6 進藤家VS黒淵家 ———人間界4———
広大な庭に、高円宮迅仁は一人、静寂な空気に身を委ねていた。
彼はここの庭が大好きで、時間があればこうして歩いてこの綺麗な庭で心を満たすことにしている。
迅人は不意に歩みを止めた。振り向かずに後ろに話しかける。
「何者だ?」
落ち着いた口調ながらも、手は常佩している刀の柄にかけている。
彼は幼少の頃ある人物から教育を受けていた。その影響を受けてこうして刀を帯びていた。肉体も鍛え続け、70を超えてもその肉体は若い者に負けない体力がある。
───大和武士の心を忘れるなよ?
彼はいつもその男から言われた一言を胸に今日まで過ごしてきたのだ。
「腕に覚えがあるようだが易々と殺れると思うなよ」
ふふんという笑い声が聞こえた。どこかで聞いたことある声な気がした。
「やってみるか、迅仁?」
放たれた殺意に動じることのない、軽い声にはっとした迅仁が振り返ると、岩に背をもたれる若者がいた。にやけ顔の彼は、首だけを迅仁に向け、よっと言う声と共に歩き出した。
「久しいな。元気でやっていたか」
若者が言えば、迅仁ははらりと涙を流していた。
「ずっとお会いしたかった・・・・・・・・・ッ」
気づいた時には、迅仁は若者に抱き着いていた。
「もう会えぬものかと」
「すまん。色々あってお前には挨拶できずにいたからな」
龍彦の手は迅仁の顔を優しく撫でた。
「元気そうだな」
「はい、お陰様で。噂では聞いていましたが・・・・・・すいません、挨拶にいかないで」
恐縮そうにする迅仁に、龍彦は気にするなと言った。「そんなもの、いつでもできる」と。
龍彦は、真珠湾奇襲作戦の為に出陣する前日まで迅仁の私的教師を務めていたことがあった。そのことは、昭和帝以外側近や山本五十六提督以下数名しか知らない事実である。
彼が迅仁に武道やその精神などを教えたお陰で、迅仁はたくましく成長した。警察官となり過去に二度ほど警察庁と警視庁の長官をつとめたことのある。皇族では異質の存在だ。
「お前に頼みがあって来た」
彼は間をおいて龍彦はそう言った。進藤家の人間は皇族といった敬語をあまり使わない。といっても、それは龍造や龍彦のみに限られる。
他の一般人から見れば死刑に等しい行為だが、彼を含む皇族の人間はこれまでの進藤一族の功績から寛大な心で許可している。むしろ、彼らの方から敬語は止めてくれと言ったくらいである。
「敬語で話されるのは何かこうくすぐったいんだ」と昭和帝が龍彦に言ったとか言わないとか。
「何でしょう? 私に出来ることなら、なんなりと」
迅仁が言うと、龍彦は切り出した。
「明日の未明、俺達は黒淵一族に総攻撃をしかける。お前には、槇田首相と協力して黒淵邸周辺五キロを封鎖してもらいたい。長官を勤めていたお前なら容易いだろ?」
「確かに、出来なくはないですが・・・・・・・・・」
迅仁は言葉を濁した。彼の頼みとはいえ、退官して既に年月が経っている。言うことは聞いてくれるだろうが彼らの仕事を邪魔したくない。
「何とかなんだろ。お前な───」
そこまで言いかけた時、突如として凄まじい爆音が轟き、地が揺れた。
「何だ!?」
爆音が轟いた場所は、方角的に彼の家だった。
「───抜かった!」
地団駄を踏んだ彼に、凶報が迅仁つきの人からもたらされた。
「黒淵が進藤様の屋敷を包囲、攻撃を───」
彼が言い終わる前に、龍彦は背を向けた。
「お待ちください、龍彦さん!」
「すまん迅仁。話は後だ」
