本日も雨天なり

平中なごん

01 いつもの朝

「――続いて、今日のお天気です。今日も一日雨、所により豪雨となるでしょう…」


 ニュース番組のお天気コーナーへ目を向けると、今日もいつも通りに日本全国雨マークである。


 これが昔は晴れマーク一色になる日も頻繁にあったというのだけれど、僕らの世代にとってはどうにも信じられない話だ。


 1年365日、晴れる日など滅多にない……僕が物心ついた頃にはすでにそれが普通となっていた。


 あるとすれば、海面から供給される水分が少なくなる冬ぐらいのものだが、逆に日本海側は大雪に見舞われ、晴れた空を見ることはまずないだろう。


 当然、それだけ雨が降っていれば地面は水浸しになるわけで、昔は陸地だった場所でも標高が低ければ、今や海や湖の底に沈んでしまっている。


 いや、僕ら・・としては、むしろそこが人の住める乾いた土地だったということの方が想像するのに難しい。


 それどころか、今、なんとか暮らしている土地だってゲリラ豪雨の際には水没するので、いつ浸水してもいいように家もお店も高層のデパートも、建物の一階部分はお城の石垣のような土台になっている。


 つまり今の時代、通常は二階以上が居住空間なのだ。


 さらには逆転の発想で、最初から水没した土地に新たな嵩上げした街を造る、いわば水上都市なんかもできていたりするのが今のご時世である。


 また、他にも現代建築の特徴として、ずっと湿度が高いのでカビがすぐに繁殖し、壁はどうしても薄黒く燻んでしまうため、まず真っ白な建物というものは存在しない。


 反対に白はカビが目立つため、新しく建てられるものは無難な暗色のものばかりである。


 お城とか土蔵とか、古い時代に立てられた文化財級の白壁の建造物も、クリーニングが追いつかないのでもう放置だ。


 そんな感じで、僕らの親以上の世代に言わせれば暮らしづらい今の世の中ではあるが、一方で昔に比べて便利になったという点もある。


 放っておいても雨水は溜まってくれるので、各家庭には貯水タンクと浄水器が設置され、昔は水道代なるものを払って使っていたという水も今はタダ同然である。


 それに電気も、こちらはさすがにタダとはいかないが、豊富過ぎる水を利用して各地に水力発電所が増設され、環境破壊や事故の危険性の問題があった火力・原子力からは図らずも脱却することができていたりする。


 なにごとも、デメリットもあればメリットもあるということなのだろう……。


「――以上、お天気のコーナーでした。まもなく時刻は午前8時になります」


 ぼんやりテレビ画面を見つめていた僕の耳に、そんなキャスターの声が聞こえる。


 おっと! もうそんな時間か。ついついのんびりしていたら、学校に遅刻しそうだ。


 僕は慌てて純国産のプラント・・・・製小麦を使ったパンを頬張ると、鞄を引っ掴んで玄関へと向かった。

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