いだろ」
「そりゃあそうなんだろうけどさ出来るの?」
「それくらいなら簡単だろ。やろうと思えば俺でもできると思うぞ?」
「夕凪くんでも?」
「うん。学校から誰もいなくなるまで教室で隠れとけばいいだけなんだし」
俺ならまず間違いなくそうするし1番それが簡単な方法だ。その方法というのは、まず学校から誰もいなくなるまで教室のどこかに隠れておく。掃除ロッカーの裏でも良いし、月明かりが当たって影ができないようなところならカーテンの裏でもいい。夜中に校内を巡回して誰かいないか確認する先生もいるけど全ての教室の中まで入って確認はしないだろうから隠れてさえいれば基本的にバレることは無い。そのまま学校から誰もいなくなるまで待ったあとは黒板に文字を書く作業に入って書き終えたらそのまま教室から出ていけばいい。俺の通っている高校の教室は全て中から扉の解錠が出来るからそれは簡単だ。それからはどこかの窓を開けてそこから校内を出てからタイミングを見計らって学校を囲う柵をよじ登るなり校門をよじ登るなりして出て行くだけでおしまいだ。
「なるほどね.......確かにそれなら私にもできそうだよ!」
「.......するなよ?」
「しないよ! 私をなんだと思ってんの!」
「いやまぁ、一応?」
「もうそんなことばかり言ってるから.......」
「言ってるから?」
「ねぇ、そもそもの話なんだけどさ夕凪くんは宮崎さんに何したの? なんでそんなに恨まれてるの?」
「あっ、確かに。蒼空は一体何したの?」
「.......わからん」
本当に心当たりが無いんだよなぁそれが。そもそも何で俺はフラれたのかさえ知らないし。俺という人が嫌いになったとかそんな理由でここまでするだろうか? 人間なんだから人を嫌うことも1度や2度では無いだろう。その度にこんなことしていたら学校なんて施設は世の中から消え去っているのでは無いだろうか? けど今更なんで浮気したのかなんて聞けるわけもないし.......。
「なぁ、蒼空。宮崎さんが本当に恨んでいるのはお前なのか?」
「は? 何言ってんだ和真?」
「これはあくまで俺の仮説なんだけどさ、本当に恨まれているのって蒼空じゃなくて涼風さんだったんじゃないか?」
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