鴉天狗/月光

*  *  * 鴉天狗 *  *  *

 虐げられし者を守るために彼らが選んだのは、幕府と戦うこと。その先に待ち受けるのは破滅か光明か――


<鵺丸/源幸成/上江洲誠/笹野才蔵/犬童頼清/片桐且宗/村正/※武蔵坊→主人公>


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鵺丸ぬえまる

 ~優しすぎるが故にすべてを背負いこんでしまった、人望厚き指導者~


 年齢:51歳

 身長:172cm

 特徴:焼けたような黒い肌。髪のない頭に入った傷。

 性格:頑固、温厚

 趣味:妖刀蒐集


‐概要

 特異な外見を持って生まれた鵺丸の人生には、常に差別が付きまとった。だが相手を傷つけぬ剣術と毅然とした振る舞いでそれに立ち向かううち、鵺丸は揺るぎない人望を得ることとなった。遂には将軍の側衆にまで取り立てられ、殲鬼隊の一隊長も任された。侵蝕人の保護を始めたのも、彼らの苦しみを誰よりも理解しているからこそだろう。しかしその優しさは鵺丸の最大の長所であると同時に、大きな欠点でもあった。年々増えゆく侵蝕人をすべて保護するなど、無理だと分かっていても、一人として見殺しにできず、やがて鴉天狗の矛盾を生むこととなる。そして妖派との対立が引き金となり、人を傷つけぬ優しき剣は、凶刃へと変貌を遂げた。


‐能力評価

 戦闘能力[不明]

 使用武具[???]


 小太刀術の達人として名高く、幸成や影狼が小太刀術を扱うのもその影響だ。この頃は妖刀蒐集に傾倒しているようであり、無数の妖刀を所持している。幸成との戦闘では、一番のお気に入りである黒刀を使用し、蛇蠍の如きいやらしい戦法でじわじわと追い詰めた。侵蝕人百人余りを一度に操作するなど、妖刀使いとしても卓越した才を持っていることがうかがえる。


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みなもと幸成ゆきなり

 ~師の凶刃に倒れた悲運の若き英才――その志は未だ死せず~


 年齢:享年17歳

 身長:170cm

 特徴:端整、自然な短髪

 性格:献身的、家族思い

 趣味:黙想


‐概要

 殲鬼隊員の子として名家に生まれた幸成だが、父が侵蝕人として抹殺されたことを機に、一族は鬼の眷属とされ凋落の一途を辿ることとなった。そんな幸成らを迫害から守ったのは、父の僚友である鵺丸だった。それからというもの、幸成はその大恩に報いるべく鵺丸を支え、いつしか鴉天狗の次期代表に指名されるまでに成長を遂げる。父親代わりで師でもある鵺丸に認められることで、幸成の心は満たされていった。しかし運命とは残酷なもので、幸成はまたしても、侵蝕に大切な人を奪われることとなった。幸成の慕う鵺丸はもういない。豹変してしまった師を、せめて自分の手で――それも遂には叶わず、幸成は力尽きる。

 だがその意志は、愛情を持って育ててきた弟分――影狼に引き継がれ、まだ旅を続けている。


‐能力評価

 攻:★★★☆

 守:★★★

 技:★★★★

 力:★★☆

 速:★★★☆

 賢:★★★☆

 戦闘能力[3.5]

 使用武具[海猫]


 手の内を知っていたとはいえ、鵺丸をあと一歩まで追い詰めた力量は、その若さにしては傑出していると言えよう。幸成が特別なのは、海猫で術を使っていたことだ。通常の妖刀は感情の揺れが術の引き金となるが、海猫はその逆――無我の境地でなければ術が発動しない。命のやり取りをする場面ではあり得ないような心境だが、気功の修行を積めば可能になることが明かされている。寸分の狂いも許されぬ気断ちを平然と実戦使用する幸成には、その才があったのかもしれない。


