第14話 イジメで悪いのは加害者。


「アイ、ショウとクレアちゃんの引率お願い」

「おっけー。あと契約書、ほんとにコレでいいの?」


 暁とクレアちゃんは組合に来るのは初めてらしいので藍香に引率をお願いした。組合でフォレストボアの依頼を受けたら一足先に西の森でレベリングを始めてもらう算段だ。

 それと念のため3人にはプライバシー設定を最大にして貰うことにした。これで3人ともフレンド以外には名前や顔どころか性格すら不明の状態だ。

 ちなみに藍香にもプライバシー設定の変更をお願いしたのは『顔を隠したい2人組のプレイヤー』でミライの動画の被害者を連想できるプレイヤーがいるかもしれないからだ。さすがに『顔を隠したい3人組のプレイヤー』からは連想するのは無理だろうと考えた。


「たぶんね。あ、そろそろ組合着くから別行動な」

「兄さん、ごめんなさい……」

「お兄さん、お願いします」

「2人とも気にする必要ないよ。なるべく早く合流するからね」


 僕は自分が難儀な性格なのを自覚してる。

 だから普段は自重してるんだ。

 理性の力は偉大だと思う。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「あ、紫ワカメさん」

「「ぶふっ」」


 組合の建物に入ると今朝会ったばかりの紫ワカメさんと再会した。

 周りにいるのはパーティメンバーだろうか。


「じ、自己紹介がまだだったね。俺はノウアングラウスだ。ノウアンって呼んでくれ。君はマヨイで合ってるかな?」

「そうですよ。僕はマヨイです。さん、今回はKING'S所属のプロゲーマー、ミライさんが昨日配信した動画の被害者2名の代理人として来ました」


 言外に今回の件では馴れ合うつもりがないと言ったつもりだけど伝わっているかな。

 仲間らしい金髪オールバックの戦士風の人には伝わっているみたいだけど、ノウアングラウスさんの表情には変化は見られない。


「……俺は今回KING'Sのメンバーの代表として席に着くつもりだ。今回はうちのメンバーが卑劣な真似をして本当に申し訳なかった」


 自分自身に非はないのに頭を下げられるっていうのは凄い事だとは思う。

 ただ、それは周りに目がある状況ではやっちゃいけないことだ。


「大人って卑怯ですね」

「どういうことかな」

「僕は今回、被害者の代理人として来ていると言いましたよね」

「そうだね」

「僕が謝罪を受け入れれば全て解決したという体裁を整えられますよね。そして断れば僕らを誠意を無碍にしたと悪者に仕立て上げてしまえる状況が整理してしまう。これ狙ってやってます?」


 いつの間にか被害者にマイナスのイメージを押し付けて加害者の行為を有耶無耶にしてしまう。

 学校のイジメ問題で「イジメられる方が悪い」と主張する加害者と同じだ。


「そ、そんなつもりはない!」

「ノウアングラウスさんにそのつもりがなくても周りはそう判断するんですよ?」


 こう言われて周りを見るということは、チームメイトのゲームの腕は信用してるけど人間性は信用しきれてないのかな。

 プロゲーマーに詳しい藍香の話ではKING'Sは実績は既にあげているけど設立からまだ半年も経ってないらしい。


「これが僕がKING'Sのメンバーが被害者の女性プレイヤーとの面会をセッティングするための条件です」


 そういって僕は藍香に作ってもらった契約書の内の1枚をメニューから取り出してノウアングラウスさんに渡す。



◼︎契約内容

対象①:マヨイ

対象②:ミライ

対象③:ショウ

対象④:クレア

内容①:対象①は対象②と対象①が指定して本契約を承認したプレイヤーとの間で決闘を行う。この時、対象②が指定するプレイヤーの数に上限はない。

内容②:対象①が勝利した場合、対象②と決闘の敗者に対してそれぞれ1つの命令権を獲得する。対象②の陣営が条件した場合、対象①は対象②に対象③と対象④を紹介する。

備考①:決闘は組合の訓練所を貸し切って使用する。貸し切るために必要な資金は対象①が用意する。

備考②:内容①は本契約が承認されてから20分以内に行う。決闘が行われなかった場合、対象①が勝利した扱いとして内容②を適用する。


「この命令権というは何だ?」

「ゲームシステム上で可能になっている行為を強制させられる権限らしいですね。こちらは多勢に無勢なんですから、それくらいは許容してくださいよ」


 今回、ミライの味方には全員退場してもらうためのルールだ。

 運営には命令権について問い合わせ済みだ。

 やはり昨日の配信の件は運営でも問題になっていたらしい。


「代表者同士のタイマンではダメなのか?」

「それはミライさんが1人を指名すれば良いことですよね」


 ここからは悪巧みだ。

 僕はノウアングラウスさんにフレンド申請を送る。


「このタイミングでかい?」

「別に構わないでしょう?」


[ノウアングラウスとフレンドになりました]


『こちらが排除したいのはミライとミライのリスナーです。運営からは迷惑行為を実行したプレイヤー以外への命令権の使用は控えてくれと言われています』


 控えて欲しいだけで実行してもいいとも言われてるけど、そこは言わないでおこう。


『勝てるのかい? ミライなら100人は簡単に集めてくると思うぞ』

『知力1000超のの魔力弾を500発以上を防ぎ切れると思いますか? ちなみに再使用時間は0秒に短縮されてます』

『それは……冗談ではなく?』

『はい、使用感は環境破壊兵器です』

『分かった。うちからはミライだけ出すから引導を渡してやってくれ』


 実際は知力10000超で7600発くらい撃てるけどね。

 嘘は言ってない。

 というか引導って……もしかしてノウアングラウスさんもミライに怒ってらっしゃる?


「マードック、ミライは?」

「もうすぐ来るみたいですね」


 金髪オールバックの人がマードックと言うらしい。

 KING'Sのサブリーダーだったはずだ。


「遅くなりましたぁ☆」


 ピンクの髪色をツインテールにした女性プレイヤーが組合にやって来た。周りの様子からして十中八九、彼女がミライなのだろう。


「ミライ、昨日配信した動画の件で話がある」

「えぇー、あれはあの子たちが悪いんですよー!」


 これ、間違いなく藍香は知ってたよな。

 彼女は英田あいだ未來みらい、僕のクラスメイトだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る