エンNO.0

 元校長先生が黒服の男たちに連れ出されたあと、俺たちは知らぬ間に貼りだされていたクラス分け表に従い自分達の教室に向かう


 

 俺たちが教室に入ると一人の少年が席に座って本を読んでいた

 「誰だろうあの子・・・小学生くらいに見えるけど・・・それにしても綺麗な顔ね・・・」

 優の言う通り男の子の顔を見ると、この世のものとは思えないほど整った顔をしている

 

 「僕、名前はなんだい?」

 心一は男の子に近寄り優しく話しかける―――――――が、

 「・・・・・・・」

 男の子は心一を一瞥するとまた本に視線を移した———見事に無視され戻ってきた心一を優が慰める

 

 

 「ねぇ、君」

 心一に代わり俺が声をかけると男の子は、まじまじと俺を見ると

 「なるほど・・・あなたが勇さんですか・・・という事はあなたも私と同じですね・・・」

 「・・・!」

 なんで俺の名前を知ってるんだ・・・それに捨て駒ってなんだ・・・・?

 俺が黙り込んだ間に男の子は再び本に視線を移してしまった


 その後、男の子は俺たちが何を聞いても無視を決め込み俺達は諦めて席についた



 俺達が席についてしばらくして、教室の扉が開き全校集会の時にいた2人組の男が入ってくる


 男達は教壇に立ち仏頂面をした男が前に出て口を開く

 「今日からこの実務部の担任を受け持つことになった・・・」

 そう言うと男はモニターに自分の名前を映し出す

 「田中 雄二たなか ゆうじだ。自分は警察軍から派遣された身だ・・妙な行動をすればその場で射殺するので妙な行動は慎むように・・・」

 

 そう言うと田中刑事は奥に下がり、入れ替わりでもう一人の男が前に出て口を開く 

 「俺の名前は黒田 弘毅くろだ こうきだ、田中こいつと同じく警察軍から派遣された」

 そう言うと黒田刑事はおもむろに教壇を蹴飛ばして中指を立てると

 

 「この指の形を見ろ・・この指の形はファ〇クだ!ファ〇クには物事をめちゃくちゃにするという意味がある、俺はお前たちにファ〇クの精神でこの腐った國をめちゃくちゃにぶっ壊しt(グフッ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 田中刑事の右フックが黒田刑事のみぞおちに入り黒田刑事が気を失う

 


 「バディが失礼した・・・・」

 そう言って田中刑事はぐったりとした黒田刑事を軽々と肩に担ぐと

 「明日から実務部で特別訓練を行う———今日は速やかに帰り明日の準備をしろ・・・」

 そう言い残して田中刑事は教室を出て行った


 刑事達が去り、教室には俺たち三人と男の子が残される

 

 (ガタッ)

 男の子が席を立つ

 「待ってくれ!」

 俺が思わず呼び止める

 「何ですか?」

 男の子はうざそうにこちらを見るが俺は構わず続ける


 「なんで俺の名前を知っていたんだ?」

 俺がそう聞くと男の子は

 「そんなの知って何の得があるんです?」

 そう言って男の子は俺の質問をあしらうと教室の扉の方に向かう


 「じゃぁ、俺とお前が捨て駒ってどういう意味だ?」

 そう言うと男の子はこちらを振り向き明らかに不機嫌そうな顔をして口を開く

 「聞こえてたんですか・・・その事については何も答えるつもりはありません」

 そう言うと男の子は再び扉に向かって歩きだす

 

 行かせるか・・・!

 「優、心一!!」

 俺の叫び声と同時に、優と心一は教室の前後の扉に立ち男の子の道をふさぐ


 「これで帰ることは出来ない———教えてくれ、捨て駒って何なんだ・・・?俺たちはこれからどうなるんだ?」

 「はぁ・・・」

 男の子はため息をつき観念したように話し始める

 「私は國の研究機関から来ました―――『ENDプロジェクト』・・・・この名前、勇さんなら分かるでしょう?」

 『ENDプロジェクト』・・・世界的機械学者であり俺の父の神谷かみや 英傑ひできがプロジェクトリーダーを務める政府主導のプロジェクトだ


 「あぁ、もちろん知ってるさ———だけどそれと捨て駒に何の関係があるんだ?」

 

 俺がそう言うと男の子は袖をまくり俺達に二の腕を見せる

 そこには『END-BUG NO,0』と刻印されていた

 

 「これは・・・」

 俺たちが衝撃を受けていると

 「これは私の型番です」

 そう言うと男の子は袖を直しゆっくりと話し始める

 


 「『ENDプロジェクト』・・・AIに人間のような感情を植え付ける機械学の最終形態―――私はその『END』のバグとして生まれました・・・・・

 本来、バグとして削除されるはずだった私に神谷博士はエンという名前とこのボディーそして、雑用係というまでくれました————今でも博士にはとても感謝しています・・・出荷時にほとんどの記憶を削除されてしまいましたが、それでもたくさんの愛情を博士から貰ったのは覚えています・・・・」

 そう話すエンの顔はとても機械とは思えないほど太陽のような暖かい顔している

 

 「エン、そんな君が何でここにいるんだ?」

 

 そう聞くとエンの顔は急に曇り、苦虫を嚙み潰したような顔で苦しそうに答えた

 「浅井首相・・・彼のせいです。」

 「「「・・・・・・!!!」」」

 その名が出た瞬間、俺たち三人は凍り付く


 浅井 勝利・・・帝國政府首相にして帝國政府軍総帥―――十数年前に軍務省(前防衛省)大臣として初入閣、前首相が演説中に襲撃を受け退任した際、暫定首相として君臨————2年後に正式に首相となると暫定首相時に付けた國民の支持をもとに日本國憲法9条の改正とマスメディアによる報道の真実性の國家検証という名目の報道弾圧を行い政府の権力を強化、そして先日浅井政権で二度目となる憲法改正を行い日本を完全に軍國化した

 

 「なんで、浅井の名前が?」

 「邪魔だったんですよ・・・私が、」

 「邪魔?」


 「もういいでしょう、話はこれで終わりです」

 そう言うとエンは窓の方に行き足をかける

 「待て、まだ話は終わってない!それにここは・・・」

 言い終わる前にエンは窓から飛び降りる 

 ここは3階だぞ!?

 俺たち三人は窓に駆け寄り下をのぞく、するとそこにはぴんぴんしたエンが俺達に一礼し走り去っていった

 「何なんだよ・・・あいつ《エン》は・・・・・」

 何かがわかると思ったのに、さらに訳が分からなくなってしまった


 エンがいなくなってしばらくしてチャイムが鳴り―――俺たち3人はもやもやしたまま、帰路についた

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