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上江洲うえずまこと

 ~振り下ろすは怒りの鉄槌! 闘志滾る金剛の武者!~


 年齢:29歳

 身長:188cm

 特徴:丸刈り頭の強面、逆三角形の細身

 性格:短気、強情

 趣味:決闘


‐概要

 喧嘩っ早く、問題行動ばかりが目立つ上江洲だが、彼にも筋の通った一つの信念がある。それは世の理不尽や不正を許さないということだ。それゆえに、殲鬼隊時代の上司でもあり、いわれなき差別と戦い続けてきた鵺丸には、惹かれるものがあったのだろう。しかし鵺丸と決定的に違うのは、理不尽や不正に対しどう抗うかである。喧嘩ですべてを解決してきた上江洲にとっては、武力こそが至上の解決手段なのだ。妖派の蛮行を黙認する幕府への武力蜂起を訴える声も、幹部の中では上江洲が一番大きかった。


‐能力評価

 攻:★★★★

 守:★★★

 技:★★★

 力:★★★★☆

 速:★★★☆

 賢:★★

 戦闘能力[3.5+]

 使用武具[???]


 上江洲の持ち味は、その細い体からは想像もつかない怪力である。偃月刀の扱いにも長けており、動きも素早く隙がない。もったいないのは、せっかく妖刀を所持しているというのに、妖刀術を上手く使えないということだ。ただ、闘争心を掻き立てるほどの強者と当たった時や、酷く憤りを感じた時は、潜在能力を存分に発揮できるだろう。


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笹野ささの才蔵さいぞう

 ~世間の評判もなんのその、才蔵は今日も憂き世を飄々と生きる!~


 年齢:30歳

 身長:173cm

 特徴:片目が隠れる長い前髪

 性格:姑息、ひょうきん者

 趣味:お祭り、物作り


‐概要

 才能と竹槍一本だけで殲鬼隊入りを果たした才蔵。しかしそれだけでは、彼の名はここまで世に知れ渡ることはなかっただろう。努力が人一倍苦手だった才蔵は、どうすれば楽に他者を出し抜けるかを、常に考え生きてきた。殲鬼隊の三隊合同任務で武勲第一位を手にした時の逸話は、その最たる例である。不正はなかった……はずだ。

 おいしいところばかりを持って行く才蔵には、敵も多かっただろう。それでも大きな揉め事なく過ごせたのは、それ以上に味方が多かったからだ。自身が特殊であるだけに、いかなる価値観にも寛容な才蔵は、その気さくな性格も相まって、多くの人から好かれた。


‐能力評価

 攻:★★★☆

 守:★★★

 技:★★★★

 力:★★☆

 速:★★★★

 賢:★★★☆

 戦闘能力[3.5+]

 使用武具[破竹ノ禍戈]


 耐久性の低い竹槍一本で殲鬼隊の任務をまっとうできたのは、高い回避能力があったからこそだ。正面からの打ち合いを避け、搦め手で勝負を仕掛ける戦い方は、才蔵の生き方にも表れている。邪気を吸い妖槍と化した竹槍は、妖力こそ弱いが、長年苦楽を共にしてきた才蔵の手に掛かれば、実に多彩な妖術を扱う頼もしい相棒となる。


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犬童いんどう頼清よりきよ

 ~虚ろな瞳の奥に燃える激情、それは己の無力への憤りか~


 年齢:32歳

 身長:173cm

 特徴:白粉を塗りたくったような真っ白な肌

 性格:高慢、陰気

 趣味:お月見


‐概要

 妖怪を滅する誇り高き剣豪衆――殲鬼隊。しかし、並々ならぬ努力の末に入隊を果たした犬童が目の当たりにしたのは、退魔を隠れ蓑にした醜い権力闘争だった。自分の目指したものは一体何だったのか――かつての夢は色褪せ、残ったのは、その醜い争いをどうすることもできなかった己に対する無力感だけ。やがて犬童は、権力闘争を勝ち抜き幕府の実権を握った者たちに、激しい憎悪を抱くようになった。そうすることで、傷ついた自尊心を守っていたのだ。


