幼馴染が異世界転生してきた!?

結城 白舞

第1章

1話 幼馴染がやって来た!

幼馴染がこの世界にやってきた。まだ僕と同じ15歳の少女が僕の元へやってきた。それだけ聞くと感動の再会だと思う人もいるだろう。しかしここは異世界、ここへ来る為には現実で1度命を絶つ必要がある。どうして幼馴染がこの世界に転生してきたのかは分からないがまた、色んなことを楽しめれば良いなと僕は幼馴染に抱きつかれながら思うのだった。


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僕、秋雨うとき らいがこの世界に来たのは去年の夏だ。目を覚ますと見知らぬ畑に横たわっていてとても焦った。その後色々な人に尋ねて知った事だが、この世界は大きな1つの大陸、「ディル大陸」からできていて、その中で東西南北と都市がわかれているらしい。1つ1つの都市が、1つの国程度の大きさを持っているらしく、大陸自体の大きさはかなり巨大との話だ。僕が住んでいるのは北の農業都市、大きさ自体は他の都市より小さいが、自然豊かのいい所だ。

異世界に来た時は、


「勇者になって世界を救うぞ!」


ってノリだったが、そんなに現実は甘くなかった。

僕は今、勇者なんて関係ない農家の生活をしている。畑を耕して作物を植え水をあげて、立派に育ったらそれを収穫する。それだけだ。


大陸の東と西には大きな洞窟がありモンスターも居るらしいが、普段農民のような仕事をしている僕には倒せない強さらしい。そもそも勇者という職業がある かすら分からない。

ちなみに南には大陸最大の都市があり王様が住んでいるとの話だ。一度行ってみたいと昔から思っている。


僕が此方の世界に来て最初の頃は


「北側に落ちて来なければ勇者になってかっこいいって言われてたよ!絶対に。」


なんて口を尖らせ文句を言うこともあった。だけど僕はこの生活が大好きだった。毎日村のみんなと仕事をし、夜疲れて家に帰りみんなでワイワイと夕飯を食べて寝る。こんな日常が大好きだった。


しかし、僕の日常はある日おかしくなってしまった。

それは天気のとても良い日、僕が仕事の為に畑に向かってる最中に起きた出来事だった。今日も良い天気だなと鼻歌交じりにスキップをしていると、何処からか声が聞こえてきた。声の主を探そうと辺りをキョロキョロと見渡していると、上から


「そこの人危ない!!避けて!!!!!!!!!」


と大きな声が聞こえてきた。なんだろうと思い空を見上げると女の子が降ってきていた。危ないと思った時にはもう遅かった。

ドンッと大きな音がし、辺りに砂煙が巻き上がる。


「大丈夫…ですか?」


空から落ちてきて大丈夫な訳が無いが一応聞いておく事にした。すると意外な答えが返ってくる。


「はい…大丈夫みたいです。」


どうやら大丈夫らしい。どんなムキムキな女の子だ、と想像しかけたが失礼なのでやめておいた。

煙が晴れ、視界が良くなった所でその女の子を見る。

服は多少汚れているが、見える範囲の肌には傷が見当たらない。見た目から察するに自分と同じ10代半ばくらいだろう。

空から降ってきた事を考えると彼女も異世界転生をしたのだろう。どうしてこんなに若い女の子が、と思い顔を見てみる。そこには驚くような光景があった。

僕が見たその顔は幼馴染の冬夜とうや まゆの顔にそっくりだったのだ。僕が驚いた顔をしている事に気づいたのか、


「あの…私の顔に何か付いてます?」


と話しかけられる。


「いや、君がある人に似ていたからつい…ごめん!」


僕は事実を述べじっと見ていたことを謝る。そして僕は彼女の声を聞き確信した。この子は本物の繭だと。

だから僕はおそるおそる尋ねた。


「もしかして、冬夜…繭さん?」


何故か敬語になってしまったが、聞きたいことをしっかりと言葉にした。それを聞き、次は彼女が驚いた顔をしていた。


「どうして私の名前知ってるの?」


どうやら繭は僕の事をまだわかっていないらしい。1年近くたったらいくら幼馴染でも忘れるよね。


「覚えてる?繭の幼馴染だった雷だよ。」


そう言うと繭は僕に抱きついてきた。大きな胸が当たって心臓に悪い。そして大声で彼女は叫ぶ。


「会いたかったよ!雷!」


いきなり告白まがいの様な事を言われ心臓がバクバク言っている。


「なっ、何言ってるの!?」


繭を無理矢理引き離し、僕が問う。


「会えなくて寂しかったんだよ!」


泣きそうな声でそんなことを言ってくれる繭。僕に会えなくて寂しかったのは嬉しいが、そんなに言われると僕の心臓が危ない。オーバーヒートしそうだ。

(これから繭の事どうしよう……。)

いきなり異世界へやってきたのだ。繭を知ってる人は僕しかいないから、他の人を頼ることは出来ないだろう。僕の家に来てもらう、脳にそんな提案が脳に浮かび、僕は顔が赤くなるのを感じた。ぶんぶんと頭を振り、その案を頭から消すと、繭に


「どうしたの?」


と首を傾げて聞かれる。可愛いなぁ…。ってそうじゃない。僕はこれからどうするかを繭に尋ねた。


「家とか…どうするの?」

「これから考えるっ!」


そう言ってどこかへ走り去った。ほんとにどうしよう…。

でも結局考えても分かる事じゃなかった。ただ1つ分かるのは今までのような生活を送ることが出来なくなった事だけだった。




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