20話 行事前の夜って胸がドキドキするよね

「海…ですか?」

詩歌さんからの提案に僕は首を捻る。

「そうそう、海っ♪雷くんも行きたいでしょ?」

そりゃぁ行きたいよ。みんなの水着姿見たいし。

「だからさ?明日みんなで行かない?馬車代は私達が払うし。」

「いや、お金は自分たちの分は僕が払います。て言うか海って何処にあるんですか?」

長いことここには住んでいるが、実際に海には行ったことが無いので良くは知らなかった。

「実はね?南の都市の住宅区に海の近くのキャンプ場があるんだよ」

キャンプか…良いな、めっちゃやりたい。

「だからさ?一緒に行かない?」

「考えておきます。」

「決まったらすぐ教えてねっ!」

そのまま詩歌さんは手を振って去っていった。

僕も家に戻り、3人にキャンプに誘われた話をする。

「私みんなでキャンプ行きたいっ!」

「僕も行きたいです」

「私もおにぃ達と行きたいです」

結果は全員賛成。僕はそれをすぐに詩歌さんに伝えに行く。

「キャンプ、みんな行きたいらしいです」

「ほんと?やったー!細かい日時は後で教えるねっ!」

「分かりました、ではまた後で。」

僕はそのまま家に帰る。

家では3人がキャンプがかなり楽しみなのかソワソワしていた。まだいつ行くかすら決まって無いのに…

時刻はそろそろお昼、僕のお腹がぐぅーと鳴ったのでお昼ご飯を食べる事にした。久しぶりに焼きそばを作ろう。もちろん4人分。

フライパンに焼きそばを入れ、水をかけるとじゅーじゅーと音がして麺がほぐれていく、それにソースをかけるとあっという間に焼きそばの完成だっ!

完成した焼きそばをお皿に盛りそわそわしてる4人に箸と一緒に渡す。美味しそうに食べてくれて嬉しかった。


ご飯を食べ終わり、今の時刻は2時くらい。突然コンコンと玄関を叩かれる。来る人は予想出来ていたので無言でドアを開ける。

「日にち決まったよ〜」

「いつですか?」

「明後日!朝早いから早起きしてね」

「分かりました、伝えておきます」

詩歌さんは

「じゃあねぇ〜」

と来た道を帰って行った。明後日か、明日は買い物に行かなきゃな。

その事を3人に伝えると、みんな喜んでいた。めっちゃ楽しみだって言っている。

実は僕もかなり楽しみでソワソワするのを我慢しているのは内緒だ。


#

次の日、僕達は街へ買い物に来ていた。明日行くキャンプのためのお買い物だ。探してるものは3つ。水着と食べ物、そしてテントだ。さすがにテントまで借りる訳には行かないので、これだけは自分たちで買うと詩歌さん達に言ってある。

まず最初に買うのは水着、1番時間がかかりそうだからだ。前に繭と二人で来た水着屋さんに来た。僕は茶眩と、緋莉は繭と一緒に水着を見ていた。

「これ良くないですか?」

「いや、茶眩。そんなピチピチのやつ履いてどうする気だ?」

「そりゃあ泳ぐんですよ、海に行くんですよ?泳ぐしかないじゃないですか。」

「そうか…僕はあんまり泳げないし恥ずかしいから別のにするよ」

「そうですか、残念ですが仕方ないですよね。」

ほんとに残念そうにしている茶眩を見るとちょっと胸が傷んだが、さすがに競泳用水着見たいなやつは恥ずかしい。

結局僕は普通のシンプルな水着、茶眩もピチピチの奴ではなく、普通のシンプルなやつにしていた。水着をレジで購入し、繭達と合流する。予想通りまだ水着を選んでる途中だった。

「この5個に絞って試着して決める」

そう言って緋莉は試着室へ向かう、僕達もそれについて行った。


緋莉が試着室に入って数分、シャーっとカーテンが開く。中にはフリフリの付いた水着を着た緋莉が立っていた。恥ずかしがらずに逆に堂々と胸を張っているような感じでたっている。そのせいで胸が強調されているのは言うまでも無いだろう。