‐能力評価

 攻:★★★☆

 守:★★★

 技:★★★☆

 力:★★★

 速:★★★

 賢:★★★

 戦闘能力[3.5]

 使用武具[無明]


 犬童の最大の武器は、闇夜をものともしない視力である。他の殲鬼隊員と比べて突出した剣才を持っていたわけではないが、活躍できる局面は多かっただろう。妖刀無明との相性は抜群で、妖術の生み出す闇の中で黒刀を振るわれれば、ほとんどの者はなすすべがない。


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片桐かたぎり且宗かつむね

 ~土手っ腹に刻まれし酒吞の呪い、一人の勇士の人生を狂わす~


 年齢:45歳

 身長:182cm

 特徴:固太りした大きな体躯、獅子のような髭

 性格:自暴自棄、傍若無人

 趣味:朝酒、昼酒、晩酌、寝酒


‐概要

 だらしなく突き出た腹。飲んでは寝て飲んでは寝ての堕落した生活。傍から見れば廃人そのものだが、そんな片桐も、かつては妖を殲滅せんと立ち上がった一人の勇士だった。彼を変えてしまったのは、三大妖怪の一怪――酒吞童子の討伐任務。腹に傷を負った片桐は殲鬼隊の引退を余儀なくされ、以降、酒浸りの日々を送ることとなった。武人としての道を断たれた苦しみと、傷口から流れ込んだ酒吞童子の邪気がそうさせたのだろう。いつしか傷は癒え、片桐はかつてない力を得ることになるのだが、時すでに遅し。もはや志なく、酒を飲むだけが生き甲斐となった片桐には、無用の長物であった。


‐能力評価

 攻:★★★☆

 守:★★★★☆

 技:★★★☆

 力:★★★★

 速:★★☆

 賢:★★

 戦闘能力[4.0]

 使用武具[血舞酔]

※評価は平常時のもの


 長いこと実戦から離れていながら、殲鬼隊の五指に入ると言われた本庄信繁と対等に渡り合うほどの剣術の冴えを見せた。さらに酒吞童子から引き継いだ体質により、心臓を突かれても死なないほどの生命力を持ち、傷を負う毎に身体能力と生命力はさらに高まる。ついでに妖力も高まるため、より強力な妖刀術を扱えるようになる。控え目に言って反則だ。


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村正むらまさ

 ~作るは人を惹きつけ操る刀――鴉天狗に棲む魔性の刀匠~


 年齢:48歳

 身長:178cm

 特徴:八の字の口髭

 性格:恭しい

 趣味:刀鍛冶


‐概要

 人に操られる刀ではなく、人を操る刀を作る――その信条の下、村正は数多の妖刀を生み出してきた。現に鵺丸はすっかり妖刀の虜となり、他の幹部たちも妖刀の力を求めるようになった。刀匠としてこれ以上の喜びはないだろう。

 だがそんな村正にも、一つだけ大きな悩みがある。それは、物の美醜が分からないことだ。曰く、妖刀は禍々しくあるべきで、美しい造形は相応しくないという。海猫もそうしてできてしまった、美しい失敗作の一つなのだろうか。


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*  *  * 月光 *  *  *

 主の意を酌み暗躍する、鴉天狗の闇に蠢く最強の忍衆!


