最強の援軍
私とミランダは犬の様な怪物に向かっていくが、近づくとその大きさに内心驚いてしまう。
なんせ、前足の大きさが私ぐらいあるのだ。
私は試しにその前足を斬りつけると、確かに肉を斬った感覚はあったが、刃先を見ると血も何も付いていなかった。
なんなのかしら、こいつらは……。
不気味ね。
私がそんな事を思っていると、怪物がこちらを向き口が開く。
その瞬間、私はゾクっとしてしまう。
それは口の中に人の目が見えたからだ。
しかもその目ははっきりと私を見てきたのだ。
中に入ってるのは人なの?
確かめてみるか……。
私はミランダに声をかける。
「ミランダ、あいつの注意を引いて。あの口の部分を剥がしてみる」
「もしかして中身見る気⁉︎」
「見たくないけど少しでも情報を知っとかないとね」
「はあっ、わかりましたよ」
ミランダはそう言うと、宝具リヴィアスで怪物の足を叩き始める。
おかげでミランダの方に注意を引く事ができたので、私は空を飛んで一気に降下しながら口の部分の皮を剥ぐように斬った。
すると見えたのは肉の塊だった。
しかも、所々に髪の毛や指などが出ていたのだ。
そして肉の塊に無理矢理付けた様な目が付いていて、私を凝視した後、めり込む様になくなった。
「夢に出てきそうね……」
「うげえっ、きもいよお!」
「けれど、あれがちゃんと私達を理解してるのはわかったでしょう」
「目が引っこんだのが?はずがしがり屋さん?」
「かもね。とりあえず倒してみましょう」
「了解」
私とミランダは怪物の両足を斬り落とし、次に頭を斬り落とすと、怪物は縮んでいき地面に溶け込むようにして消えてしまう。
それを見て、私は倒した様な感覚を全く感じなかった。
「ミランダ、どう思った?」
「なんか変な感じ。まるで倒した感覚がないというか……」
「物を斬った感覚に似てない?」
「ああ、そんな感じ……」
「あれは人じゃなくて物なの?いや、目とか肉みたいなものはあるものね」
「死体とか?ゾンビとかグールじゃなくて本当の死体って意味で」
「……ああ、なるほど」
私はミランダに言われて腑に落ちた。
魂の入っていないものを斬る感覚に近いのだ。
怪物の中身は意識があるけど魂がない物……。
自分で言ってて意味がわからなくなるわね。
ただ、わかるのは異界の門の中は最悪な場所って事ね。
私は溜め息を吐くと、ミランダに言った。
「まあ、だいたいわかったわ。後は数を減らせるように頑張りましょう」
「了解って……先輩、何か変なのが出てきたよ……」
ミランダは驚いた顔で第三障壁の方を見る。
そこには司祭の格好をした更に背が高い、怪物が出てきたのだ。
その瞬間、トーラスが叫んだ。
「気をつけろ!司祭は魔法を使ってくるぞ!」
トーラスがそう叫ぶと同時に司祭と呼ばれた怪物は両手を広げだす。
その瞬間、地面を稲妻が走った。
私とミランダは咄嗟に飛び上がったから逃げる事ができたが、何人かがその攻撃を喰らい倒れてしまった。
「無詠唱でフィールド・スパークをしてくるなんて……。しかも、この範囲は異常じゃない……」
私は思わずそう呟くと、私の方に駆け寄ってきたファルネリアが言ってくる。
「威力は痺れる程度しかないわ。しかも怪物達まで巻き込んで何考えてるのかしら?」
「怪物にとって味方という概念がないんでしょ。それよりも、どうしよう……」
私は次々と第三障壁の破壊された扉から出てくる怪物を見て焦る。
あまりにも数が多いのだ。
これじゃあ、みんなすぐに疲弊してしまう。
どうしたら良いの……。
もう宝具を使うべき?
けど、効果がなかったら皆んなな指揮が一気に落ちてしまう。
それだけは避けたい……。
私はそんな歯痒い思いをしていると、私達の近くに光る蝶が現れ、アンクルの姿に変わった。
「みんな遅れてごめんなさい。準備ができたわ」
アンクルはそう言って微笑むが、私達は黙ってしまった。
なんせ、今の状況で、この場を離れるのに躊躇していたからだ。
すると、アンクルは優しく声をかけてくる。
「大丈夫よ、今、彼らと一緒に戦う者達が現れるから。ただ、その前に敵だと思われないように知らせておかないとね」
アンクルはそう言うと、胸に手を当てて喋りだした。
「皆様、私は不死の領域を治めるアンクルと言います。これから私達の同胞が皆様と共に戦いますので間違えて斬らないようにお願いしますね」
頭の中に響くアンクルの声に戦ってる連中は驚いて辺りを見回していると、突然、あちこちから真っ黒い空間が現れ、死霊系の魔物とステンドグラスでできた兵士が現れ、怪物に攻撃し始めた。
更に一際、大きな真っ黒い空間が現れ、そこから悪名高きネルガンと、禍々しいフルプレートを着た四本腕の何者かが出てきて、持っていた剣を振るい一瞬で周りにいた怪物を消し去ってしまったのだ。
私はその圧倒的な力に驚きすぎて固まっていると、アンクルが声をかけてきた。
「ネルガンには悪さはしないように言い聞かせてるから安心してね」
「いや、ネルガンなんかよりもあっちでしょう……」
私は四本腕の方を指差すとアンクルは微笑む。
「ああ、タナクスね。大丈夫、力は抑えてもらっているから」
私はアンクルからとんでもない発言を聞いた気がしたがもう、それ以上何かを聞く気力もなくなっていた。
周りにいた連中も同じようで黙ってしまっていると、アンクルが真っ黒い空間を目の前に出し言ってきた。
「さあ、彼を助けにいきましょう」
そう言ってアンクルは私達に微笑むのだった。
________________
◆ 次の話が気になるという方は
是非、フォローと広告の下の方にある【★】星マークで評価をお願いします
よろしくお願いします
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます