ライナーノーツ②
皆様こんにちは。ゆあんでございます。
本日も紹介したいと思います。
■蜜柑桜 様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054919015892
さて、蜜柑桜様といえば、本企画に皆勤賞でご参加頂いてる作者様でございます。
すでに多くの方が認識を同じくしているとは思うのですが、蜜柑桜様の特に素晴らしいのは「情景描写」です。
筆致を企画テーマとしている都合もあり、情景描写を武器に(ご本人はそう思われていないかもしれませんが)している作品はとても取り上げやすいのですよね。
作品内容はアイディアが重要だったりしますが、じゃあ同じアイディアを取り上げた二作品の相違点として具体的にあげよ、と言われれば、筆致の差という部分で情景描写は明確に取り上げることができますし。
蜜柑桜様は特に、「その景色にどういう情報があるか」という点も優れているのですが、それよりも「その景色をどういう風にみているか」という情報が情景描写に生かされているのがすごいと思っています。視点の運び方がわかる感じと言いますか。
今回は「写真」がフィーチャーされています。
写真というものは、確かにそこに存在するリアルの「瞬間」を切り取って「永遠」にすることでもあると思います。
幻想空間を写真に収めることはできないわけですから、写真は間違いなく風景の一部であり、しかし絵画のようなひとつのアート作品でもあります。
その写真に収められた映像をどう描いていくか。
そしてそれら写真が並べられているという風景を、どう描いていくのか。
この部分に、本作はとても力が入れられていると思います。
そして本作では、この写真に向き合う人の向き合い方みたいなものが描かれているのが面白いと思いました。
写真を「撮る」人。
写真を「見る」人。
その他主人公を含めて、一枚の写真を前にした時の印象などが登場人物によって大きくことなる部分だったり、スタンスの違いなどがあって、それを短編の一つの物語に取り込むことに成功しているのが素晴らしいです。
これは芸術を語るときにも言えるのですが、
①Aという作品を「良い」と思って生み出し、公表している立場
②Aという作品を「悪い」と感じ、講評している受給者側立場
の両名が作品内に登場した場合に、概ね、その作品は「どちらの立場であるか」が明確になることが多いです。
その物語の主人公が①なら、②が悪役。またその逆もしかり。
語ろうとしなくても、物語がそのスタンスを無意識化で決定してしまうことはよくあることです。
本来、人それぞれによって受け止め方が異なりますし、解釈が自由であることは言うまでもありません。
「どちらが正義で悪なのか」という傾倒は客観性を失うことでもあり(しかしゆえに共感しやすくなる部分でもあるが)、作者自身の意見を色濃く提示してしまうことにもなりかねません。
しかし本作は、写真という現象に対して、少ない登場人物でありながらもそれぞれのスタンスが描かれており、加えて衝突していない点が「とても自然だ」と思ったのです。
その上で、主人公「葵」が写真を撮るということにどういう想いをもっていて、さらにそれが「誰かと一緒にする」ことでどういう変化が起きたのかが示されています。
私は本作でこの描写が特に優れている(経験しないと気づけないのではないかというとても良い視点)と思っており、はっとさせられつつ、それが「葵が詞を大切に思っている理由」を読者に共感させる自然さが「うまい」と思うところです。
また本作には多くのメッセージが詰め込まれているのもポイントです。
伝えたい、あなたはどう思うか、そういう投げかけを全力でされている気持ちになりました。
エネルギーを消耗しただろうなとは思うのですが、私はこういう「誰かの心に突き刺しに行く」スタイルは大好きです。読み応えありますしね!
余談ですが、本作のあらすじには「とある問題」が用意されています。
それらも面白い取り組みですよね。
(ちなみに私は答えがわかりませんでした……すみません!!! すごく答えが知りたいです)
情景描写の参考に良い作品だと思いました。
それでは、また。
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