第11話 50階建ての舞台

 ===現在===


 ジャパニーズ王国にビル群が増え始めたのは最近の話だ。

 それまでは12階建てのマンションくらいが高い建物とされていた。

 しかし、現在は30階建てのビル等が当たり前のように建てられた。

 


 その代わりその地区に住んでいた昔ながらの人々はマンションに追いやられた。

 その中でも一際目立つ超高層ビルが一軒だけビル群の中で一際目立っていた。



 そのビルには薬師薬品株式会社という会社が入っている。

 社員400名、年収は10億くらい稼いでいる。


 

 社長である薬師ドンバラはスマートな体をしており、女性社員とすれ違うだけで大騒ぎとなるほどのイケメンであった。

 彼は小さい頃より薬について勉強してきた。

 一流の学校に通い最終学歴は無限薬物専門大学と言う所だ。


 

 周りからの情報ではドンバラは女遊びが酷かったそうだ。

 学友と名のつく存在は1人もいない所を見ると一匹狼を目指しているのだろう。


 

 そんな50階建てビルを突如テロリストが襲った。

 人質は400名の社員、犯人の申告で判明した事とは薬師薬品株式会社では人間をモルモットにしているという事実、さらに人間のDNAと何かを掛け合わせ化け物を作っているとの事だった。



「という情報であります、ヤゲンさん」


「ネツコにしては今回の取材は最高でしたね」


「それにしてもどうするのですかね刑事さん達、あのテロリスト集団の人数だけでも200人は超えてますよ、普通に考えてありえませんよね、大抵は数十人で来るのに、200人ですよ」

「何度も言わんでよろしい、報道記者は情報を集めてそれを世の中に流す事、それがヤゲン流の報道記者の目標みたいな?」


「またヤゲンさんが夢に走ってるよ、くひひ」


 ネツコが気味の悪い笑い方をしていると、2人の後ろを歩く足音が響く。

 それは特徴的な足音であり、沢山存在する足音とは違っていた。


 大勢の報道記者と刑事達が入り乱れて動き回っている。

 今回のテロリストがやばいという事を話し合っている。 

 王国軍の応援要請を送ったのだが、別な問題で来れないとの事。


 などと言い合っている人々で溢れていた。

 50階建てのビルから少し離れた公園に大きな白い天幕が複数設置され捜査陣が陣取っている。

 

 リアン刑事とマッドン刑事はそんな所で会議に出ていた。

 リアン刑事の周りには10名の刑事がいる。 

 マッドン刑事とリアン刑事を加えると12名となる。



 捜査を指揮するリーダー格の男が大きな声で言う。

 彼はおっさんならではのメタボ腹になっている。

 

「ではこの図面を見て欲しい」


 その場にいる刑事が机を見ると。


「この設計図を見る限り隠れて侵入出来そうなのは非常階段と窓ぐらいだ」


「そんな事は誰でも分かるし設計図を見なくても分かる」


「違うな冷静になって聞け、非常階段は屋上には繋がっていない。しかし非常階段から非常梯子で屋上に登る事が出来る。屋上には下へ降りる階段の為に1つの部屋がある。そこの窓は簡単に取り外せる。特殊部隊と王国軍は別件で来る事が出来ない、ここは俺達だけで乗り切るぞ」


「無茶だ。自分達に死ねというのですか」


「拳銃の使用許可は出た」


「あんたバカですか、拳銃でアサルトライフルとかに勝てる訳ないでしょ、タダでさえスナイパーがいるんだぞ、わかってんのか」



 数名の刑事が怒りをあらわにする。

 メタボリックの刑事であるリーダーは拳をしっかりと固めている。



「それでも俺達は1人の刑事なんだ! 刑事の魂がお前等にはないのか」


 