迅仁はだからこそ冷静な口調で言った。
「隆仁を連れてきます。あれなら貴方の家の最短を知っている」
迅仁は、言い終わると付き人に急げと命じた。
「あらら。これは予想外」
「悠長なこといってる場合かっ!」
暢気なことを吐かす南雲を槻嶌が力一杯ぶん殴った。所々から黒煙をあげる進藤邸は黒淵の急襲により体制を整える前に劣勢に立たされていた。
「油断大敵とはこのこと、か・・・・・・・・・」
苦虫を噛み潰した顔で、龍造は周りを囲む賊共を自慢の槍で屠る。
「そりゃ!」
龍一も同じように槍で敵を突きまくる。その後ろでは、初めての『戦場』に戸惑う武内達がいた。
怒号・絶叫・断末魔・
「こんなもん、どってことないわ!」
それは自分自身に言い聞かせているようだった。だが、それにより、畏縮していた
武内らにもやる気が漲ってきた。
南雲は殴られた頬をさすりながら指示を飛ばす。
「槻嶌さんと奈良沢さんは南を、僕と先生は北の防御に」
「「任せて!」」
「分かったわ!」
槻嶌や奈良沢は、南雲の指示に頷くや相棒を率いて場所に向かった。
「皓治! 無事か!」
徳篤が叫ぶと、奥の方から無事の一言と共に槇田が風龍に伴われ姿を現す。
「安全な地下倉庫へ行け」
おうと答えて槇田と風龍が奥に消えていく。
「滅ぼせ! 進藤の人間は皆殺しにしろ!」
荒らされた庭園や塀越しからそんな声が響き渡る。
「親宗と知介はどうなってる」
「奴らの家も襲われている。達江と明親らが向かっているが厳しい。こっちには晶泰と成良らが向かっているが間に合うかどうかわからん」
完全に後手に回っていた。唸る彼らをよそに、黒淵の連中は構わず特攻を仕掛けてくる。厄介なことに、彼らの後ろから悶奴が来ていた。
「ええい!」
腹立ち紛れに特攻隊を瞬殺すると、そのまま悶奴にブチ当たっていった。
「今日こそ死ね! 龍造!!」
「誰が死ぬか!!」
悶奴は龍造に劣らない槍使いであり、龍造にとって嫌な相手この上ない。
(ぐぅ・・・・・・この状況ではッ!)
周りの状況が気になり、悶奴相手に集中できないでいる自分に苛立ちを覚える龍造。
舌打ちしながら、老体とは思えぬ速さで槍を振るった。
さて、ここで、様子がおかしい者がいた。
「・・・・・・・・・」
身体をわなわなと震わせて変わり果てた庭を見つめている煉龍だ。
「───許さないですぅ」
「・・・・・・あのー、煉龍さん?」
南雲は、その震えが子供達に超絶大人気なモンスター育成ゲームの進化のように思えた。
「私の大好きな庭をこんな風にして・・・・・・許さないですぅ!!」
「うわっ?!」
煉龍を神々しい光が包んだ。何だ何だと周りの者も慌てる。
「そのような不埒者、わたくしが滅ぼして差し上げますわ」
光がすっと収まり、そこにいた人を見て南雲は固まった。
そこにいたのは、煉龍の服を来たグラマーな大人の女がいた。当然他の者も唐突な出来事に茫然としていた。
何も知らない黒淵の連中は、煉龍に奇声を上げて襲い掛かってきた。
「爆ぜなさい」
刹那───
彼らの身体は内側から風船のように膨らみ、臓器と肉片を撒き散らし文字通り爆ぜた。
「わたくしを本気で怒らせたことを後悔させてあげましょう」
最も、と煉龍は南雲の方に顔を向けた。
そして、何かを投げた。
直後、ぎゃっと悲鳴が頭上から耳をつんざいた。
頬に血を浴びて初めて、彼は命が危なかったことを知った。
「わたくしのご主人様に危害を加えようなどというのは以っての外ですけれど」
(ご、ごごごご主人様ぁ!?)
