10話 風邪を引くとメッチャ辛い。

みんなで夜空を見上げた次の日…

僕と茶眩は風邪をひいた、超つらい。

今は仲良く2人で布団に横になっている、おでこには冷えピタが貼ってあってつめたい。

「夜空見すぎましたね。」

ちょっと笑ったような声で茶眩が言う。

「そうだね、2時ぐらいまで見てたもんね。」

結局昨日はそのまま寝落ちをするまで夜空を見ていた。目を開けたら玄関の前で寒いし頭痛いしで大変だった。まぁ今はだいぶ楽になっている。

寝ているだけだと暇なのでリビングに行こうと立ち上がると、運悪く繭が部屋に入ってきた。立ち上がる僕を見て

「病人は寝てて!」

と無理矢理寝かせてくる。寝るのにはもう疲れたくらいだ。せめて少し歩きたかったので、トイレに行くと言って寝室から出た。

「結構辛いな…」

トイレへの道を歩きながら呟く。寝ている時と違って歩いていると辛かった。1歩歩く事に頭はズキズキと痛むし足元も結構フラフラしている。

やっとの思いでトイレに着き、便座に座る。座れば少しは楽になるかと思ったが、まだ少し頭が痛むので、急いで用を足し寝室へ戻ることにした。

寝室へ戻る途中が1番辛かった、少しの距離が果てしなく遠く感じる。ふらつく自分との戦いの末寝室に辿り着き、倒れるように布団に入る。

「お疲れ様です。」

少し笑ったように茶眩が言う。

「ほんとに疲れたよ」

笑い事ではないが、僕も笑って返す。まぁ笑えることではないんだけど。そのまま少し笑っていると、

「僕もトイレ行って来ますね。」

と茶眩が言う。

「頑張ってね。」

と笑顔で僕は地獄へ向かう茶眩を見送った。

数分後―――

トイレを終え、寝室へ戻る前に力尽きた茶眩が廊下に横たわっていた。

「助けてくださぁい!」

弱々しい茶眩の叫びが廊下に木霊こだまする。

「そんな事言われてもなぁ…」

倒れた茶眩の横で僕が呟く。何度か寝室まで引っ張ろうとしたが、力を入れると頭が痛む。

「引っ張るぞ茶眩。」

そう言ってまた引っ張ると、一際大きな痛みが頭を襲った。その痛みに耐えきれず膝から崩れ落ちる。

「このまま死ぬのかな…?」

そんな冗談めいた事を言うが今にでも現実になりそうだった。廊下には涼しい風が吹いている、普段なら快適なそれは今では地獄の風だ。更に死を意識し過ぎたのか、意識が薄れていく感覚がする。