 その場の誰もが唖然としている。このメタボリック刑事リーダーは自分も戦うつもりなのだろう。

 1人また1人と立ちあがり。

 ただ黙ってこの馬鹿に付いて行く事にする。


「それで相手の要求はなに?」



 リアン刑事が突然話し出すと。周りの人々もそうだと頷く。



「彼等はモルモットにされた人間の保護を要求しているが、そのような情報はないと上は判断した」


「それっておかしくないですか、もしかしたらテロリストは本当の事を言っているのかも」


「それでも上がいないと言えばそうだしな、モルモットの数も正確には不明なんだ」


「その他にも何か要求はなかったのですか?」


 

 リアン刑事が真面目な視線でメタボリック刑事リーダーに問いかける。

 すると彼はこくりと頷く。


「これは聖戦だそうだ」


「はい?」


「これは神様が降臨した証だそうだ」


「意味が分からないのですが?」


「テロリストは数百名、200名とされているが、彼等はテロリストではなく聖職者だそうだ」


「それは意味が分からないのですが」


「俺にも分からねーよ、つまり上からの命令でテロリストも殺すなとの事だ」


「それは当然ですけど、凄く意味が分かりません」


「だから何か超能力的な力が働いているとしか思えない」


「あなた刑事でしょう?」


「そうだとも、突然リーダーにされた部長クラスの刑事だよ、バカ」



 リアン刑事とメタボリック刑事リーダーが言い合っていると、突如それは起きた。



「まった、あいつだよ、今回は仲間を連れてるぞ」



 そのテレビモニターに写されたのは、ピエロの仮面を付けた男性とエンジェルの仮面を付けた女性、鬼の仮面を付けた奴もいた。3人組は堂々と50階建てビルに入って行く。


 沢山の報道機関が彼等の写真をとっている。


 すると小さな爆発が起きた。

 

 真昼間に空から沢山の光の文字が出現した。

 それらは【盾と剣の組織】と表示され、最後に、眩しい光を発しながら。


【見参】と表示されていた。


「刑事リーダー、今インターネットが爆発的に動き出しました。ラジオ局テレビ局も全てこれに夢中になっています。正確には夢中にさせられるようにシステムを書き換えられました。興味のない人も興味が出てくるようなシステムにです。そっちはどうだ」



「信じられないです。このようなハッキング能力を惜しげもなく出すなんて、捕まる気なんてないみたいです。しかもシステム攻撃するのではなく再構築しています。さらに忍者のようにすり抜けています。なんですかこれは電脳世界がパニックです」



「これで俺達の侵入経路は確保された」


「まったく、行きましょうかリーダー」



 マッドンが両手をこりゃダメだという風に上げると、それに対してリアンも同じ仕草を返した。


 しかし彼等がいれば王国軍と特殊部隊の穴を埋める事が出来る。


 刑事は盾と剣の組織というテロリストに希望を抱いていた。



====50階建てビルにて====


 1人のピエロは無言で歩く、1人のエンジェルは無言で歩く、1人の鬼は無言で歩く訳ではなかった。


「ひやっはっは、出張から帰ってきたら、さっそく事件発生だ! こりゃ大変だね、ピエロの旦那も本当はめんどくさいとかいいながら嬉しかったんじゃないの? モルモットを助けられるってさ、テロリストに感謝しないとね、ひゃっはっはっは」


「デス・ソードよ少しは静かにしろ、お前の2本の刀は相手に死の道を見せるのだろう?」


「それがデス様の力【死亡道程】だからねぇ」


「2人ともあまり無茶をしないように、回復は任せてね」


「エンジェルは絶対に守るから安心しろ、デスもちゃんと守れよ、わたくし達の生命線なのだからなぁ」


「ひゃっはっは、それもそうですねぇ」



 3人の前に巨大な自動ドアが悠然と構えている。

 センサーに反応した自動ドアがゆっくりと開かれていく。

 中に入ると四方八方にアサルトライフルを構えている人々がいる。

 