「どう?私の水着は。可愛いでしょ」

「可愛いと思うよ」

「んにゃっ!? そう…可愛い…か。えへへ…。」

茶眩が褒めた瞬間に滅茶苦茶顔を赤くして照れている。さっきの態度はなんだったのだろうか。ちらりと繭の方を見てみると、ニヤニヤと笑っていたのでなにか知ってるのだろうか、後で聞いてみることにする。

その後も持っていた残りの水着4つを着て、僕達に見せては茶眩に褒められ照れていた。最終的に最初に着た奴を気に入って買っていた。


水着屋さんを出て、残りの食べ物とテントを買いに行く、とその前にお昼ご飯を食べに行った。今日はラーメンだ。みんな好きだよね、ラーメン。

4人全員醤油ラーメンを頼む(緋莉は大盛り)。少し待つとテーブルにラーメンが運ばれてくる。

美味しかった…けど滅茶苦茶っていうレベルではなかった。普通のラーメンって感じ、わざわざ次来るかって言われたら怪しくなる感じ。

ご馳走様でした。と店を出て食べ物を買いに行く。食べ物って言っても結局はお菓子だ。適当にお店に入ってマシュマロとクッキーを何種類か買う。キャンプと言ったら焼きマシュマロだよね、僕はした事ないけど。


最後はテントだ。丁度僕達はアウトドア関係の用品が置いてある店に来ている。結構大きいテント(5人用)を買うか小さいのを2つ買うかで迷っていた。

「大っきい奴1つでいいんじゃないですか?」

「私もそう思います。おにぃとおねぇと一緒に寝たいです。」

「でも男女で別れた方がいいんじゃない?私はどっちでも良いけど。」

「でもこの4人なら大丈夫だよな、一応家族だし」

「ですよね!流石おにぃ!」

「そうかな…?まぁ雷がそう言うなら良いよ」

大きいのを買うのに決定した。流石に家族に手は出す気無いから大丈夫だろう。そう願う。

それを購入して家に帰る事にした。


#

「結構大きいですねこれ」

家の庭でとりあえずテントを立ててみた。僕の家の寝室位のを大きさしてる。すっごく大きい。中に入って寝っ転がってみると、床がもふもふして気持ちが良い。このまま寝れそうだ。


テントを片付け夜ご飯を食べる。いつもより早いけど、明日起きるのも早いから仕方がない。

「久しぶりに一緒にお風呂入る?緋莉ちゃん」

「ほんと?おねぇ。入りたい!」

「じゃあ先にお風呂行ってるね」

「分かりました!」

仲良さそうだ。

「僕達も一緒に入る?」

「いいんじゃないですか?お兄さん。裸の付き合いってやつです」

僕達も一緒に入る事になった。お風呂からは楽しそうな声が聞こえてくる。

「お兄さん、僕たちもあんな感じに…」

「それは流石にしないよ?」

「あははっ、冗談ですよ」

ちょっと怖い冗談だ。両性的な顔と体つきの茶眩と一緒にお風呂入るだけでちょっとドキドキするって言うのに…。と、その時

「上がったよ〜」

髪を濡らした2人が浴室から出てきた。

「じゃあ僕達も入ろっか」

「そうですね!」

茶眩にそう言ってお風呂に向かう。勿論お風呂では何もなかったよ。


#

「そろそろ寝よっか」

何時もより早い時間だが明日のために寝る事にした。お隣さんとのキャンプなんて人生で経験する人ほんの少しぐらいしかいないんじゃないだろうか。そんな体験が出来るのはちょっと嬉しい。

「じゃあおやすみっ」

みんなにそう言って僕は目を瞑る。

「おやすみ〜」

と返事が返ってきて部屋が暗くなるのが分かった。明日が楽しみで胸がドキドキしてきた。旅行前とかになるやつだ。

結局僕はドキドキが止まらず何時もより遅くまで寝れずにいた。ほかの4人が僕と同じで寝れずにいるのかはどうかは分からないが、服と布団が擦れる音が多かったのだけは覚えている。

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