第23話 これからに向けて

 勉強は合格点をもらい、先生とは雑談に近い形で知識を補完してもらっている。

 教育内容に関わるので、先生は元から私が離婚予定で結婚することを知っていて魔法契約も結んでいる。

 三か月後には先生との契約が終了になるので、勧誘するつもりで様々な話をしている。


 雑談の時は私のストレス発散も含めて、お互いに母国語で話す形に落ち着いた。

 お花畑では遠回しに物事を伝えるのが基本で面倒なのと、言語で話し方を切り替える為に丁度良かった。


「侍女は行儀見習いとして、同派閥内で下の爵位の結婚適齢期の令嬢を預かるのが基本です。家同士の取引に近いですね」


 社交シーズンは夏の三か月のみ。

 伯爵位でも半分以上は王都に屋敷を借りて過ごす為、シーズン終了後は領地に帰ることになる。


 令嬢の結婚適齢期は短いのに、学園卒業後の出会いの機会が年に三か月しかないのは厳しい。

 だから伝手を辿って、出会いがありそうな場所に行儀見習いに出す。

 結婚適齢期を過ぎた女性は行き遅れと言われ、魅力がないのだと蔑みの対象にされることも多いから皆必死。


 王都が人気で、その中でも次期当主は無理でも高給取りが沢山いる王宮は一番人気。 

 王宮の場合は行き遅れの人も沢山いるので、居心地は然程悪くない。

 代わりに推薦状を得るのが大変。推薦状を得るのも伝手次第。


 行儀見習いに出たい令嬢は多いので、貴族家では行き遅れと判断されれば余程気に入られていなければ、暇を出されてしまう。

 紹介状は真面目に働いていれば出してくれるが、新たな勤め先を見つけるのは難しいのが現状。


 しかも勤め先には結婚適齢期の行儀見習いばかり。精神的にもキツイ。その点でもそういう令嬢が沢山いる王宮は快適だと思われている。

 家の事情などで結婚は無理だと早くに決断した令嬢などは、学園在学中に推薦状を得られるよう尽力する。


「王宮への推薦状がもらえなければ、家庭教師を目指す方が無難だと言われています」


 爵位の高い家で侍女として残れなかった場合は、爵位を落として就活をするしかないが待遇も落ちる。

 実家より下の爵位になれば、意地悪されたりもあるらしい。

 それなら学園での好成績を引っ提げて、家庭教師になった方がマシという考え方。


「リエラメンテ先生も消去法で家庭教師に?」

「そうですね。私は実家が貧しくて学園入学時から王宮での侍女か家庭教師を狙っていましたが、色々あって侍女は諦め家庭教師になりました」


「他にしてみたかった仕事はあるのでしょうか」


 リエラメンテ先生が珍しく、驚いたようにおめめをパチパチさせている。


「考えたこともありませんでした」

「教え方はわかりやすくて丁寧。向いているとは思いますが、次の仕事があるかはわからない不安定な職業ですよね」


「ええ。その通りです。ですから仕事がある間にと……」

「自分がしたかった仕事を、一度考えてみて下さい」


「でも、それは」


 そう。考えたところでこの国では無理。だけれど。


「他国では違いますよね」


 リエラメンテ先生ははっとした表情になった。


「ええ、その通りです。視野が狭くなってしまっていたようです」

「魔法の国を視野に入れて頂けますか。教育が出来る人材は常に求めているのですよ」


「まぁ……。魔法の国のことを聞いても?」

「ええ、勿論です。そろそろ授業の時間も終わりますので、午後のお茶と一緒にいかがですか」


 午後のお茶の時間は学びの場として利用する予定だが、今日は了承を得られるか不明だったので通常のお茶の時間になる予定だった。

 了承を得られたが今日は先生と魔法の国の話をするとカーマインに伝えると、自分たちも聞きたいと言われた。


 私があまりにお花畑の王族や貴族と異なる為に、気になっていたよう。

 なので先生にも許可を得て、希望者全員参加でのお茶会となった。


「まず、魔法の国に身分制度はありません」

「ですがルーデンベルド様は王族ですよね?」


 カーマインがすぐに疑問を口にする。一気に離宮の風通しが良くなった気がする。

 女性陣はつい一歩遅れがちになるが、マナーを考えずに積極的に話すよう頼んでいる。


「王族ですが、地位というよりは職業という考え方に近いですね。父が王だったので娘の私は王女。パン屋の娘と同列です」

「いやいやいやいや」

と否定的なカスパル。


「ですが身分制度がないということは、そういう事ですよ」

「あの、こちらで言う特別待遇とかはどうなっているのですか」


 今度はマーガレットに聞かれたので答える。


「特には。皆が嫌がる仕事をしているので、尊敬はされていますかね」

「皆さん王族を嫌がるのですか」


 リエラメンテ先生からも質問。


「面倒事や厄介ごとが多いこともあって、次代を誰がするかは毎回かなり揉めると聞いています」

「王位を継承したくて揉めることはあると思うのですが、嫌で揉めるのですか……」

「はい」


 根本が違うせいか、身分制度がないことによる違いについての話が延々と続くことになった。

 身分制度や貴族女性が就ける職は侍女と家庭教師のみとか、決まりが多いお花畑にいると気になるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る