ぶはぁっと盛大に吹き出した。
「あーあ。キレちゃったな」
ひょっこり雷龍が顔を出す。どういうこと? と訊くと
「アイツな、ここの庭がすっごい好きでな。手入れも主と一緒にやってるくらいなんだよ。いつだったか、昔それを燃やしたバカがいたんだよ」
何か語り出した。その間、彼を襲う者は煉龍と雷龍が容赦なくぶっ殺していた。
「そしたらな、アイツそのバカを半殺し───いや、八割殺しにしてな」
とどのつまり。
煉龍は一度ブチキレると手がつけられなくなるということらしい。
「ご主人様。すぐに終わらせますから、そこ、動かないで下さる?」
「は、はい・・・・・・・・・」
「雷龍。ご主人様のこと、くれぐれも頼みますよ?」
「へいへい。任されたよ」
南雲は無意識にそこに正座した。雷龍はめんどくさそうに立ち上がる。それを見た煉龍は炎の舞を披露し、敵の殲滅を開始した。
さてその頃、奈良沢と槻嶌は悶奴の息子黒淵二郎にその弟友政と、石田は黒淵兼義と対峙していた。
状況は劣勢。それは戦の素人だから致し方ない。
「死ねや!」
奈良沢に告げられた死刑宣告に、胆が据わったとは言え恐怖する。
「死ぬのはテメェらだウジ虫共」
観念して眼を閉じようとした瞬間だった。天の助けが来たのは。
「進藤流一之舞中段 雷神ノ太刀 白雷・烈撃」
そんな声と共に、白き雷が二郎に直撃し、瞬時に消し炭と変えた。
「・・・・・・・・・」
氷点下の視線の男に、兄を殺され怒り狂った友政が襲いかかったが、邪魔の一言と共に真一文字に両断した。更に兼義を黄龍に始末させた。
「大丈夫だな、お前ら」
「あ、はい」
「龍造はどうしてる?」
間髪入れずに尋ねた彼に、指を指して龍造の居場所を教える。
「烝・瞑」
彼が呼べば、二人付きの宿龍が敵を片づけてやって来た。
「彼女達に協力してやれ。ここは任せる」
二龍が頷く。
「俺は悶奴を討つ」
お気をつけてと二人は見送った。
歩きながら、彼は微笑んだ。
「本気でいくぞ」
「そうこなくてはな」
二人はそこから姿を消した。
「そんじゃ、やりますか」
瞑龍の投げ掛けた言葉に、二人はにっこり微笑んだ。
「おほほほほ! 他愛もないですわね!」
「あー・・・・・・・・・」
何かそこだけ地獄絵図だった。惨状だった。
そこに立つのは闇に堕ちた大魔女。その周りには大魔女に逆らって消し炭にされた哀れな者達の残骸。それを囲む狂ったようにうねる紅蓮の業火。
地獄の縮図でも見ている気がする。
(まぁ・・・・・・・・・)
南雲は取り敢えず煉龍に近づいて、その頭を撫でることにした。
更に別の場所では。
「ふはははは! 己の不運を呪うがいい!」
声高々に叫ぶ黒淵持成と三上未奈が対峙していた。
「裏切り者の出来損ないめが。女だからって調子乗ってんじゃねぇよカスが。その腐った精神もろとも消してやろうか!」
とか、未奈を大変著しく侮辱するマシンガンのごとくその口を動かしている。
ブッチン。と未奈の何かが音を立てて切れた。
(幻ちゃーん。私今すぅーっごいムカついちゃった。殺っていい?)
(奇遇だな。我もそうしようと思うてたところよ)
未奈は周りにいる敵を遠ざけると眼を閉じ、手をかざした。
(南雲君達、ちょーっと眼を閉じててくれる? 先生かなり怒っちゃった)
いきなり未奈の声がが脳に直接聞こえてきた。ぽかんとしている彼に、煉龍が言った。
「ご主人様。言われた通りになさいませ。でないと、明日の朝日を拝むことができない身体になりましてよ?」
あー、と南雲は理解した。と同時に、隣の雷龍にアイコンタクトを送る。うむと雷龍はそれを今の主人に伝えに行った。
直後、未奈の奥義が発動した。
「
眩い白光が辺りに放たれた。そう南雲は感じた。
何も知らない黒淵一族はその光を直視した。
すると、自然発火のように肢体を淡い青き炎が包み込み、悲鳴をあげながらその身を大気と同化させていった。
「な、何が・・・・・・・・・??」
幸運にも、手をかざしてその光を遮っていた持成は、さっきまでいた同胞が一瞬にして消滅したことが理解できず唖然としていた。
眼を開け現状を見た南雲はスゲェと心の中で思った。
「さ、後は三下の貴方だけよ」
未奈が言えば、龍の姿の幻龍が彼の前にその半透明の身を曝した。きょとんとしていた南雲だったが、この機を逃すまいと煉龍に攻撃の指示を出す。舌打ちして避けるまさにその時、どこからともなく光輝く火炎が彼めがけて飛来してきた。
咄嗟に自身の龍に命じて両方の防御をさせるも、質量のデカイ火炎を防ぎきれず、防御が決壊、その火炎を受け、身を焦がし果てた。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
叫び声をあげた持成の前に龍一は降り立った。
「流石幻龍さんだな。あんな数を一瞬にして消すなんてな」
『ふん。我の力など、龍彦の奴に比べれば大したことないわ』
いつの間にか人の形となった幻龍が、彼女から離れて実体となる。
「いや、そもそも比べること自体間違えてるから」
「それもそうであったな」
ククッと笑う彼に、未奈は首肯する。
「よしよし」
龍一が未奈の頭を撫でた。未奈のやる気が急激に上昇した。
「さて、大元はおじい様達に任せて、俺達は残りの雑魚共を始末しに行こうや」
龍一の提案に、やる気MAXの未奈は拳を突き上げた。
「悶奴! 貴様の息子共は敗れた! 観念せいっ!」
衣服がボロボロになりながらも、優勢を保つ龍造が、槍の穂先を向け言い放つ。
対する悶奴は、自身の完璧なる計画が寸での所で突如として瓦解し、発狂寸前だった。
「俺が・・・・・・俺が負けるわけないだろぉぉっ!」
爆発した怒りに同調するように、閻魔が四方八方に最大火力の火炎を撒き散らした。予想外の攻撃に、龍造はたじろぐも相棒と協力し周りに被害がいかぬように防ぐ。
が、そこに気を集中させすぎた為、我を忘れた悶奴が斬りかかってきたことに気づくのが遅れてしまった。
(南無三ッ)
万事休すと思ったその時である。巨大な黄炎が横合いから放たれ彼の斬撃を妨害した。
「誰だ!」
絶好の好機を絶妙なタイミングで邪魔された悶奴は、血走った眼で邪魔者を睨みつけた。が、それを視認するやあっと唸った。敵は規格外の人物だったのだから。
「・・・・・・・・・」
無言の重圧。
黄金色の髪に軍服、上から羽織る龍の描かれたマント。手にするは愛刀・龍牙。 戦時中を生きていた者なら知らぬ者はいない、泣く子も黙る大軍人。
「き、貴様は・・・・・・・・・!!」
「下がっていろ龍造。このガキは俺が殺る」
親父───と声をかけようとして、龍造は止めた。
あの父が珍しくブチキレていたから。ゆっくり近づく恐怖に、悶奴は後退る。後退りながら邪炎を射放つ。
「・・・・・・・・・」
だがその邪悪な炎は龍牙により一刀のもと断ち斬られた。
「ば、化けも───」
「貴様を、未来永劫闇に支配されし地獄に案内してやるよ」
抜き払った龍牙の刀身を鍔から刃先に向かってなぞるように伝わせていく。その後を沿うように黄金に輝く焔が刀を包んでいく。
「進藤流 居合之秘剣 魔断ノ太刀・
低い声と共に彼は愛刀を振りぬいた。
かつて、悪逆のかぎりを尽くした魔神がこの国を蹂躙したことがあったらしい。人の世は混沌の闇に沈んだ。その時、進藤の先祖───趙家の某がその魔神を殺す為に編み出したと伝承されるのが、進藤流剣術四大秘剣の一つ、神殺。
あらゆる闇を断斬し、闇に染まった魂を隔離世界に閉じ込める豪剣は、絶対不可視回避不能の技。
『おおおおのれええぇぇぇ!!!』
その一閃は、悶奴の首と胴を斬り放し、斬り口から焔が噴き出し、閻魔もろとも焼き尽くした。
「悶奴様っ!」
当主が殺られたと知って、残っていた黒淵の者は仇敵に牙を剥く。
「・・・・・・・・・」
その中に、まだ二十歳にも満たない男女も含まれていた。
龍造の気分は晴れない。虚しさが心を満たしていく。こんな時、龍造は己の力不足を歎く。今の彼に、この若者達を説き伏せる実力は備わっていない。
「───」
龍造は黙って槍を構えた。
「あのー煉龍さんちょーっと頼みたいことがあるんだけど」
地獄絵図を拡大させていく煉龍の後ろから南雲がひょいと顔を覗かせる。
「何ですかご主人様」
「えーっと、今眼の前にいるのは僕と同い年くらいの人達なのですよ」
と前に立ち塞がる敵を指す。
「そうですわね」
「僕としては彼らを無傷で捕らえたいわけですよ」
「何故です? 彼らは百害あって一利なしの存在ですのよ?」
「それでも同い年の人が眼の前で死ぬのは心苦しいのですよ。それでもって彼らはまだ若いわけなのですよ」
「───仕方ないですわね。ご主人様がそうおっしゃるなら」
仕方なく嫌々、という感じに返事をすると、音速の早さで彼らを気絶させた。
まさに早業である。
「ありがと」
彼は無意識のうちに彼女の頭を撫でていた。あらあらとしかし拒むことなく煉龍は享受していた。
ふと我に返った南雲は冷静な自己分析を行った結果、一つの結論に達した。
(僕は完全完璧に煉龍に毒されちゃったなぁ)
無論、良い意味であるが。
「旦那! ご無事ですかい」
そこに、颯龍の報せを受けてきたのだろう、権田組等の子飼いの連中が駆けつけてきた。
「奴らに縄を打て」
駆けつけた徳篤に指示され、真太・横田・皆口の組長の指示のもと組員が慣れた手つきで気絶している彼らに縄を打ち付けていく。
その際、自殺防止にと舌に布を何重にも巻きつけた。
「大丈夫か、坊主?」
やるせない気分だった。南雲にとっては、自分達と然程変わらない彼らが、〝進藤への復讐〟という大人の勝手な逆怨みに等しい考えを、幼い頃から叩き込まれ、今回の行動に駆り出され命を落としていく。
こんな理不尽な事があっていいのかな?
「理不尽だね」
「そうですわね」
「彼らもまた、身勝手な大人の被害者さ」
横田丈太郎の言葉が重くのし掛かる。
「あの人達は、ちゃんと更正するかな?」
分からんと横田は答えた。
「更正ってのは、普通長い時間をかけて行うものだ。ましてするかしないかは本人の意思に因るところが多いからな」
そうですね、と南雲は一層の虚しさを覚えた。
「どうやら、他の場所も終わったようだな」
徳篤が呟く。同時に、誰かの式神が現れた。
『こちらは無事終わりました。そちらも大丈夫のようですね』
彼の名は
尚由の報告によれば。
藤宮・戸部両家の襲撃を指揮していたのは悶奴の三男裕司。率いてきたのは約二百名。苦戦したものの、神戸・後藤両当主の他、達江の夫神戸達哉・はとこの
裕司以下主だった者は死亡し、残りは吉倉暎柾・神原慶三率いる警官隊が捕縛したと言う。
補足として、黒翼人はカヤノヌシが責任もって撃退したとか。
『現在、吉倉様が厳重に見張っておりますのでこれ以上の被害はないかと』
「黒淵邸はどうなっている」
『高円宮迅仁様と紘人様率いる機動隊と正徳様・嘉美様が包囲を完了しております』
彼の言に、皆ホッと胸を撫で下ろす。これで、更なる被害は防げる。
所々焼け落ちた進藤邸を見ながら、南雲はそう思った。
「どうしやす?」
真太幸三が尋ねると、徳篤は署へ連行するように言った。
「尚由さん。皓治に終わったと伝えてきてもらえませんか?」
『承知しました』
尚由が消えると、徳篤は龍造のもとに歩き出した。
「よしお前ら。今から大工集めて来い! 旦那の家を直すぞ」
真太組長の野太い声が響く。
この日、黒淵家は壊滅。当主・悶奴他数十名が死亡、数百名が拘束、連行された。
対する龍造達側の被害は、死者十五、負傷者五十、進藤邸・藤宮邸等半壊だった。
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