「本当にやばいかも」

そう呟いた瞬間、何者かに抱き抱えられた。暖かくて柔らかい感触が全身を包み込んでいる。

「だから寝ててって言ったよね?」

少し怒ったような口調で繭が言っているのが聞こえた。よく見ると、僕は繭に、茶眩は緋莉に抱き抱えられていた。

「おんぶして連れてくから捕まって。」

そう言ってしゃがむ繭と緋莉。手を伸ばし肩を掴むと、

「行くよ!」

と言って立ち上がった。僕が落ちないよう慌てて何かを掴もうとすると、

むにゅっ

と一際柔らかいものを掴んだ。餅の様な感触がする。

むにゅっもにゅっ

何度か揉んでみると少し楽しくなってきた。何故だか落ち着く。そんな風に揉んでいると、

「何してるの…」

と繭に聞かれる。その声は震えていた。

横を見ると茶眩が苦笑いしながら、

「胸揉むのは大胆っすね。」

と言っていた。そこで僕は初めて繭の胸を揉んでいたことを自覚する。サーっと寒気を感じ慌てて謝る。

「ごめん!わざとじゃないんだよ。」

ただの言い訳になってしまったが、

「まぁわざとじゃないなら…」

と許してくれた。

「少し嬉しかったし…」

その後も何かを言っていたが小さくて聞き取れなかった。

「なに?」

と質問をするが、

「なんも言ってない!寝室戻るよ!」

と怒られてしまった。

そのままおぶられて寝室へ向かい、僕は繭に無理矢理寝かせられた。


#

「恥ずかしかった…」

雷を寝室に運んだ後私はそう呟く、

「そんなに強調した胸が悪いんですよ。」

横でそれを聞いてた緋莉が言う、その声は少し羨ましそうな声をしていた。

「そんなつもりは無いんだけどなぁ…」

悪気は全くなくそんな事を言うと、緋莉は怒ったように

「私なんてこんなんですよ!壁ですよ!」

と自分の胸を叩いて言っている。更に、

「それに比べて繭お姉ちゃんはっ!」

と言って私の胸を揉んできた。

むにゅっ。むにゅっ。

「ちょっと…やめてっ。」

変な声が出てしまい恥ずかしい。

むにゅっ。もにゅっ。

そんな私の事を無視して緋莉は私の胸を揉んでいる。

「そろそろっ…やめてっ!」

私が押し退けると、緋莉がバランスを崩して倒れた。

「きゃっ。」

倒れた位置が悪く、私が押し倒した様になってしまっていた。更に私の右手は緋莉の胸を掴んでいた。

もみっ。

見た目は小さいが、しっかりと柔らかい。さっきまでの仕返しとして、何度か手を動かす。

もみっ。もみっ。

すると、

「んっ!」

と可愛らしい声が聞こえた。声の主、緋莉を見てみると恥ずかしそうに手で顔を覆い隠していた。その隙間から見える顔は真っ赤になっていた。

「恥ずかしいです…」

と、とっても小さな声で言う緋莉。それが可愛くて、また私は手を動かす。

もみっ。もみっ。

私が手を動かすと同時に、

「んっ…、あっ…。」

と声が聞こえてくる。本人は声を出さないようにしているのだろうが漏れ漏れだ。

「そろそろっ…やめっ…ください。」

流石にそろそろ怒られそうなので、手を止める。

そして―――

思いっきり胸を揉んだ。

むにゅっ!

思いっきり揉まれた緋莉はと言うと、

「んあっ!」

と声を上げていた。そして真っ赤になった顔でこちらを睨みつけ、

「もう繭お姉ちゃんなんてしらない!」

と言ってリビングを去っていった。後悔はあんまりしてない。


#

風邪になると眠くなくても眠れるんだな。

そんな事を考えながら目を覚ます。寝たおかげか頭痛は引いて楽になっていた。熱を測ろうとリビングへ向かう。

リビングでは繭が1人で椅子に座っていた。僕の方を見て、

「熱は?大丈夫なの?」

と聞いてくる。

「寝て楽になったよ。」

と返し、体温計を手に取る。この体温計は、今の日本にあるヤツとはちょっと違う。シールになっていて、これをおでこに貼ると、体温によって色が変わるようになっている。普段はピンク色、37.5度以上で赤色、39.0度以上で白色になる。

おでこにそれを貼った僕は、おでこを繭に見せて、

「何色?」

と聞く。ちょっと経ってから、

「ピンクだ、熱は引いたみたい。」

と、返答が来た。明日から仕事に戻れると安心する。

「お腹空いた?お粥あるけど。」

そう言われ、外を見るともう日は落ちていた。

「夜ご飯として頂くよ。」

と言って椅子に座る。

暫くたってから繭がお盆にお粥の入っているお椀をのせ、キッチンから此方に来る。

ことっ。

と音を立て、テーブルにお粥を置き、

「召し上がれ。」

と言ってくれた。お粥からは湯気が出ていて、熱そうだ。

「いただきます。」

手を合わせそう言い、お粥を食べ始める。蓮華でお粥をすくい上げ口に運ぶ、正直滅茶苦茶熱くて味は分からなかった。

「ご馳走様でした。」

そう言って食べ終わる頃には、僕は汗をかいていた。最後までずっとお粥が熱かったからだ。

「お風呂入ってくるね。」

服が汗で濡れて気持ちが悪いので、急いで風呂場へ向かう。

ガラッ

とドアを開けるとそこには――

下着姿で自分の胸を揉む緋莉がいた。

「なっ!?」

「えっ?」

2人の声が重なる。

「ごめっ…わざとじゃ無いんだよ!」

咄嗟に言い訳をする。てか、この言い訳今日二回目だな 。

「なっ…えっ?」

未だに緋莉は混乱しているのか、何かを一人で言っている。

そうして数分、自分の置かれた状況を理解したのかみるみる顔を赤くして、

「見ないでっ!」

と叫び僕の頬を叩く。その威力は病み上がりの僕には強く、そのまま僕は倒れた。


#

「どうしよう…」

バストアップのために一人で胸を揉んでいる所を見られてしまい、恥ずかしさの余りに雷お兄ちゃんの頬を叩いてしまった私、緋莉は胸を見られた時より混乱していた。

「とりあえず…証拠は消した方が良いのかな?」

そんな事を考えたが、何をすればいいか分からないし、やりすぎだと思いやめた。

とりあえず寝室に戻してあげようと、おんぶをする。

「意外と軽いな…」

思ってたより雷の体重が軽くて驚く、これなら私でも寝室まで連れてけそうだ。

「ふぅ…。」

寝室に雷を寝かせ、また風呂場へ向かう。勿論さっきの続きをする為だ。

もみっ。もみっ。

「ほんとにっ…大きくなるのかな?」

本当に大きくなるかは分からないけど、自分のやれる事は出来る限りやりたいので、そのまま胸を揉み続ける。

もみっ。もみっ。もみっ。

と、その時。

ガラッ。

と大きな音がして、風呂場のドアが空いた。

「あっ。」

目の前には茶眩が立っている。驚いた顔をしていたが、その視線だけはしっかりと私の胸を見つめていた。

「なんなの今日はぁぁぁ!!!??」

そう叫び、茶眩の胸を思いっきり叩く。

家中に、

「ぱちん!」

という音が響いた。

「ほんとにっ…もう…。」

今日は私にとっても他の人にとっても疲れた1日でした。

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