<十六夜/唯月/山梔子/木耳>


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十六夜いざよい

 ~内に秘めたるは忠義か野望か、影から歴史を動かす闇の兵法者~


 年齢:34歳

 身長:170cm

 特徴:白髪混じりの短髪

 性格:用心深い、冷淡

 趣味:将棋、部下の育成


‐概要

 鴉天狗の越後亡命は、十六夜の存在無くしては到底成し得なかっただろう。逃走経路の選定、物資の補給、追討軍への対処など、入念な準備と確かな実行力を要したが、十六夜と彼の選定した部下はそれらを完璧にこなした。亡命後も、大名の暗殺で内乱を起こすという大胆な方法で、鴉天狗の地位を確かなものとした。ただしこれは独断によるもので、武蔵坊からは気味悪がられている。鴉天狗のためと言えばそうなのだが……

 外部の者に対しては冷淡だが、部下に対しては手厚く世話を焼いているようだ。単独任務に向かわせた部下の帰りを待つ様子が、しばしば見られた。


‐能力評価

 戦闘能力[不明]

 使用武具[鎖鎌]


 鎖鎌を器用に使い、遠距離からの不意討ちをする場面が見られた。他の月光の忍と同様、正面からの戦闘はあまり好まないようだ。しかし言葉の節々や表情からは余裕が見られ、相応の実力者であることがうかがえる。


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唯月ゆいげつ

 ~月下に美しく舞う神速のくノ一! その舞を見し者は二度と日の光を見ず~


 年齢:17歳

 身長:163cm

 特徴:白銀の短髪、黄色い瞳

 性格:無表情、辛辣

 趣味:人間観察、夜の散歩


‐概要

 月光の中で唯一のこのくノ一には、月下美人という言葉がよく似合う。喜怒哀楽を滅多に表に出さない端整な顔が、なお一層神秘的な雰囲気を醸し出している。だがその口から発せられるのは、思いやりの欠けた冷たい言葉ばかり。無表情、無感動な声でしれっと言われれば、近付く者は心に大きなダメージを負うことになるだろう。しかし時には相手を気遣うような場面も見られ、それがまた男たちを離れ難い気持ちにさせるのだ。


‐能力評価

 攻:★★★☆

 守:★★★

 技:★★★☆

 力:★★☆

 速:★★★★

 賢:★★★★

 戦闘能力[3.5]

 使用武具[小太刀二刀流]


 闇討ちを好む月光の中にあって、唯月は珍しく白兵戦を得意とする。素早い身のこなしと、瞬時に敵の攻撃を見切る反応速度、出の早い二本の小太刀による攻撃で、数で上回る敵を圧倒する。洗練された一連の動作には一切の無駄がない。


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山梔子くちなし

 ~愉悦がために命を弄ぶ異端の忍~


 年齢:享年20歳

 身長:165cm

 特徴:見下すような目つき

 性格:残忍、陰湿

 趣味:暗殺


‐概要

 鴉天狗が抱えきれなくなった侵蝕人を、自然死に見せかけて間引く――月光に与えられたこの汚れ仕事を、嬉々として引き受ける男が一人いた。それが山梔子である。人が訳も分からぬまま絶命していく暗殺に、山梔子はいつしか快感を覚えるようになった。鴉天狗が蜂起したあとは、容赦なく敵をいたぶり殺す様が目に付いた。その報いなのか、最期は武蔵坊の放った業火に焼かれて果てることとなった。


‐能力評価

 攻:★★★

 守:★★☆

 技:★★★

 力:★★☆

 速:★★★☆

 賢:★★☆

 戦闘能力[2.5+]

 使用武具[忍刀]


 暗殺を専門としているが、正面からの戦闘でも一対一ならばそうそう後れを取らない。忍刀で敵の攻撃を防ぎつつ、一瞬の隙を突いて致命傷を与える。不利になれば、逃げると見せかけた騙し討ちも使う。


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木耳きくらげ

 ~陰口も痴話も全部ダダ漏れ! 月光随一の諜報員~


 年齢:22歳


‐概要

「ちょっと耳がいいからって調子乗りやがって……」そんな陰口の一つでも叩けば、翌朝には謎の死を遂げることになるだろう。木耳はひそひそ話を屋根一つ隔てても聞き逃さない、異常なまでの聴覚を持つ。月光はこのような一芸に秀でた忍を多数揃えている。

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