 彼等の瞳は虚ろであり、意識がない様だった。



「デス、殺すなよ」


「それはピエロさんもですよ」


「うちは隠れています」



 その時、辺りを見回すとざっと20人のテロリストがいる訳だ。 

 彼等はこちらを見てまるで機械のように同時に銃口を引いた。

 アサルトライフルの弾が高速で発射される。


 デス・ロードは2本の刀で銃弾を両断していく。

 そのスピードは人間の限界を超えていた。

 デス・ロードの2本の刀は銃弾に導かれていくように斬られる。

 それはデス・ロードの死の道を巻き戻しているようでその結果どの銃弾が自分に当たり死の道になるかを把握する。それを避ける為にその道をなぞって銃弾を両断していく。



 それは仲間にも応用出来るのでエンジェルを守る事も出来るし、ピエロを助ける事も出来る。



「まぁピエロの旦那には必要のない話ですが」



 デス・ロードの【死亡道程】とは死ぬ道をその瞳に写し、仮体験してから道程を変更するというものであった。


 デス・ロード本人もよく分かっていない力とされる。


 一方でピエロは鼻歌を歌いながら。



「んっふーんんん」


「さて、鼻歌も終わり、始まるのはこのジャック・ザ・ピエロですよ、皆さんわたくしのショータイムを見て行ってください、これが種も仕掛けもないマジックですよ、さぁさぁお客人おいでなさい」



 ピエロの全身を穿つ銃弾。

 1人の人間に何百発を撃ち込むという事は、体が曲がりくねり、まるで人形のように倒れるものだ。それはピエロだから起きる現象なのかもしれない。



 全ての銃弾をピエロに撃ち終えると、虚ろの瞳をしている20名のテロリスト達は、弾薬を交換している。


 ピエロの体には沢山の煙が噴出している。


 それを見ているデス・ロードは爆笑している。

 鬼の仮面によってその爆笑の仕方が怖い物となる。


「やはりおかしい、よーく観察すると20名のテロリストは主婦とかサラリーマンだし、衣服だってスーツとか私服だ。まるでこれから仕事に行くとか家事仕事をするような感じだ。聞こえているかバッカーとネイビスト」


【もちろん聞こえてるよお兄ちゃん。こっちはシステムを侵略するのに忙しいから、デブと話して】


【まったくバッカーはデブ使いが悪いですよ、さて絶対鑑定で見ました。一応隣のビルから双眼鏡でね、さて、説明すると長くなるので簡潔に、彼らは1人の能力者に操作または洗脳されています】


「その能力は分かるか?」


【まぁ大体、バッカーの電脳侵略と僕の絶対鑑定は相性がいいですからね、相手の力は僕達能力者には通用しません、それと操作または洗脳されている人達を正気に戻すには本体を気絶させる必要があります。その他にも力が隠されている可能性はありますが、大丈夫でしょう】



「助かる、さて、話は聞いたなデス・ロード」


「もちもちだよーん、じゃあ、皆さん軽くぼこって気絶してもらってお縄ですね、お縄はエンジェルちゃんよろしくしくねん」



 デス・ロードが興奮しながら走り出す。

 それに対して負けじとピエロも走り出した。



 一方で外の非常階段では12名くらいの刑事達が弾の数が6発の拳銃を握りしめている。特殊シールドを数名が構えて慎重に階段を上り始めた。


 その中にはあのメタボリック部長刑事とリアン刑事とマッドン刑事がいた。


 

 一方で空には1機のヘリコプターが舞い上がっていた。

 公園に設置されているヘリコプター乗り場からヘリコプターに乗ったのは、報道記者のヤゲンとネツコであった。運転手は元気のある黒人の男性であった。

 

 念のため1人の傭兵も同行しているが。


 黒人がリーブスと言う名前で、傭兵はカカットンという名前だ。

 黒人はガタイのいい男性であり、頭はバリカンで剃ったのだろう。

 カカットンは白人であり、ロン毛でもあった。やさ男な感じであった。



 ヘリコプターは50階建てビルの屋上を目指す。

 この時代は報道記者も命がけで真実を追いかける覚悟がないと生きて行けない時代なのだ。

 報道記者としてのプライドもあるのでヤゲンとネツコは新しいネタを追い求める。

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